四、行動
「さぁ行きましょう」
と、黒川は先頭を切ってテントを出た。
カッコつけたものの、すでに恐怖心が込み上げてきていた。
問題の甕棺は、遺跡の土壙墓群にあたる。
調査区の三分の一を占めており、南側に位置している。
正方形に掘り込まれた墓は、雑然と並んで乱立していた。
土壙墓のほとんどは、木棺(長い年月により、腐食し土と化していた)であったり、土を埋めた時の 土圧により甕棺が破砕され、中身は土と化していた。
偶然にも運悪く(運良く)そのまま姿で唯一、無事で残っていたのがアレであった。
しかもアレは土壙墓群の中央に位置し、小高く盛られていた。
いかにも・・・である。
大昔なら、クニの有力者や豪族の墓なんて考えてしまうのだが、近現代の遺跡だけあって、黒川は土地の権力者だろうと考えていた。
足枷をつけられてかのように重く感じる足に、心の中で、
(兵馬ガンバレ!) ※黒川兵馬
と、自分を励まし言い聞かせながら黒川は、その場へ向かう。
目的のアレ(甕棺)のある土壙墓に着くと、黒川は淡々とロープを取り出した。
そして、大きく外の空気を吸い込むと、底に水が少し残っている正方形の墓穴へ潜り込んだ。
甕棺と外壁の間は50㎝しかなく、少し身体を動かす度に甕にあたって居心地はとても悪い。
深さは1m50㎝で、1m62㎝の彼の頭がぽっかりと地面から出ている。
黒川は、漆喰で固められた石の蓋をロープでぐるぐる巻きにすると、一旦、地上に上がった。
「さてと・・・」
ポンポンとズボンについた土を払うが、湿って泥になっていて、さほどの効果はない。
「御開帳といきますか、末崎君、カメラスタンバイ」
言われた末崎は、震える手で一眼レフを構える。
声がうわずる。
「は、ふぁい、OKです」
かなり、ヤバそうだ。
黒川は苦笑いしながら、両手をプラプラと上下させ落ち着けと促す。
それから、親指を突き立てると、
「じゃあ、皆はロープを持って」
今度は萎縮する作業員に声をかける。
すると、「はーい」と、こちらも緊張で引きつった返事となる。
全員がロープを手にすると、黒川は再び土壙墓に潜り込み、慎重に石の蓋に手を置く。
「よし、いいぞ」
黒川は、右手を大きく振り指示をだした。
ロープが引っ張られると、彼は石の蓋を押す。
が、ビクともしない。
「みんな、もっと力を入れて!」
その声に応じ、さらにみんなは力を込めて引っ張る。
ついに石の蓋が漆喰から外れ、動いた瞬間、ロープの締め付けの圧力で石が真っ二つに割れてしまう。




