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森の水溜り

さあっと性格の悪い女の足元に水が押し寄せてきた。


それは森の精霊たちの涙だった。

森の精霊たちは地面に崩れ落ちポタポタと大粒の涙を落としあたりを水たまりにしていた。


その様子を見てイケメン二頭身はこの森の所々にある枯れない水たまりは彼らの涙なのではないのだろうか?と思った。

一方性格の悪い女は今がチャーンス!と思った。


「ねっ、この人そんなに悪い人じゃないでしょ?たまたまイケメンに生まれ家柄も性格も良かっただけで…

それをあんたらってばこんな姿にしちゃって…

あんたらに酷い目に遭わされながらもこの人あんたらを思いやってるんだよ、この事実をどう思う?

ね、反省した?反省したよね?!」


そう詰め寄られ森の精霊はコクコクと頷く。


たたみかけるように女は言った。


「じゃあこの人にかけた呪いを解いてあげて!」と。


「それは無理!

一回かけた呪いは自分らも元に戻せないんだってば、だから性格の悪い女よ、お前が結婚して彼を元の姿に戻してやってくれ!」と21号は叫んだが、集合体の一部の数人は、いや…こいつと結婚するくらいならこのままの姿で生きて行くほうがマシなんじゃね?と思った。


「…おいお前ら…

今私と結婚するくらいならこのままの姿で生きていくほうがマシなんじゃね?とか思ったな?」


ドスのきいた女の声を聞いて「ひいーそんなこと思ってませんー」と嘘つくやつと「ごめんなさいごめんなさい」と謝るやつらの恐怖と動揺で森の精霊はうねうねとうごめく。


性格の悪い女に目をつけられ自分の過去を暴かれ踏みにじられたらたまらないとみな思ったのだ。




精霊たちがオタオタしているなか「性格の悪い女よ」と二頭身は静かに語りかけてきた。


「もう良い。

森の精霊をこれ以上脅したり傷つけたりするな。

彼らの冷や汗と涙でこの森は水浸しになってしまう。

そうしたら私も住処を失う」


「二頭身…」


うわ…なんて静かで寛大な態度。

普通こんな目にあわした相手にこんなこと言える?


んーでもきゃあカッコいい素敵〜、とはならないなー

ホント、この姿じゃ何をしても何を言っても台無しだね。

どんなに醜くても恐ろしい姿のものにはどこか色気とか独特の美しさがある。

けど彼の姿にはそれがない。

無様でただただ滑稽なだけだ。

やっぱり人は見た目だよねぇ。

でもいい人にはいい人だな、二頭身。




「腹を決めた。

私はこのままこの森でひっそりと一人暮らしてゆくことにする」と二頭身は宣言した。


「え、そのままの姿で?」


「そうだ。

私は今までずいぶん本命チョコをもらってきた。

好きだった娘からもそうでない娘からも。

私は男女問わず誰からも好かれ、そしてそれが当たり前だと思って生きてきた。

つまりそれを特別有難いとは思っていなかったのだが、今精霊の話を聞いて自分はとても贅沢な思いをしてきたのだなと気づいた。


まあ人の人生には波があって、ずーっといい思いをして生きていくわけにはいかないのかもしれない…

私の幸運はこの国の王になった時点で尽きてしまったのかもしれないな?」


そう言って力なく微笑んだ二頭身に精霊は土下座した。「わーん、ごめんなさい、ごめんなさい!」と。


それに対して「許す許す」と言った二頭身を見てこれは多分いいシーンなんだろうなとは思ったけど思い浮かんだ言葉は「ここに妖怪同士の友情生まれる」だった。


だってうねうねした水飴人形の集合体と巨大頭のイケメンだよ。

彼らを妖怪と呼ばずしてなんと呼ぶ?


「…お前ほんっとに性格悪いなっ!今言ったこと聞こえたぞっ!」


集合体の中の一人が叫んだ。


わーすごい耳のいいやついるー

口の中で小さく呟いただけなのにー


「いやいや、私そんなに性格悪くないって、正直なだけで…

その証拠に教えてあげようかなー

ハートのチョコ大事に取ってあるやつがロージーちゃんと結婚する方法」


「!!!!!!!!」


おっ驚いてる驚いてる。くすっ。


「だっ騙されるなっ!21号!なんか企みがあるに決まってる!」


「さらに傷つけられるのが落ちだぞ!」


「そうだそうだ!相手は性格の悪い女だぞ?!」


合体してるうねうしたやつらが口々にそう叫んだけど、みんなに21号と呼ばれてるやつは「お…しえて…ください…」と全面に出てきた。


意外と素直じゃん。


「うん…その前にもう少しロージーちゃんがどんな娘だったか教えて?」


そう尋ねたら21号はポソポソと嬉し恥ずかしそうにロージーちゃんについて話し始めた。







※補足

21号は集合体に21番目に仲間入りしたので21号と呼ばれております。


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