十三、叫び
相次いで明け方から作業員たちの訃報があった。
それぞれの家を弔問し、六件目の西川宅を出た。
発掘に参加した黒川と岬以外の作業員は死もしくは、重篤な状態となり病院に担ぎ込まれた。
原田のおばちゃんも末崎、羽田も生死の世界を今、彷徨っている。
無事なのは黒川と岬だけだった。
彼の瞼の裏には、死んでいった作業員達の苦悶の表情と夢の中の男のように、身体に黒い浮腫があったことだ。
弔問やお見舞いを済ませ、市役所に戻ったのは夕方だった。
黒川、石嶺、岬は沈痛の表情で互いの顔を見合わせた。
「・・・なんで、こんなことに・・・」
石嶺は声を絞りだして呟いた。
「石嶺係長!」
黒川は、夢での出来事、今朝、町史で調べたことを話した。
「発掘は取りやめにして、元に戻しましょう!」
と、思いをぶちまける。
「バカな事を言うな!」
「バカなことでしょうか!」
一喝する石嶺を睨みつけながら、黒川は叫んだ。
しばらく互いの睨み合いが続いたが、石嶺は巨体を揺らし、椅子に腰掛ける。
「お前、本気で言ってんのか、夢を信じるなんて、どうかしてるよ!」
「しかし!」
「いいか、発掘調査は遊びでやってるんじゃないぞ、俺達は、後世の人に成果を伝える義務がある」
「それは、分かっています!でも、人が死んでいるんですよ」
「たまたまだろ」
「携わった作業員が6人も死んでいるんですよ。たまたまなんてものじゃない。これは必然です!マスコミだって黙っていませんよ」
「一時、中断すればいい」
「それでは、なにも解決しません!」
「誰がお前の、世迷言など信じる!」
石嶺は椅子から立ち上がると、肩をいからせドアを激しく開ると、部屋を出て行った。
「兵ちゃん・・・」
岬は不安な表情を隠そうともせず、黒川を見つめた。
リーン、リーンと係の電話が鳴った。
黒川が緩慢な動きで受話器をとる。
しばらく、話した後、岬に向かって大きく首を振った。
七人目の犠牲者が出たのだった。
彼は心に強い決意を抱いた。




