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結婚する

「性格の悪い女よ、クリスティーヌとの結婚は自分のためにではなく彼女のためにしてやれと言うのだな」


「そうそう」


「今ここで結婚してやるのが後々の彼女の幸せに通じるとお前は言うのだな?」


「そうそう」


「性格の悪い女よ、決心した。私は彼女と結婚する」


二頭身がそう言ったので私はよしっとガッツポーズをとった。

隣で精霊たちも何やら喜んでる。

21号も、シニカルなリーダー格も。


まあやつらもかわい子ちゃんがこの森に住むことを単純に喜んでいるわけじゃなく、二頭身に可愛らしいパートナーができれば自分たちの罪も少しは軽くなるような気がしてるんだろう、多分。


「あ、そうだ二頭身、彼女に初めての贈り物をしなよ。

ほら、あそこにシロツメクサ咲いてるじゃん?あれでティアラの代わりの花輪を作ってあげなよ。

あんたはそんな姿形だし、クリスティーヌちゃんのドレスはボロボロだし、立会人は私とぐちゃぐちゃした不気味な森の精霊…

それではあまりにも結婚式として格好がつかん。

せめてお花でクリスティーヌちゃんの髪を飾ってやったら?

あんたが出来なければ私が作ってあげてもいいけど」


そう言ったら二頭身は「自分で作りたい」と言ってシロツメクサの咲いてる方にヨタヨタと歩いって行った。


そう、ちょうどクリスティーヌちゃんがチラチラとした光を浴びている窪地とは逆の方向に。


私は二頭身がバランスを崩さないようにそろりそろりと花を摘み始めたのを見届けてクリスティーヌちゃんの元に向かった。


精霊は私より一足先にクリスティーヌちゃんのそばに行っていろんな角度でクリスティーヌちゃんを鑑賞してデレデレしてる。

あ、なんかクンクン匂いを嗅いでるやつもいるじゃん!


やつらめ…クリスティーヌちゃんに己の姿が見えてないのをいいことに好き勝手して…

ま、クリスティーヌちゃんに精霊の姿が見えてないのは私にとっても都合がいいんだけれどね。




「クリスティーヌちゃん、二頭身あんたと結婚するって。今あんたのために花を摘んでるよ」


そう言ったらクリスティーヌちゃんの頬に涙が流れた。


「うれしい…元のシャール様ではないけれど、私ずっと欲しくてたまらなかったものが手に入る…」


「良かったね、まあよくあの妖怪みたいなのと結婚する気になるな…って思うけどね、私は」


「シャール様が私と結婚して下さる気になったのは性格の悪い女様のお力添えがあったからですね?

ありがとうございます」


「やーなんか妙にクリスティーヌちゃんにはシンパシー感じるところがあるんだよね、私」


「私もです…

ふふ、性格の悪い女様にだけは本当のこと言っちゃおうかな…


あのね、シャール様って本当に誰にでも優しい素敵な方なんです。

私はずーっとシャール様が好きでいつも観察していたので、少し前から恋をしていらっしゃるんじゃないかと気づいていた。

お顔がなんとなく華やいでいたから。

でもまさか相手が靴磨きのイライザだとは夢にも思わなかった。

だからイライザから話を聞いた時は本当に驚いたわ…


あのね、あの話、実は嘘なの」


「あの話?」


私は思わず聞き返した。

この時点で精霊たちのかわいいかわいい言ってた声がピタリと止んだ。


私と精霊は彼女の次の言葉を待った。


「イライザが公爵家の三男と結婚したというのは嘘なの。

イライザはシャール様のことを死ぬほど心配してた。


私はシャール様と密かに付き合っていたことを私だけに打ち明けてきたイライザと二人でこの国に入ったの。行方不明になったシャール様を一緒に探そうと。

でも彼女、森のふちの宿屋でインフルエンザになって寝込んじゃっちゃって…

それをチャンスと思って一人でこの森に入ったのよ。

だってシャール様とイライザが会ってしまったら私に勝ち目はないじゃない?

あの人たち恋人同士なんだもの。


ふふ、彼女多分インフルエンザはもう治っただろうけど、宿賃が払えず、今頃宿屋で働かされてると思うわ。

彼女のお財布も私持ってきちゃったから」


クリスティーヌちゃんはそう言うと晴れやかに笑った。


「う…わぁ…」


あ、このうめくような声を出したのは精霊たちね。


私は「ほう、クリスティーヌちゃん、やるね」って褒めたよ。


そうしたら精霊たちは「性格の悪いもの同士が認めあってるぅ…」と顔をしかめた。


そうこうしているうちに二頭身が花輪を手にこちらにやってきて、クリスティーヌちゃんとなにやら話をし始めた。


なに?

私に背を向けちゃってヒソヒソと。

ああ、そうか、プロポーズしてるんだな。

プロポーズされるって女の子にとって憧れの行事だもんね?外すわけにはいかないよね。

えらいぞ、二頭身、あんたはやっぱりわかった男だね。


「ね、あんたたちお互いの意思の確認は済んだ?

ならちゃっちゃっと結婚式をしてしまおうよ。

神父役の私は些細なきっかけでこっちの世界に来た身、またどんなきっかけで急に元の世界に戻ってしまうかわからないから」


そう声をかけたら二頭身とクリスティーヌちゃんはうなずいた。


クリスティーヌちゃんは文句なしに嬉しそうだし、二頭身も満更ではない様子。

こんな醜い姿の自分に愛を貫いてくれる相手がいることを幸せに感じてるんだろう。


「クリスティーヌちゃん、しゃがんでやって。二頭身があんたの頭の上に花輪を置けるように」


私の言葉に従いクリスティーヌちゃんは二頭身の前にひざまずいた。


うわぁ…

これなんて言うの?絵的にザ、美女と妖怪。


華やかなクリスティーヌちゃんにシロツメクサの花輪は質素すぎるけど、まあそれなりに似合ってる。

彼女はどんな服でも着こなす読モタイプだね。


いやいや、今はそんなことはどうでもいい。

結婚式を始めよう。




「ね、二頭身…あ、シャール様とやら。あんたクリスティーヌちゃんを生涯の伴侶として健やかなる時も病める時も変わらず愛すると誓う?」と私が言ったら「いきなりだなぁ」と精霊が茶々を入れてきた。


二頭身はカジュアルな私の物言いに特に文句も言わずクリスティーヌちゃんを見つめ「誓う」と力強く言った。

クリスティーヌちゃんはほぅ〜と幸せそうなため息をついた。


いや〜

本人たちはもしかしたら今幸せなのかもしれないけどはたから見たら妖怪と、差し出された人身御供にしか見えないよ…

あ、続き続き。


「ね、クリスティーヌちゃんも二頭…シャール様を生涯愛するって誓う?」って聞いたら「雑だなぁ…」と精霊が再び突っ込みを入れてきた。


気にしなーい。

クリスティーヌちゃんも機嫌よく「誓います」って言ってるし。


「では誓いのキスを」


私の指示で二頭身はひざまずいているクリスティーヌちゃんに顔を寄せていったんだけど、ぐらっとバランスを崩した。


「あやや、危ない!

もぉ〜何をするのもいちいち危ないなぁ。

しょうがない、二頭身はじっとしてな。悪いけどクリスティーヌちゃんからキスしてあげて」


この言葉に従いクリスティーヌちゃんは二頭身に唇を寄せていったのだけれど…


あ…あ…クリスティーヌちゃん二頭身に頭から食われそう!

やっぱり絵が怖ーい!!




恐怖心を持って二人を見守る私と精霊の前でそれは起きた。


クリスティーヌちゃんの唇が二頭身の唇に触れた瞬間!にょーんと伸びのだ。二頭身の体が。

そして頭はシュッと普通のサイズに戻った。


急に体のバランスが変わった二頭身は目の前のクリスティーヌちゃんを巻き込んで派手に転んだ。




よっしゃあああ!

解けたね、二頭身にかけられた呪い。

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