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13.城下町『ダイバー』 と 種族差別







***








城下町に来る頃には、日が暮れ始めていた。



いまはシルフィと一緒に検問所の列に並んでいる。



「シルフィ。本当に大丈夫なのか?30組ほど並んでるがゴブリンなんてほかにいないぞ?」



「その質問何回するつもりなのよまったく。大丈夫だって」



「いや、でも心配なんだよ・・・」



「町のルールはシンプルよ。町に住んでる人やモンスターに危害を加えないこと。それだけ。つまり言葉が話せないスライムでも中に入ることができるってこと。ただ1度でもそのルールを破ると、賞金首になって2度と中には入れなくなるけどね」







***







シルフィと話していると、検問の最前列にきた。検問所の衛兵なのか、狼と熊の獣人が2人おり、簡単な人相確認や荷物検査、身体の匂いを嗅がれるとすんなり入ることができた。



改めて城下町を見ると、とにかくでかい。そして獣人やモンスターであふれている。



今のところまだ人間は見かけないが、これならこのフードを被らないでよさそうだ。



「ところでシルフィ。町に宿屋や家が多くあるのはわかるが、なんで武器屋や防具屋があるんだ?」



「武器や防具は基本的にガチャでしか交換することができないの。一部自分で武具を作る人はいるみたいだけど少数ね。ガチャは基本的に運頼み。自分が欲しい武器がでなかったときは、武具とポイントをああいう武器屋や防具屋に交換で売るのよ。」



「なるほどな。ちなみにあの大きな白い盾に羽が生えているマークがあるところは何屋なんだ?」



「あれは悪を断ち正義を守る組織『ホーリー』よ。元の世界でいえば警察みたいなもの。町の安全を守ってるのよ」



「似たような機能を持った組織は、どこの世界にもあるんだな」



「そうね。他にも『ホーリー』には役割があるのよ」



「他の役割っていうのは何なんだ?」



「例えば、ソースケみたく戦闘向きのスキルを持っていれば、モンスターを倒してポイントを稼ぐことができるでしょ?」



「まあそうだな」



「でも、非戦闘向きのスキルを持っている人やモンスターは1人では生きていくことができないの」



「言われてみればそうだよな。モンスターもスキルが弱く身体能力も低ければ、そうなるよな」



「だから、非戦闘向きスキルを持っている人が『ホーリー』でスキル登録すると、仕事の依頼がきて依頼に対応するとポイントがもらえる仕組みを作っているの」



「こちらの世界にもそういう救済措置があるんだな。当たり前かもしれないけど、感心する」



「そう。だから『ホーリー』は安全を守るだけでなくこの世界の住人が住みやすい生活を作り上げている大切な組織なのよ」



「なるほど。ちなみに、非戦闘向きでもスキルでポイントが稼げれば良いが、あまり需要のないスキルだった人やモンスターはどうしてるんだ?」



「良いところに気が付いたわね。それがこの世界で問題になっている『スキルレス』問題よ」



「『スキルレス』問題?」



「需要のないスキルを持っている人やモンスターは食べ物や住む場所がないから城下町にいることができず町からでていくことになるの」



「本当に弱肉強食の世界だな・・・」



「・・・そう。これは『古代樹ダンジョン』でも説明したけど、前の世界よりも競争社会だと言ったのはこういうことなのよ。ソースケの世界のような産業もないからね・・・」



「農業でもやればいいって考えちゃうけどな。俺がスキルレスになったらそうすると思うけど・・・」



「ソースケの世界にはポイント制が無かったから、どうにか生き残ろうと色んな知恵を絞ったと思うけど、こっちの世界にはそうする必要が無かったからね」



「確かにな。産まれた時から農業の概念がなければそうしようとすら考えないか・・・」



「そしてこちらの世界の獣人やモンスターには何もできない人達を助けるっていう考えが希薄なの。もちろん希薄なだけであって、全くいないわけじゃないけどね」



「ポイントを稼げるスキルがない獣人やモンスターはどうなるんだ?」



「町の外で生き抜くか、奴隷として生きていくか。基本的にはこの2択ね」



「酷いな・・・」



「奴隷になれば最低限の食事や生活スペースはあるみたい。ただ奴隷になるときに主人の命令は絶対の契約をするから、場合によっては死んだ方がマシって言われるくらいひどい生活をしているのよ」



「奴隷はあまり聞き馴染みがないが、そんな酷い状況下にいる人もいるんだな・・・」



「奴隷商にポイントを支払えば奴隷だって買うことができてしまうの。残酷よね・・・」



「それを聞くと、確かに俺がいた世界が生ぬるく感じるほど、厳しい世界だな。ちなみにしばらく見ていても人の姿が少ないのは、どうしてなんだ?」



「それは人に比べて獣人やモンスターの数が多いからだと思うわ」



「繁殖力の・・・差なのか?いや真面目に。」



「・・・繫殖力のことは置いといて。人間が少ないのは、他種族嫌いの人間が多いからよ」



「他種族嫌い?俺の世界でいえば人種差別みたいなものか」



「そのイメージであってるわ。そもそもこの世界はソースケが暮らしていた世界の5倍の広さがあるの。いろんな国があるけど、この城下町みたくどの種族も仲が良いところは少ないの」



「この城下町が当たり前じゃないんだな」



「むしろ共存を実現させている場所の方が数少ないのよ。特に人間は他種族との共存を嫌う傾向にあるの」



「同じ人間として情けないな・・・」



「だから色んな場所で領地争いが絶えない状態なの。とまあ・・・話せば長くなっちゃうから、まずは今日の寝床を探しましょう」



俺がいた世界にも国同士の争いはあった。



日本に住んでいた俺からすると戦争のような争いは無縁だ。



ただ同じ人間でも人種差別は色濃く残っている。



肌の色が違うだけで差別する人がいるのだから、人ではない獣人達に嫌悪感を抱く人間がいるのも納得できる。俺にはまったく理解できないが・・・。





「ソースケ大丈夫?さっきから黙り込んじゃって」



「あーごめんごめん。考え事していて」



「今日はそこにある宿屋に泊まるわよ!」















***













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