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私は戦うダンジョンマスター  作者: もちもち物質
魔銀の道とグランデム城
69/135

69話

 丁度いいお小遣い製造機ができてほくほくしつつ、私は『魔銀の道』の玉座の間まわりの防衛をもうちょっと強化したり、元・グランデム城の入り口付近をもうちょっと強化したりして、侵入者に備えることにした。

 万一、新しく『金鉱ダンジョン』に成った人がとても積極的で、私を狙って来ないとも限らない。

 その時のための備えは一応、しっかりしておく事にした。

 何と言っても、これから私はセイクリアナ……今まで行ったことのない、ほぼ情報を持っていない場所へ行くのだ。

 ずっとここに張っている訳にはいかないのだし、できる準備はしておくに限る。


 準備が終わったら『王の迷宮』へ鏡で移動して、そこで一泊することにした。

 早めに起きて、早朝にセイクリアナへ出発だ。




 翌朝、テオスアーレの城の馬小屋に居た名馬(勿論全部、『王の迷宮』内に作った草地の部屋へ誘導済み。)に乗って、セイクリアナの方へ向かって出発した。

 とりあえず目指す場所は、旧マリスフォールの遺跡かな。

 場所は大体レイル君から聞いておいた。迷う事は無いだろう。




 道中でお弁当を食べたりしつつ、お昼と夕方の間あたりに、それらしき場所に到着した。

「遺跡っぽい」

 遺跡っぽい。

 元は純白であっただろう石材は、苔むし、所々崩れ、そして古くなった血の染みらしきものまで点在する始末。

 この辺りも当時は戦場だったのかな。

 そして多分、手入れする人も精霊の加護とやらも無くなって、この有様なんだろう。

 ……しかし、建物の中に入ってみると、外観からはちょっと想像がつかないくらい綺麗なままだった。

 内装は、外観とは真逆に真っ黒。

 そして窓もない。真っ暗だ。

 ムツキ君が《ファイアフライ》で浮かべてくれた小さな火の玉の明かりがちらちら揺れては、艶のある黒い石材を照らす。

 火の明かりに照らされる悪魔像(みたいな奴)とかがなんとなく生々しいというか、不気味というか。

 ただ、モンスターの気配も、トラップの気配も、そして勿論、人の気配も無い。部屋は古びて埃を被ってはいても、荒れてもおらず、綺麗なまま。

 ……ひたすら静かなだけ。なんでだろう。モンスターもトラップも無いなら、盗掘目当ての人が入ってもいいだろうし、そうでないならもっと部屋が荒れていてもいいようなものだけれど。


 進んで間もなく、理由が分かった。

「行き止まり、かあ」

 大きな部屋には、悪魔像と柱が数本、そして祭壇とこれまた悪魔像、というシンプルな物しか存在していなかった。

 成程、これなら荒らす理由も無いか。

 持ち去れる物は無いし、泊まったりするには悪魔像が嫌だろうしなあ。うん。

 ……けれど、この遺跡がこれで終わりだとは思えない。

 私はこの奥に何かがある事を知っている。

 レイル君から聞いた以上……ダンジョンとは何か、という謎を、少々つついてみないことには満足できない。




 色々調べ回った結果、やはり祭壇はフェイクだった。

 正解は、柱と同じくそこらへんに並んでいる悪魔像の内の1つ。

 真っ暗だと分かりにくいけれど、《ラスターステップ》を大きく出して一気に部屋の中を明るくしたら分かった。

 他の悪魔像は、それぞれ目をかっぴらいているのだけれど、その悪魔像だけは目を瞑っていた。

 お目こぼししてくれる、って事かな、と思って色々弄ってみたら、目を瞑った悪魔像が台座ごとずれて、その下に下り階段が現れた。

 やったね。




 階段の下は、もっと静かだった。

 やっぱり、盗掘の跡は無いし、人やモンスターの気配もないし、トラップも無かった。

 黒い石の廊下をひたすら進んでいくと、その両側が壁画になっていることが分かった。

 ……ただ、今一つ絵心が無い人が描いたみたいな、そういう絵だったので……解説が欲しい。

 壁画は多分、『邪神』なるものについて描かれたものなんだと思う。

 でかくて強くておどろおどろしい、みたいなものが、多分人を殺したりなんか戦ったりしてる絵が続いている。この『でかくて強くておどろおどろしい』奴が、邪神、なんじゃないかな。


 壁画は意味が分からないのでなんとなく眺める程度にして奥へ進む。

 ……そこに、多分、私が望んでいたものがあった。

 金の文字が並ぶ、漆黒の石板。

 目の細かい黒い石を彫って、そこに金を流し込んでから磨き上げたらしい石板は、それ自体が1つの芸術品のように見える。

 美しい金の文字を目で追っていけば、自然とその内容は頭に入ってくる。

 そういえば私、この世界に来てから文字とか言葉で困ったこと無いな。なんだろう。ダンジョンが邪神の最期の抵抗なのだというのなら、その邪神パワーとかで読んだり書いたり話したりできてるんだろうか。まあなんでもいいか。

 ……読み進めれば、石板の中身はすぐに分かった。

 それは、邪神の所業を称える文字列だった。




 テオスアーレのお城の図書室で、精霊について調べる時、少し、神についても読んだ。

 ありきたりな話かな。よくある一神教みたいなものだから。

 ただ、この世界の宗教観は、『神』と『精霊』がある事で少しだけ複雑になってるかもしれない。


 この世界の感覚だと、神>精霊>人間、みたいなかんじなんだと思う。

 そして、人間は神を信仰しながら精霊を信仰している。

 どちらかといえば、より直接的に自分達を統治したり保護したりしている精霊達をより身近に信仰している。

 精霊も人間も、神を信仰している。ただし、人間にとっての神様は、中間管理職を挟んだ社長みたいなものだから、ちょっと遠い。

 人間に直接何かをするのは精霊、世界を創ったのは神、みたいな感覚なのかな。

 ……いわば、この世界の宗教は、多神教と一神教が同時に存在しているようなものなのだ。

 神は、一神教で言うところの神。そして、精霊は多神教で言うところの神、みたいなかんじだろうか。

 それとも、神も精霊の1つで、精霊の中でリーダーをやってる、みたいな感覚なのかな。どうにも、この辺りの感覚が私には分からない。

 ……まあ、よく分からないながらも、分かる事はある。

『邪神』とは、『神』の対極にある存在だ、ということくらいは、まあ。


 そして、この石板には邪神についての文が書いてある。

 曰く、本来ならこの世界を作り給うたのは邪神様であらせられる、とか。

 美しき混沌の世界は神によって神の思うがままの世界に作りかえられてしまった、とか。

 それに歯向かった邪神様は、神と神の尖兵に敗れた、とか。

 ……そして邪神様は深い眠りにつき、復活の時を待つと共に、自分の力の欠片を地上に残し給うた、とか。




 石板には、明確な『ダンジョン』についての記述が無かった。

 しかし、さっきの意味の分からない壁画と見比べれば、なんとなく『それっぽい』ように思えてくる。


 壁画の中で、邪神(仮)は、なんか光ってるでかい物……多分、神と、戦っている。

 神の近くに居る小さい光ってるのは、多分、石板に書いてあった『神の尖兵』なんだろう。

 そして、壁画の終わりに近づくと、邪神(仮)は、地の底で眠りにつく。

 ……そして一方地上には、塔や洞窟があり、そこからモンスターっぽいのが溢れたり、塔や洞窟の中に入った人が死んだりしている。

 これが、ダンジョン、なんだろうか。

 ……壁画の最後、地上は暗く染まり、塔や洞窟ではそれぞれ1人、人が居て、モンスターと共に喜んでいる(っぽい)ように描かれている。

 そしてその壁画の空を埋め尽くすのは、邪神。

 これは、邪神が復活する、みたいな、事なのかな。




 ……その後も遺跡の中を探したのだけれど、それ以上の情報は得られなかった。

 ただ……私は1つ、思った事がある。


『王の迷宮』のB13Fに、邪神像を5つ設置した。

 それぞれ、いわゆる『邪神像』……ハンバーガーチェーンの幸せセットについてきたという忍者像を中心に、メイガス四姉妹を象った像を設置したのだけれど……。

 ……あれ、実際の邪神さんに見られたら、なんか、こう、怒られる気がする。

 でも私の居た世界では、あれが『邪神像』だったんだから仕方ないよね。仕方ない。うん。仕方なかった。

 もう設置してしまった邪神像については考えないものとしよう。物理の問題における空気抵抗とか摩擦係数とかと同じように考えないものとしよう。




 ……まあ、『邪神像』は置いておくとしても、邪神云々についてだって、どうせこれもまた伝説の1つでしかない。

 宗教を信じる気にはならないし、例え、『ダンジョン』が邪神の作ったものだったとしても、私にはそうそう関係するまい。

 ……つまり、これからも、私がすることは変わらない、という事だ。

 けれど、今回はこの遺跡に来られて良かったと思おう。

 知らないのと、知っているけれど気にしないのとでは大きな違いがあるのだろうから。




 ということで、また元来た道を戻って、ちゃんと悪魔像を元に戻して、私はマリスフォールの遺跡を後にすることにしたのだった。

 ……そしてそのまま、セイクリアナへと向かう。

 まずは視察。

 それから、良さそうな場所があれば拠点も兼ねて1つダンジョンを作ってしまってもいいし、もし既存のダンジョンがあるなら、そこを貰ってもいい。

 やることは山ほどある。頑張っていこう。

 邪神なんて関係なく、ただ、私自身の目的のために。


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[一言] 幸せセットと来たからにはランランでルーなアレを据えるのかと思ったら違った
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