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出来過ぎですよ

性格の悪い女は精霊内にまだ21号がいるのに気づいた。


「あれえ、21号まだいる。

今までの話で自分の幸運に気づいて浄化しちゃうかと思ったんだけど…」


21号はそう言われてちょっとモジモジした。


「えーあの…ロージーちゃんへの未練がありまして…」と。


そこにすっかり森の精霊と意気投合した感のあるイケメン二頭身が口を出した。


「性格の悪い女よ、お前はさっき精霊にロージーちゃんと結婚する方法を教えるとはっきり言った。

それを信じて精霊が持ってきた食料を私も口にした。

私も彼らに義理がある。

私からも尋ねる。お前はいったい何を根拠にロージーちゃんと結婚する方法があると言い切ったのだ?」


「あーそれね。

それはね、21号のクラスのロージーちゃんは昔のイメージがあるわけだから21号が社会的に大成功したり、痩せてイケメンになって目の前に現れても結婚しようという気にはならないかも知れないけれど(性格の悪い女の個人的意見)、ほかのクラスのロージーちゃんなら望みはあるって言いたかったの。

今後のがんはりしたいでは、ほかのクラスのロージーちゃんとゃんとなら結婚できる可能性はあると言いたかったの」


「他のクラスのロージーちゃんって何?!」と21号は叫んだ。他の精霊も。


「私が言いたかったのはロージーちゃんはこの世に一人だけじゃないってこと」


「いや!ロージーちゃんはこの世に一人だけだからっ!!!」と力んで21号は反論する。


精霊内のリーダーっぽいやつがここで口を挟む。


「…性格の悪い女が何を言いたいかなんとなくわかった。


21号のクラス以外にもロージーちゃんぽい子はいる。数は少ないかもしれないけれど、明るく社交的な性格の良い子が。

現に今もどこかのクラスでロージーちゃんぽい子は誰に対しても分け隔てなかく話しかけてくれているだろう。


性格の悪い女はそういう希少なロージーちゃんぽい子と将来結婚できるような自分になるために、自己研鑽に励めとかいう綺麗事を言うつもりだ!」


「おお、さすが経験のある大人。

察する力があるね〜」と性格の悪い女は感心する。


「ふん、気軽に私のことを評してほしくないな。

あんたみたいに詭弁を弄する女に。ほんと…一番嫌いなタイプ」


むっ。

おっまえこそ私一番嫌いなタイプだっつーの。

トゲトゲしちゃって。

こいつなんか他のやつらと違ってホント気難しそう。

他のやつらは性格の悪い女様続きの話をお聞かせ下さいって雰囲気醸し出してるのにこいつだけは私のことを本気で嫌悪してる。


こいつがいなきゃサクサク物事進みそうなのに…他のヤツら意外に素直そうだから。


さて、どうしよう。

私もすぐに元の世界に戻れないんであれば上手く丸め込んで精霊に身の回りの世話させたいと思ってたんだけどな。

なにせ二頭身は役に立ちそうもないし…


しゃーない、とりあえず一度追い払ってこいつらを手なずける方法を改めて考え直すか。




性格の悪い女は一回閉じた目をくわっと見開いた。


「私オタクのこと褒めてあげたのに…

そーゆー敵対的態度をとる人とは話したくありませんねぇ。

そーんなに私のことが嫌いならどーぞお引き取り下さいっ!」


性格の悪い女がピシャリと言うと精霊たちは一瞬固まったがヒソヒソと内部で話し声がした後「このまま食い逃げを許すのは癪に触るが、お前なんかと同じ空気を吸っていたくないから帰るっ!」と炭焼き小屋を出て行こうとした。


その時一瞬チラと21号が振り返ったのを性格の悪い女は見逃さなかった。


「あ、そうそう、もし私の話の続きを聞きたかったら食べ物もってまたおいで。

今度は野菜のキッシュか何か持ってきてね〜新鮮なフルーツとかも〜」と性格の悪い女は森の精霊に声をかける。


「フンッ」と言う声とともにバタン!と戸の閉まる音がした。




精霊が去り、炭焼き小屋で二人っきりになると私はイケメン二頭身を責めた。


「二頭身、ずいぶん私のことをディスってくれたわねぇ。精霊たちと一緒になって」


「まあ許せ。

私は人との共感能力が高いのだ。

だから仇であるはずの彼らの気持ちにも共鳴してしまったのだよ」


そんなことを言う二頭身の姿を眺めてつくづく思った。

うーん、やっぱ顔がでかい。


「…だけど二頭身、あんた婚約者がいたんだねぇ、そう思うと余計気の毒な気がするな、今の状況」


「婚約者ではない。二人で密かに結婚を約束していただけで…

何せ彼女とはひどい身分違いだったから国にいた時はおおっぴらに交際できなった。


この国の王になりそれなりに人心を掌握した時点で彼女を呼び寄せようと思っていたのだが、森の精霊に招待状を出し忘れたせいでこんなこんな姿になってしまって、それが叶わなくなった」


「ってかマジあいつら心狭いよねー招待状が来なかったくらいで」


「いや、私も不注意だった。彼らはとても傷つきやすそうだ。

普通の人間ならならそう気にならないことでも、彼らにとってはひどく自分をないがしろにされたような気がしたのだろう、招待状が届かなかったことは。

あのとき、私に対して何もかもに恵まれていてムカつくと言って呪いをかけたのは、存在を無視されひどく傷ついた本心を隠すための建て前だったかもしれないな?」


「うわー二頭身出来過ぎー

なんかすごく立派な人だね?」


「そうでもない…

この姿が嫌で結婚を約束している娘がいる身でありながら呪いを解くためにお前と結婚しようとしたのだからな。

まあ思い留まったけど。

ハハハ」


あ、この人初めて笑った。

うーん、それにしても顔がでかい。やっぱりでかい。




その後二人がたわいもない話をしているうちに夜がやってきた。


昨日と同じように椅子に座ったまま眠りについたイケメン二頭身は夢を見た。故郷で暮らしていた頃の恋人との逢瀬の夢を。

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