偽りの好敵手?1
「あー、まあ、あったと言えば、あったような?」
曖昧な言い方をする翠花に、海里はため息をつく。
「求婚されてるんだっけ?受け入れるの?」
(そうか。海里さんと話してるときに碧龍様が来たのよね?)
「・・求婚を受け入れるつもりはありません。」
即答できなかったのは、揺れているからだ。
分かっているが、認めてはいけないと戒める自分もいる。
(皇太子妃になんてなれない。碧龍様だって、珍しいタイプだから気になってるだけよ。)
「・・しようか?」
葛藤していたため、海里の言葉を聞き逃していた。
「え?」
「だから、協力しようか?って言ったの!」
海里は少し膨れながらもう一度言った。
「えーと。協力とは?」
「僕が翠花ちゃんの恋人役をしてあげるよ。見せつけちゃえば諦めてくれるさ。」
海里は人懐こい笑みを浮かべて請け合う。
(いい人だわ・・。)
癒されたような気持ちになる翠花。
しかし、頼るわけにはいかない。
(海里さんは相手の官吏が、皇太子の碧龍様だと知らないのよね。)
知らせることもできず、誤魔化すしかない。
「ありがとうございます。今はまだ大丈夫です。・・どうしても困ったら、お願いします!」
「・・そう?・・ちょっと下心もあったんだけど、残念。」
最後の方は翠花には、よく聞こえていない。
「うーん。翠花ちゃんがそう言うなら様子を見ようかな?でも、いつでも頼ってね?」
笑顔で引き下がる海里に一旦はホッとした翠花だったのだが。
「随分チャラチャラした虫が付きまとっているみたいだね?翠花。」
家まで送ってくれた海里の親切があだになり、碧龍と海里は、まさかの鉢合わせをしてしまうことになったのである。
「・・王都の官吏ともあろう人が、強引に女性に求婚した挙げ句、領主の息子を捕まえて、チャラチャラした虫呼ばわりとは、ちょっと許容範囲を越えてませんか?」
海里の声が低くなる。
(あ、やばい。)
「そちらこそ、人が必死に口説いている女性を横からかっさらおうだなんて、お行儀が悪いんじゃないかな?」
明るく返すものの、碧龍の目は笑っていない。
「あ、あの!今日は気分転換に甘味を食べに連れていってもらったんです。ただそれだけなんで!!海里さん、ありがとうございました!」
(皇太子にたてつかせちゃダメだ!海里さんが危ない。)
「・・翠花ちゃん。蒼麒さんに言い訳するの?君には求婚に応える気はないのに?中途半端はみんなが不幸だよ。」
蒼麒、が碧龍の偽名だと思い出すための時間がロスになり、その後の会話を、翠花は止められなかった。
「翠花に随分馴れ馴れしいね。君は翠花のなんなの?」
「僕は、翠花ちゃんの恋人だよ。あなたから恋人を守って何が悪いのかな?」
無言で成り行きをだまって見ていた青河と碧龍が海里にかばわれた立ち位置の私を鋭く見る。
(いや、分かるでしょ?違いますってば!)
全力で首を振ったのが伝わったらしく、彼らの目の険しさは若干和らいだ、のだが。
「こんな所で取り合われるとは、さすが藍玉の娘だな。」
少し訛りのある青風国語でそこに入ってきた別の人物に、碧龍と青河はぎょっとし、海里と翠花は首をかしげた。
「まあまあ、どこで誰が聞いてるか分からないんだから、一旦入りなさいな。」
祖母の助け船?で、そこにいた一同は、祖母の家で、お茶を飲むことになってしまった。




