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十、悪夢


 黒川は岬と別れたことを後悔しながら、黄金色の経壺を調べていた。

 しかし、家の中の資料を漁っても、関連するものや参考になるものは見つからなかった。


「・・・一体、なんだろ、アレ」


 テーブルに頬杖をついて、呟いた途端、欠伸がでてウトウトとなりはじめた。


「まずい・・・な・・・」


 自分の意志に反して、瞼が落ちてくる。

 人の本能的欲求が勝った。

 黒川は深い闇へと陥った。



「・・・・・・」


 真っ暗闇の世界が広がっていた。

 黒川の眼前には一本の光る道がある。


(これを進めってことか・・・)


 彼が一歩目を踏みだそうとした瞬間、辺りの闇がさらにどす黒い雲に覆われる。

 刹那、光がジグザグに斜線を描く、それは雷だった。

 けたたましい轟音とともに落ちてくる。


(これって・・・夢だよな・・・)


 そう思ったら、彼の背中すれすれを雷が落ちた。

 しばらくして、鼓膜をつんざくような、激しい落音と衝撃がくると、再び雷光が煌めく。


(行けばいいんだろ)


 彼は余計なことを考えず、ひたすら光る道を駆けだした。

 背後に雷光が煌めき、轟音が聞こえる。

 自分に落雷する恐怖を感じながらも、とにかく走った。

 前へ、前へ、前に、


(どのくらい走ったのだろうか)


 黒川がそう思った瞬間、足元の光る道が、突然、電源を切った蛍光灯のように消えた。


「・・・おい」


 宙に浮きながら呟く。

 落下していく中、彼はこの夢の理不尽さに腹を立てていた。

 同時に、


(なるように・・・なれだ)


 と、腹を据えた。

 黒川は、眼下を睨みつけ、目を大きく見開く。

 すると、落下するスピードが急に遅くなり、フワフワと暗闇の空中を浮遊する。

 彼は、まだ目の前のどん底を睨みつけている。


(・・・!)


 黒川の全身は、それを見た瞬間、凍りついた。

 眼下からあの白い物体が、ゆっくりゆっくりと浮上してくる。

 彼はそれが何であるか、すぐに分かった。

 白い物体は黒川と並んで浮遊した。

 それから、ゆるやかに少しずつ振り返る。

 甕棺から取り出した時の、一部肉片が欠けていて、骨が露出している顔。

だが目は開いて、じっと彼を見ていた。


 黒川は金縛りにあい、声も出ず、指一本すら動かすことが出来ない。

 そんな彼にミイラと化したあの顔がゆっくりと迫って来る。


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