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違うの?

二頭身は私に負けないくらいの声で怒鳴った。

「大声を出すな!」と。


その後「あ、なんか女の子がシャール様?シャール様っ!て叫んでるぞ」と言った耳のいい精霊を見て私は疑問を感じた。


「ねえ耳のいいの、なんであんた頰を染めてんの」


「へへっ、実は俺声紋で人の顔が分析できるんすよ。もうこの声はかなりのかわい子ちゃん。メガトン級の」


わーこいつすごい能力持ってんな。

実生活で生かせばかなり特殊な職につけるんじゃない?


そんなことを考える私の目の前でイケメン二頭身はがっくりと膝を折って地面に突っ伏した。


「あ、大丈夫?」と心配して声をかけたんだけどチラリともこちらを見ない。

何か小さな背中から恨みめいたオーラを出している。


うん…大声でイライザちゃんを呼んじゃったことを恨んでるんだ。

いや、悪気はなかったんだよ?

つい咄嗟に…


私も精霊たちも滲み出る二頭身の絶望みたいなのを汲み取ってシュンとしてしまった。

その間にもイライザちゃんの声はこちらに近づいてきてる。


そしてついに!木立の中からイライザちゃんが現れた。


「うわ…可愛い…」


思わずそんな言葉が漏れるくらいイライザちゃんは可愛かった。

精霊たちはものも言わずに直立不動で、ただ見とれている。


ちょっとシニカルなリーダー格のやつもちょっと戸惑ったように視線を向けたり泳がしたり…

まあ、無理もない、滅多にお目にかからないようなかわい子ちゃんだもの。


えっとね、イライザちゃんがどんな感じか説明すると…


歳は多分二十歳前後だと思う。

お顔はきれいなたまご形の輪郭に少々大きすぎる感じのする茶色い瞳、少し薄い唇は鮮やかなピンクに色づいていてはつらつとした色気を放ってる。


髪型は前髪を厚めに下ろして、ハーフアップ。


元はゴージャスだったであろう桜色のドレスの裾は所々破れて土に汚れている。


可愛らしいほっぺにはいくつかすり傷が出来ていた。

そして背中には華奢な体に不似合いな大きなリュックを背負っている。


あ…なんか…この子はきっと強い覚悟で二頭身を探しにこの森に足を踏み入れたんだろうなと察して少し目頭が熱くなってきた。

あの大きなリュックが彼女の決意の表れだ。


ヤバイヤバイ、ここで泣いたら精霊たちに鬼の目にも涙なんて言われちゃうよ。




「あ、誰?」とイライザちゃんは私を見て可愛い声で尋ねてきた。

イライザちゃんには森の精霊の姿は見えてないみたい。

見えてたらきゃーって言うだろう。


私はとりあえず自己紹介をした。


「私はね、訳あってこの森に迷い込んだ、性格の悪い女…

あ、性格の悪い女様って呼んでね」


「性格の悪い女様…

あなたがみんなに恐れられているこの森に棲む精霊なの?」


「違う違うぅっ!精霊はもっと不気味だから」


「良かった、精霊じゃないのね。

変な呪いをかけられたらどうしようかと思った。

あの、私、人を探してこの森に入ったんです。

今その人の声がこちらから聞こえてきたような気がしたの。


私、一人で来るの怖かったんだけどこの国の人は森の精霊を怖がって一緒についてきてくれなかったの。

シャール様のような目にあうのはごめんだって。

いったいシャール様がどんな目にあったのかを知りたかったんだけど、みんなお茶を濁して教えてくれなかった」


「あ〜それは…」


そんな会話をしているうちに、彼女の視線は私から私の後ろで突っ伏してる二頭身の頭部に移っていった。


二頭身の体は大きな頭の裏側に隠れてここからは見えない。

だから頭だけが正体不明の毛玉みたいに見えてんじゃないかな、イライザちゃんには。


イライザちゃんはピタリと喋らなくなった。


う、なんとも言えない重苦しい空気…


いや、どうしよう。ここにいる金色のモフモフしたのがあんたの探してるシャール様の頭だよって、言っていいのか悪いのか…


精霊たちも固唾を呑んで二頭身を見たりイライザちゃんを見たりしている。


イライザちゃんは胸の前でぎゅっと手を組み、恐る恐る言った。


「シャール様なの?」


わ、どうしてわかったんだろうと少し感心する。

愛?愛なのか?


ひゃー二頭身どうするつもり?

このままずーっと突っ伏したまま過ごすの?なんてやきもきしている私の耳に細く長い二頭身のため息が聞こえてきた。


そしてそのあと二頭身は重そうに巨大な頭を上げた。

二頭身、首の筋力すげーな…

いや、今はそんなことに感心している場合ではない。


私はイライザちゃんが恐怖で卒倒するんじゃないかと思って、倒れるであろう彼女の後ろ側にとっさに回った。支えてやろうと思って。


けれどイライザちゃんは倒れなかった。

大地に足を踏ん張って仁王立ち。


おお、意外と肝が座ってんな、イライザちゃん。

この化け物を見て微動だにしないとは。

この私でさえ最初は恐怖に怯えたというのに。




なにかを諦めて、ゆるりと立ち上がった二頭身が彼女に声をかけた。


「久しぶりだな、クリスティーヌ」


!!!???!!!???!!!


え、何?この子二頭身の恋人のイライザちゃんじゃないの!?

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