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8人の怒れる異世界転生者たち

作者: 伊庭 当

※この小説は連載中の拙作「13人目の異世界転生者」と似たようなタイトルですが何一つ世界観もキャラもつながりはありません。雰囲気も対して似ていないため両方を読む必要は皆無です。が、あちらを書いてるときに浮かんだ考えを形にしたものではあります。


※作者は知識チートものは普通に好きです。

「くそー!せっかく異世界に転生したのにろくなスキルもらえなかったー!」


 ボクは伊勢田哲夫。ご説明不要の異世界転生者だ。しかし神様との面談の際に生前のコミュ障を遺憾なく発揮しろくに意志を伝えられず、平々凡々なステータスでしか転生させてもらえなかった。いやいきなり落雷死からの知らない人とお話だからね。普通無理ってもんですよ。そんなこんなで今は慣れない異世界の村を半泣きで歩いている。


「しかし!ボクは幸い前世ではクラスでの成績が中の上くらいの方だった!幸いここはどっからどう見ても中世ヨーロッパ風の異世界!!中から上くらいの現代知識でも結構いいとこまでいけるはず!」


 たとえば計算の仕方に社会制度、料理の仕方、全部教科書とかテレビで見たおぼろげな記憶だけどまあなんとかなるはず!気を取り直したボクはさっそく第一村人発見!涙も吹き飛んだグッドスマイルで話しかける!


「こんにちはお兄さん!何かお困りのことはありませんか!?」

「あれ、伊勢田じゃん。お前も転生したの」

「ゲーーーーッ!丸井!?」


 なんと第一村人だと思っていたのは交通事故で死んでしまった同級生の丸井だった。彼もこの世界に転生していたのか。まずい!丸井は社会の成績がクラスナンバーワン!どうやら社会制度で内政チートは諦めたほうがよさそうだ。


「ははあん伊勢田、お前もさてはこの世界で知識チートでちやほやされようって腹だったな」

「お恥ずかしながら」

「恥ずかしがることないよ、みんな当然、異世界に転生したら思うことさ。そうだ、こっちでどう暮らすかまだ決めてないだろう。みんなもお前に会ったら喜ぶから俺たちの家にこいよ」

「俺たち?ゲーーーーーッ!!」」


 言われるがままに民家に案内されるとなんとそこにはここ数ヶ月で次々死んでいったかつての学友たち!しかも全員いろいろな分野のエキスパートたちだ!凄い、こんだけいたらちやほやどころか国家だって作れちゃうんじゃないか!?


「しかし君たちほどの人間がなぜこんな辺境の村で生活を?君たちならばこんな文明の程度が低そうな世界、今頃は一人一人でだって偉人になれたはずだぜ」

「お前来たばっかりでよく辺境とか程度が低そうとか言えるな~まあ俺たちもみんな最初はそう思ってたんだけど……まあいい、そのわけを一人づつ説明しよう。まず一人目!高田!!」

「おう!!」


 あーーーっと、なんと!彼は高田、始業式早々に通学中落下物で死亡した化学のクラスナンバーワン!葬式に電気グ○ーヴの曲を流してほしいとか言ったそうで正直ちょっと笑いを堪えるのが大変だった!今でもたまに思い出し笑いをしてしまう!


「俺は電気機関を作ろうと思ったんだけどさ」「んっふ」「えなんでちょっと今笑ったの」「ごめん続けて


「俺は電気機関を作ろうと思ったんだけどさ、俺よく従姉妹の子とかに手回し発電機とか作ってあげてたの」

「うんうん」

「はっと気づいたんだけどあれ、豆電球とか結構既製品のものとか使ってたんだよね。そんなもんまずないじゃんって」

「いろいろ言いたいことあるけど従姉妹の子そういう地味なプレゼント喜ぶかなあ」

「で、じゃあ原料とか集めようかと思ったんだけど、鉄とか銅はよくあるけどニッケルとかそういうのになるとまずどれがそれだか見当もつかないしついても取りに行くの大変でそこで気持ちくじけて頓挫しちゃったんだよね」

「気持ち折れるの早すぎない???」

「原料取りに一緒に行ってくれたギルドの魔法使いの子が思いっきり電撃魔法使ってるの見ちゃって」「あっ」

「でそういう魔法あるってことは意外と応用とか進んでんだね。この世界。結構思いつくもの大抵あんのよ。中世、結構進んでたんだよ。あ、俺やることね―じゃんって」

「しかし一挙に現代式のものを持ち込もうとしたのがこの俺だ」

「天野!」


 彼は隠れミリオタとして隠れてない程度には知られていた天野。自宅で火薬いじりしていたら死んだというミリオタの風上にも置けない程度の安全意識しかないとはいえ軍事知識といえば知識無双の基本、中世程度で止まっている雑魚虫揃いの異世界ランド民風情が敵うはずがないだろう。


「お前さっきからちょいちょい心の中適当な文章で酷いこと考えてない?まあいいや、とにかくよく思いつく銃を布教しようにも魔法がほぼ日本人の識字率並みに定着したこの世界では所詮抜きん出ることは出来ずインパクトが薄いと感じたこの俺は、兼ねて前々から異世界に転生したら作ろうと考えていたこの機体を作ろうとしたんだ」


 そういって天野が取り出したのは極めて精巧な戦車の設計図だった。


「作れるわけないよ!!」

「デストロイドモンスターだよ」

「名前がダサいよ!!さっきの原料がどうこうの話聞いてなかったのかよ!!」

「俺のほうが先に来たんだよ!しかもこの世界どこの国も仲良くて戦争とか一切起こりそうになかったんだよね。軍事知識全く需要がなかったんだファック!」

「お前の意識がファックだよ!別に魔物くらいいるだろうから今あるものの改良とかでいいだろ!!」

「お前ミリオタとはいえたかが学生程度のこの俺が恐らく中世レベルであろう異世界のよく知らない兵器を普及しきった魔法にも勝るほど実用に耐えうるレベルで堅実に改良するような細かい過程を詰められると思ってんの?昔から作りたかった俺の考えた最強の戦車や戦闘機作りたいに決まってるだろ」

「お前もうミリオタでもなんでもねえよ!!ていうかもう残りのメンバーのネタも決定づけるようなこと言うのやめろよ!まだ前半だろ!」

「もう2000文字だぜ?普通ここまで読んだらブラバするだろ」

「どうせボクだってこんなん巡回してるときに見かけたら一行でブラバするからそういうメタいこと考えないでいいんだよ!!」


「とにもかくにも、どうも科学、工学系は実用化する際にハードルが高いということがわかりました。そこで理論面から攻めようとしたのがこの私……」


 眼鏡をくいくいさせているこいつは西村だ!数学好きで数学パズルを解くのが大好きだったが、好きな女の子に勇気を出して告白してフラれて自殺した豆腐メンタル……。


「数学ならばどこでも通用すると考えた私はフェルマーの最終定理と、そしてその証明をたっぷり暗記して解けば楽に尊敬が得られて可愛い女の子にちやほやされるだろうと考えて転生に備えてきました!」

「お前それであんなにあっさり自殺したのか……けど数学で尊敬されるっていうのはいいな、まさに純粋な知識の格差、しかもフェルマーの最終定理ってなんかいかにもなネタじゃないか」


 そういったボクは嫌な予感がよぎった「お前余白が足りなかったとか言わないよな?」


「いえいえなんとかそこはクリアしました。しかし……」

「しかし?」

「その証明が正しいかこの世界の数学者たちが調べるのに数十年、いや数百年かかるかもしれないと……それまでは私はただの人です」

「なんでそういうとこだけちょっといかにもお馬鹿な中世っぽいんだよこの世界!!そんな時間がかかるフェルマーの最終定理なんて選ぶなよ!!」

「この転生にかけて無理やり詰め込んで暗記したので何せ他の定理も忘れたものばかりで」

「転生する前よりバカになってるじゃねえか!ただの人だよ!むしろただの人以下だよ!!」

「全くこんな男を自殺させたことで鬱と拒食症を併発してリスカして死ぬなんて私の前世も損したものだわ」


 ちょっとどころではなくリアクションに困る死因を自ら明かしたのはかつてのクラスの女王杉山さん。美人でみんなから大人気でたまに振る舞ってくれる手料理に餌付けされた男たちは多数だがその本性はプライドが高くてメンがヘラりやすいと死んでから考えてみれば結構めんどくさい子だった。


「凄くあなたの考えてることを想像するだけで人生の無意味さを考えてしまいそうなのだけど?とにかく私は異世界の愚民たちの心を掌握するには食だと思ったわ。そこで、私は食べ物を発明することにした……」

「ああ、醤油」

「似たようなものがあったわ」

「……マヨネーズ」

「やっぱり似たようなものがあったわ」

「ここ本当に中世くらいなのか……?」

「でも私はそんなありきたりな食材はすでにあると転生する前から予測していたから、絶対に普通にやっていては発明されないであろう食べ物の作り方をあらかじめ覚えておいたの」

「おお!」

「こんにゃく」

「なんて??」

「こんにゃく」

「こんにゃく」

「やめて、何を突っ込みたいかはわかるから……」

「…………」

「こんにゃく芋ってこの世界のどの辺に生えているのかしら……」

「そもそもこんにゃくってそれだけ作って感動されるほど美味しいですかね……」

「私こんにゃく超好きだったのよ!もういいわよ!リスカしてやるぅうう!!」

「やめろーー!!んなでっかい剣で手首切ろうとしたら持ってる方の手が大変だわ!!」


「このように知識だけあっても手についた技術がないんじゃあ、異世界でもちやほやされるのは難しい。ところがその技術がボクにはあったのさ!」


 おお、こいつは不治の病で夭逝した美術少年の氷川!なるほど宮廷画家として生きていけばある程度の収入は見込めるし上層社会とのコネも出来る!もうチートとかそういう段階ではない慎ましさだがいいぞ!


「そう思って運良く最大の国の王様に謁見、描いてあげた絵がこちら」

「うわっ、顔がぐちゃぐちゃのお化け!!いや待て……これ教科書で見たことあるな……」

「キュビズムだよ」

「キュビズム」


 ピカソとかですよね……。


「科学知識で現代チートが成り立つなら美術史を踏まえた現代アートをそのまま持ち込んでもチートできるかなと思ったんだけど、まだ印象派すらないレベルじゃあね」

「お前はまずなぜ科学知識でチートが成り立つかという常識を考えたほうがいい」


 しかもキュビズムって確か言うほど現代でもないぞ……。


「そう考えると思って他の貴族たちはしっかり現代アート風に、はいコンセプチュアル・アート、抽象画、アクションアート」

「便器で貴族を表現するんじゃないし○だけ描いても失礼だしこれただ絵の具使った人間の魚拓だろうが!!」

「見事に不敬だと追放されたんだ」

「殺されなかっただけマシだよ!」

「変に新しいものを持ち込んでも迫害されるのは当たり前、そこで俺はしっかり時代背景を考えたものにしようとしたんだ」


 そういって憂鬱そうな仕草で現れたのは文芸部の志村、国語の成績ナンバーワン。時代の風にメランコリーを感じて睡眠薬自殺。しかし国語なんて異世界で役に立たない最たるものだと思うが……。


「俺は古今東西ありとあらゆる名作物語を暗記してこの世界にやってきた……」

「!?」

「しかも準備は入念に、神からはこの世界の文字の読み書きスキルもしっかり手に入れておいた!……これでこの世界でかつて読んだ名作文学をパクれば、大人気作家となること間違い無し!!」

「すげえええ!!文芸部として自分も物書きであるというプライド何っ一つないド最低行為だけど、これは手堅いぞ!」

「そう思って俺はまずかつての世界ではどの時代でも売れていた、世界最高のベストセラーに手を付けた!!」

「おいもうオチがわかったぞてめえ」

「バイボゥ」

「普通に聖書って言えや」

「この世界に根付いている宗教に喧嘩を売ったと目をつけられて即危険文書扱いだった」

「やっぱり!!ていうかお前も殺されてないだけマシだよ!これはフィクションですとか断り書き書いとけよ!何一文一句違わず普通にこの世界視点で異教徒文書流布してんだよ!!」

「せっかくヘブライ語やギリシャ語の写本まで読んで暗記したのになあ」

「お前はそれだけの熱意と根気があってなんで前の世界で頑張らなかったんだよ!!!明らかにどうとでも食っていけるし異世界よりも尊敬されるよ!ていうかお前ら間違った方向に対策しすぎだろ異世界転生!なんでそんなもんを常日頃想定してたんだ!」

「お前も人のこと言えないだろう……」


 丸井が大体みんなの話が終わったと見て混ざってきた。


「そういうわけでみんなそれぞれ失敗してこんな辺境まで落ちこぼれてしまったんだ」

「丸井、お前はどうなんだ?

「ふっ、俺は俺にとっての教科書をスキルで一冊だけ現実世界から持ってきたんだが……」

「おい、そのお前が持ってる本、「我が闘争」って見えるんだけど」

「この世界でも応用できるよう頑張ったんだけどなあ……」

「もう具体的な話を聞きたくないよ!後半ほとんどただの危険人物どもの集まりじゃねえか!」

「いやでも行けると思うんだよ「我が闘争に学ぶ異世界チーレムの築き方」しっかり書いたら絶対受けるんだよ」

「書いてみたい方、作者もちょっと読んでみたいので是非どうぞ!……じゃねえよ!!そういう発想でやるんなら実際に異世界転生する必要もないだろうが!」

「とにかく一人一人では力不足だと判明したので今はみんなの知恵を結集してどうにか出来ないかと考えていたところだ」

「お前らに不足していたのは力ではなくただの人間としての常識や基本的な心構えだと思う」


 しかし知識チートもハードルが高いなあ。巷にあふれる主人公たちは本当に高いハードルをクリアした選ばれし者たちだったんだな……少なくともボクにはもう現代知識でこの世界でちやほやされようという気はなくなっていた。


「しかし伊勢田でもだめとなるとなかなか今後大変だな……」

「ああ、何せ俺たちはこの世界の国家や教会から追われるお尋ね者のみだ」


 お尋ね者になるような原因を作った奴らだけ差し出したほうがいいと思う。


「そういえば伊勢田、お前は何かスキルをもらっているみたいだな。一体何をもらったんだ?」

「ああこれか?いやあツッコミ疲れて忘れてたけど確か役に立たないやつだったと思うよ……ステータスオープン!」


伊勢田哲夫

HP96

MP22

力38

守備45

すばやさ32


「ほんとコメントに困る能力してるわねー」

「だが問題はスキルだ!なになに……」



 現実世界に帰る能力(※任意の人数を連れて帰ることが可能。なお一方通行) 



「…………………」


 全員が顔を見合わせる。丸井が声をあげた。


「…………帰ろう!!俺達の世界に!!!」

「賛成!!!!」


 満場一致だった。

パロディというより「あるあるネタ集」になってしまったかもしれません。このジャンルも広大ですからね。特に知識ボロボロの分野では全く筆が乗らなかったのでいずれ勉強してセルフリメイクしたいです。

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[気になる点] 異世界から帰ったら動く死体だった件 -みんながポームセンターへ駆け込んでいきます- [一言] ジーアポット最強 ただし暑い地方の場合に限る
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