十五、災い
それより一時間前、石嶺は自宅にて、黄金の経壺を見ていた。
彼もまたこの経壺が何であるか分からなかった。
手に取ってまじまじと見ていると、勝手に壺の蓋に手がかかろうとして、慌てて止めた。
黒川から聞いた夢の話を思い出したのだった。
「ふん、バカバカしい」
石嶺は一旦、掌中から離すが、横目でチラリと見ると再び蓋に手をかけた。
(中身が何であるか分れば、はっきりする)
彼の調査者としての使命と探求心が勝った。
ごくりと唾を飲み込み、静かに蓋を開け覗き込む。
「・・・・・・・・・・・・!!!!!」
壺の底には暗黒の世界が広がっていた。
今まで押さえつけられていた闇が壺の中で、暗雲が渦巻くと一気に濁流となって、噴き出す。
石嶺は慌てて蓋をしようとするが、瞬時に部屋一面を漆黒が覆い、彼は闇に飲まれた。
上空から、遠くの方でごろごろと雷音が聞こえだした。
闇に雲が覆われ、どす黒い闇世界が広がっていく。
稲光が走り、辺りを一瞬、照らしだす。
(夢の中と同じ光景・・・)
黒川は思った。
それは不吉さを感じさせるには十分であった。
黒川と岬は男が入ったパンコンテナを抱えながら、土壙墓へと向かった。
落胆は大きいが、経壺はなくても、せめて男だけでも戻そうと二人して運ぶ。
墓穴まで来ると、ゆっくりとパンコンテナを降ろす。
それから、機械作業で二人は男を抱え、甕棺の中へ戻そうとする。
!
男の目が開いた。
黒川の首を男の両手が締め付ける。
岬は驚きと恐怖でその場に崩れ落ちる。
「・・・・・・!」




