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I believe you  作者: 希流優姫
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I believe you

 夕方。駅から車校の送迎バスに乗り込む。

俺の通う自動車学校は駅からは遠く自分の足で通うにはちょっと不便な場所に建っていた。

なので車校に通う生徒は大概がこの車校から出ている送迎バスで通学している。

夕方となると地元の高校生が多く車内も結構騒がしかった。

「えっーまりちゃん佐藤教官なの?!いいなぁ~私なんて渡辺教官だよ。やる気マジ失せるって!!マジ変わって欲しいわっ!!」

後ろの席で女子高生が話しているのが聞こえて来る。

「うわぁ~渡辺教官なの?可哀そう・・・でも、あの春田って親父よりましじゃない?!私担当決まる前に二回当たってマジ最悪だったもん!!」

うんうん。あの春田教官は最悪だった。

思わず心の中で同意する。

「マジで?!私そいつ乗った事ないけど・・・まぁあんな親父よりはマシかもね・・・」

マシかもね・・・と、言いつつ彼女は大きな溜息をついていた。

確かに女子にとっては普通な人よりもイケメンな佐藤教官に教わる方がやる気も出るって感じだろうか。

そんな俺も今日は初めての佐藤教官との教習でちょっと心が浮かれていた。

俺は女子かっ・・・思わず自分で自分を突っ込んだ。



緊張してソワソワした気持ちで落ち着かなく、ちょと早いが教習車の場所へ向かった。

すると、佐藤教官は他の教官と話しながら歩いて来る。

その姿をドキドキしながら見ていると、佐藤教官は俺に気付きニッコリ笑って小走りに近づいて来てくれた。

「ちょっと早く無い?」

そう言いながら腕時計で時間を確認する。

「すみません。久しぶりで緊張しちゃって」

俺は苦笑いを浮かべ原簿を渡した。

返って来た返答は予想していた通りであれから乗っていないの?と、あきれた表情をしていた。

始業のチャイムが鳴り車に乗る。

教官のあきれ顔を思い出すと浮かれた気持ちから一揆に気分は重たい物と変わった。

ミラーの確認を終えると教官の指示通りに車を走らせる。

「ちょっとそこで止まろうか」

一周コースを周り終わろうとした時教官が口を開いた。

指示通りにスタート地点に車を止める。

「走行が少し左気味なのに気付いているかな?後対向車が来ると更に避け気味に左に寄っているよ。」

優しい口調で佐藤教官は説明してくれる。

「すみません」

「謝る必要は無いんだよ。それに気付いているかが重要だからね。」

「左に寄っている自覚はあまり無いですけど、対向車が来ると恐い気持ちはあります。」

俺が答えると教官の手が頭に伸びて来てクシャクシャと撫でられた。

思いも寄らない行動に俺は顔が熱くなる。

「良く出来ました」

教官は笑顔で褒めてくれた。

褒められるような答えは出せていないのに。

「先ずは、運転席から見て自分を道の真ん中にいる状態をキープしてみて。分かるかな?」

教官は手にしているペンを外に向けながら説明してくれる。

「運転席は右なのに、ですか?」

俺は疑問を口にする。

「そうだね!まぁ試しに走ってみてよ!」

教官はそう言い車を出すよう指示する。

俺は意識しながら運転してみる。

真ん中、真ん中。

暫くコースを走っていると

「凄く良くなったよ!それから対向車は中央線はみ出さない限りぶつからないから大丈夫だよ。」

対向車が来ると又避けようとしてしまったみたいだ。

「俺運転に向いて無いんですかね?自慢じゃないですけど運動神経もあまり良い方では無くて...」

笑いながら言ったものの、本気で自信が無くなっていた。

圭太の話しでは車校なんて楽勝だって言っていたのに。

「全然大丈夫だよ。はじめのアドバイスから凄く良くなったのは事実だし。もう少し肩の力抜いて!」

教官の言葉に安堵する。

「でも残念だけど続きは今度かな。まだ一緒に居たかったけどね。予約明日空いてたら又いれて。あっ、今週一杯は厳しいかなぁ〜?来週になると卒業する予定の担当が何人かいるから枠に余裕出ると思うけど。」

原簿に判子を押しながら戻るように指示をだした。

車を止めるとほぼ同時に終了のチャイムが鳴る。

「ありがとうございました。」

俺は挨拶をして車から降りようとすると手首を掴まれもう一度腰を降ろす形となった。

突然の事でびっくりし、佐藤教官の顔をマジマジと見つめる。

「そんなに見つめられると流石に照れるな。」

教官が優しく笑う。

俺は動揺して視線が泳ぐと同時に顔から火が噴き出しそうなぐらいに熱くなるのを感じた。

「あ...いや......」

動揺を隠せない俺の事を楽しそうに眺めている教官。

「幸司って可愛いな〜。次も一緒に頑張ろうね!」

頭をポンポンされる。

それよりも名前で呼ばれた事に更にびっくりし何も言えなかった。

教官が車から降りる姿に俺も慌てて車から降りる。

「もう少し話したかったけど次の準備あるからね〜

マジ残念だけど」

佐藤教官は苦笑いを浮かべて、じゃあと、小走りに事務所に戻って行った。

取り残された俺は教習終了後に起きた、ほんの数分の出来事が頭の中でグルグル回っていた。

教官がもう一度車に戻した事に名前で呼ばれた事...教官にすればいつもの行動かもしれない。

俺の考え過ぎだよな......

まだ呆然とする頭であれこれ考えるが当然答えなど見つける事は出来なかった。




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