表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は戦うダンジョンマスター  作者: もちもち物質
幸福の庭と静かなる塔
93/135

93話

 最初に、いくつか道具の準備をした。


 まずは火炎瓶。

 火を点けて投げる奴じゃなくて、化学反応で着弾と同時に発火するタイプの奴。

 これをブラッドバットに持たせて、セイクリアナ上空へ飛ばす。

 そして、『幸福の庭』がある方とは反対側から火を点けていく予定。

 炎の魔法のスキルオーブが尽きてきたので、これで代用することにした。

 一応、炎の魔法を使えるゴーレムも小型化(デジカメぐらいのサイズに)してブラッドバットに持たせる予定だけれど、手数が欲しいから火炎瓶は大事。

 火炎瓶と一緒にゴーレムも動員すれば、まあ、そこそこの成果を上げられると思う。

 それに加えてロイトさん達の働きがあれば、『セイクリアナの国の精霊を殺す』事はもうちょっと簡単になると思う。

 期待。


 次に、ロイトさん達の働きを助けるための道具を作る。

 具体的には、ペガサス。

 ロイトさん達には『羽が生えた馬』と言ってあるから、それに近しい物を作らねば。


 ちなみに、『ペガサス』はダンジョン内で作れる。

 しかし、コストが割と高い。1体50万ポイント分の魂が必要なので、あんまり作りたくない。

 ということで、できるだけケチりつつそれっぽいものを作ろうと思う。





 まず、ダンジョン内で作れるモンスターの中から、馬っぽいモンスターを探した。

 もしかしたら、ペガサスっぽいモンスターが居るかもしれない。

『ナイトメア』という炎のたてがみの馬型モンスター。

『ケルピー』という魚の尻尾を持つ水でできた馬型モンスター。

『シーホース』という、やっぱり魚の尻尾を持つ馬っぽい水属性モンスター。タツノオトシゴじゃない。

『ユニコーン』は角が生えた馬。

『スレイプニル』という8本脚の馬型モンスター。

 ……ナイトメアは乗ったら焦げる。

 ケルピーは乗った人間を水の中に引きずり込んで殺すモンスターだから駄目。

 シーホースは尻尾というか、もう下半身が魚だから却下。

 ユニコーンはどうやら男性は乗せてくれない模様。

 スレイプニルは……コストが凄く高かった。1体100万魂。すごい。

 ということで、却下。




 ということで、馬型モンスターを流用するのは駄目そうなので『元グランデム城』へ移動。

 城の中から、羽毛布団や羽毛枕を回収。

 それらを持ったら、『王の迷宮』へ。

 ガーゴイルメーカーに羽毛布団と羽毛枕をつっこんで、ふかふかふわふわ、鳥の羽のような翼を持つガーゴイルを量産。

 続いて、キメラドラゴンメーカーを起動。

 そこに、グランデムやテオスアーレから拾ってきた馬と、作ったばかりの羽ガーゴイルをつっこむ。

 そうすることで、ペガサスっぽい馬っぽいドラゴンが……。

 ……できなかった。

 材料が足りないらしい。


 仕方ないから、馬をもう3頭、ガーゴイルをもう4匹入れた。

 すると……。

 二足歩行の、馬の皮膚と筋肉と骨でできた、所々に羽毛が混じっている、ドラゴン、ができた。

 ……私が作りたかったのはこれじゃない。


 仕方がないから、もう『キメラ』としてペガサスっぽい生き物を作ることにした。

『キメラドラゴン』だから駄目なのであって、最初から『キメラ』なら多分大丈夫だ。

 さっきの羽毛と馬と合わせて『キメラ』にする。

 すると、羽毛が全身に生えてふかふかになった馬が完成した。

 ……私が作りたかったのはこれじゃない。


 多分、翼じゃなくて羽毛だったのが駄目だったんだと思う。

 仕方がないから、キメラドラゴンのドラゴン翼(原材料は馬の皮や骨)を馬に合成して、ドラゴン翼の馬キメラを作った。

 今度は上手くいったのでよかった。

 ……ペガサス、という雰囲気じゃないけれど、まあ、これはこれでかっこいい、よね。




 キメラドラゴンを作る時に少しミスリルや金、魔石なんかを混ぜると、いいかんじのドラゴン翼ができた。

 それを合成してできた馬キメラは、中々見栄えがして格好いい。

 これを10頭ほど量産。(あまった素材は全部キメラドラゴンにした。リサイクルできてとてもリーズナブル)

 続いて、『幸福の庭』の一画、農業用の塔の1つに地下室を作る。

 地下室の環境を整えたら、そこにドラゴン翼の馬キメラ10頭を収納。

 ロイトさん達には、ここに『羽のある馬と空飛ぶ馬車があるから使え』と言ってある。多分、使ってくれるだろう。

 それからついでに、『風石(大)』とそのエネルギーとなる魔石を複数個仕込んだ馬車を作成。

 これで『空飛ぶ馬車』のできあがり。




 そうして一通り準備を終えて、後はひたすら待つ。

 ……すると、1日半後、セイクリアナに戻ってきたらしいロイトさん達が『幸福の庭』へとやってきた。

「ここ、か?」

「罠の可能性もある。慎重に行け」

『幸福の庭』の正面入り口からではなく、ダンジョンエリアの端っこから侵入し、農業用の塔の1つへと辿り着くと、塔の内部へ入って、『隠されていた』地下室を見つけた。

 そして、魔法を使ったりなんだりしながら慎重に中へ入り……。

「うわ……すげえ」

「あらぁ、中々カワイイじゃない?」

 そこで、ドラゴン翼の馬キメラとご対面。

 馬キメラ達には、『これから来る人間に懐いて、思いっきり働いてきなさい』とよくよく言ってあったので、馬キメラ達はそれぞれ、ロイトさん達に興味を示して寄っていく。

「……なあ、サイラン。この生き物自体が罠、って可能性は……」

「乗ったら振り落とされる可能性もある。空を飛んでいる時にやられたら一巻の終わりだが……ロイト。お前なら、いきなり落とされても大丈夫だろう?」

「ああ、平気だ。それに、アークダルが助けてくれれば、尚更だな!」

 ……まあ、この人達、落馬ぐらいで死にそうにないよね。

 私ですら、空を飛ぶ真似事程度はできるのだから。


「なら、とりあえず馬を連れ出してから考えないか?罠にしろそうでないにしろ、長居はしない方がいい」

「そーね。『メイズ』に見つかったら厄介なんでしょ?なら急ぎましょ」

 そうして、彼らはとりあえず、『後で考える』事にして、馬キメラ達をダンジョン外へと連れ出していった。

 流石、騎士なだけあって馬の扱いには手慣れている。

 ロイトさん達はかなりスムーズに馬泥棒をやってのけた。




 それからロイトさん達がどうしたのかは、分からない。

 ダンジョン外でのことは推測するしかない。

 ……けれど、とりあえず言えることがあるとすれば、その日の内にセイクリアナ上空を飛ぶ馬を見ることができた、ということだろうか。




 セイクリアナの都の人達の避難が始まった。

 ロイトさん達が『本物の』セイクリアナ国王にちゃんと手紙を渡してくれたのかは分からないけれど、とりあえず、国民の富裕層から順に、『空飛ぶ馬車』で避難を始めた。




 なので私は、『静かなる塔』から放火ブラッドバット部隊を派遣。

『静かなる塔』近くの町『アセンス』に、火を放つ。

 ……『静かなる塔』の最上階からアセンスの様子を見ていたら、中々に良い炎上っぷりだった。

 登る煙は、セイクリアナの都からでも見えるだろう。

 ついでに、『静かなる塔』からゴーレム部隊を派遣して、アセンスを破壊するよう指示を出した。(持ち帰れる人間は持ち帰ってきてね、ということで)


 こうなってしまえば、こちらのものだ。

 ロイトさん達は、煙が見えていて、実際、ゴーレム達に襲撃されているアセンスを『避難先』に選ぶことはしないはずだ。

 そしてアセンス以外で、となると、セイクリアナの都から一番近い町は……『空を飛べるなら』、テオスアーレのエピテミア、という事になる。




 セイクリアナで一番人が多い場所になるためには、『幸福の庭』内の人を増やす手段と、『幸福の庭』外の人を減らす手段がある。

 セイクリアナの人を避難させて減らして国外へ誘導してしまえば、『国を滅ぼす』のは簡単になる。

 あとは国王の確保をしておけば万全、だろうか。


 ……ロイトさんへの予告通り、『メディカ』はきっちり明日の昼頃まで『魔術をもたせて』くれる。

 そして、明日の夕方には『メイズ』が『幸福の庭』を乗っ取ってセイクリアナを滅ぼし始めるのだ。

 だからロイトさん達は、セイクリアナの人達を避難させる。

 セイクリアナの人達がエピテミアへ避難すれば、テオスアーレ復興の助力になるかもしれないし、一石二鳥。

 セイクリアナの人達が避難して減ってきたら、『幸福の庭』の反対側から火を放ち、ゴーレムを動かし、人を『幸福の庭』の近くへ誘導する。

 ……そして、一気に人を殺していくのだ。


 だから念のため、その時の為に国王の確保だけはしておきたかった。

 ……影武者シカーダさんの言っていたことが本当ならいいけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ