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長居は無用

作戦大成功!


やっぱり二頭身にかけられた呪いは私じゃなくても精霊が性格が悪いと認定した女と結婚すれば解けるものだったんだね。


私はさっきクリスティーヌちゃんに頬ずりした時、彼女にこうささやいた。


「お願い。これから言うことを黙って聞いて。決して聞き返えしたり理由を聞かないで。表情も変えないで。

二頭身と幸せになりたいのなら、私と二人っきりになった時、男が聞いたら、こいつ性格悪いなって思うようなコトを私に言ってきて」と。


クリスティーヌちゃんは出来る子だった。

彼女はなにかを察し、きっちり任務を遂行してくれた。

まさに百点満点の働き!

精霊はまんまとクリスティーヌちゃんに騙されて、彼女を性格の悪い女と認定したのだ。


ふふ、してやったりって感じ!

はあーなんかスカッとするわ〜


お、二頭身、なんで突然元に戻ったのかに戸惑いながらもクリスティーヌちゃんと泣きながら熱い口づけを交わしてる。

おうおう、二人とも幸せそうだねぇ。


彼らの様子を私と一緒に眺めて「あー?なんかよくわからないけど…まあ、良かった。

性格の悪いブスと結婚して呪いが解けるより性格の悪いかわい子ちゃんと結婚して呪いが解けた方が…」と精霊たちはのたまう。


私は二頭身…あ、もう二頭身ではないか。まあいい、二頭身は二頭身だ。二頭身を見てあることに気づいた。


「二頭身って元々顔大きめの人だったんだ。六頭身くらい?

イメージとして八頭身くらいのシュッとした人を想像してたんだけどな…」


このつぶやきに応じたのはリーダー格のやつ。


「いや、元は確か八頭身くらいだった。呪いをかけたメンバー数人が途中でお前に浄化され消えた関係上、完全には元に戻らなかったんだろう」


はーんそう言うことか…


と、いうことであれば…二頭身が完全に元に戻らなかった理由はこの森から消えたメンバーの分の呪いが解けなかったから…だけじゃないよね?


精霊の中の耳のいいやつ。

あいつにはクリスティーヌちゃんへの私の耳打ちが聞こえていたんじゃないかな?

あいつ私の作戦を察してみんなには黙っていてくれたんじゃないだろうか。


ふ、いいとこあるじゃんお前、と思いながら耳のいいやつを見る。

一瞬目が合ったんだけど、やつはふんっとすぐ目をそらした。


イケメン二頭身から少々顔大きめのイケメンになったシャール様とやらとクリスティーヌちゃんはまだ熱い抱擁を続けている。


…二頭身、これでこの国の王様としてお城に戻れるね。

そしてクリスティーヌちゃんはめでたくこの国のお妃様。


二人とも、幸せに暮らせよ…と見守る私の目の端にクリスティーヌちゃんの足元にある大きなリュックが入ってきた。


その瞬間、ある疑いが心に湧いた。


…作り…話…なんだよね?さっき私に言ったこと。


うん?だけど…

あまりにもスラスラと…



もし、本当に最初に話したことが嘘で、さっき私に話したことの方が本当ならあのリュックにはお財布が二つ入っているはず。

クリスティーヌちゃんのお財布とイライザちゃんのお財布が。


私はちょっと中身を確かめてみたくなって、リュックに向かって歩きかけたんだけど一、二歩で足を止めた。


なんか野暮野暮。

余計なことして妙な修羅場に立ち会いたくないもの。

せっかくハッピーエンドにまとまりかけているのに。


クリスティーヌちゃんがさっき嘘をついたのか、本当の事を言ったのかはわからないけれど、どっちにしても私が彼女に贈る言葉はたったひとつ。


「あっぱれ!クリスティーヌちゃん!」




さて、目標通り二頭身をほぼ元の姿に戻したわけだから私のこの世界での役目は終わったよね。

であればこんなところに長居は無用だ。


私は元の世界にかーえろっ。




「おい!精霊どもよ。

とりあえず今日はあの二人を炭焼き小屋で休ませて、明日お城に向けて出発させてやんな。

この森を抜けるまであんた達が案内してやってよ?

何日かかかるだろうから、安心して野宿できるところも探してやって。

なにせこの森は富士山の樹海くらい広いんでしょ?」


性格の悪い女がそう言うと「そうそう」と眼鏡をかけた精霊はうなずいた。

性格悪い女はつかつかとその精霊に近づき腕をぐっと掴んで自分に引き寄せおもむろにクンクンとそいつの臭いを嗅いだ。


「あれ?あんたなんか臭くない?」


「え…そんな…」


突然そんなことを言われ眼鏡をかけた精霊は戸惑った。


精霊の腕を強く掴んだまま性格の悪い女は言葉を続ける。


「もしかして、あんたお風呂入ってないんじゃない?」


「!!!た、た、確かにそうだけど、こっこっこっここに実体はないわけだから臭うはず…」


「えーあんたどのくらいお風呂に入ってないの?」


「あ、こ、こ、ここに来て一年くらいだから…」


「えっウソっ!じゃあ一年お風呂入ってないの?!ヤダ信じられなーいっ!」


眼鏡をかけた精霊はブルブルと震えだした。


「あ…お風呂…家に帰ってお風呂入らなきゃー!!!」


そう叫んだかと思うと次の瞬間彼は消えた。

彼の腕を掴んでいた性格の悪い女を伴って。

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