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私は戦うダンジョンマスター  作者: もちもち物質
魔銀の道とグランデム城
66/135

66話

 金ぴかゴーレム達は、とりあえず一回解体した。

 何やら、不思議な魔法陣みたいな模様が刻んであって、これが強度の秘密になっていそうだったから……そういうのを潰さないように、慎重に、慎重に……鉄球ゴロゴロで大体全体的に潰してから、潰れずに残っていた魔法陣を回収した。

 うん、大分慎重じゃない回収方法になってしまったけれどしょうがない。

 気絶した主を回収して帰ろうとするのが悪いのよ。




 一通り金ぴかゴーレム達を潰して回収したら、一気に金が潤った。

 全部金だもん。すごいよこれ。すごいよ。

 日本円でいくらぐらいかなあ、なんて考えながら、続いて、金ぴかゴーレム鎧の『中の人』を取り出す作業に取り掛かる。

 この人の鎧をはぎ取って、中身だけにしてから中身も厳重に拘束して、抵抗できないようにしてからお話を聞かせてもらいたいから。

 ……と思ったのだけれど、金ぴか鎧に手を掛けようとしたら、鎧の腕が、一閃。

「っと」

 咄嗟に避けたけれど、その隙に金ぴか鎧の人が出口に向かって走り出す。

 ……いや、違うか。

「ガイ君、鎧対決、する?」

『中の人』が気絶したまま、中身である主を守るべく逃げ出す鎧を見て、そうガイ君に問えば、私の手が鎧の手甲に引っ張られて、きゅ、と握られる。

「分解した方が良い?」

 今度は手が開かれた。

「オーケー。分かった。好きにしていいよ」

 なので許可を出すと……また一度、きゅ、と手が握られ、そして。

 瞬間、加速。


「う、わ」

 散々強くなったガイ君の、本気を見た。

 今まで私の意識の外でさりげなくサポートしてくれたり、私が動きたいときにその動きのサポートをしてくれたりしていたけれど、ガイ君が私(中身)をそんなに気にしないで、完全にガイ君自身のやりかたで動いたらこうなるのか。すごいなあ。

 私のレベルの上がり具合とガイ君のレベルの上がり具合には大きな差がある。

 ガイ君はとっくに私なんか追い越して(最初からガイ君の方が強かった気もするけれど)、ガイ君はここまで強くなっていた。


 逃げ出した金ぴか鎧はほんの一呼吸ほどの間に手が触れる距離にまで近づき、そして、次の瞬間、ホークが鞘から引き抜かれた。

 金ぴか鎧の持つ金ぴか剣と、ガイ君が振るホークがぶつかり合う。

 ……金なのに丈夫なんだなあ。

 私が妙な感心をしている間も、ガイ君は動く。

 ガイ君に引っ張られて私の腕が巧妙な動き方をすると、ホークが金の剣の上を滑っていった。

 そして、金の剣が動いて私やガイ君を斬るより先に、金ぴか鎧が中身の腕ごと切断されていたのだった。

 おおー。


 そうして、剣を腕ごと落として武器を失い、主の体の一部も失ってしまった金ぴか鎧は、一瞬戸惑い……そして、その隙をガイ君に突かれ、鎧の継ぎ目に剣を入れられたかと思うと……動きを停止した。

 つまりこれ、『中身を殺されたくなかったら大人しくしなさい』っていうこと、なのかな。

 ……ガイ君の中身状態だから拍手できないけれど、心の中では盛大に拍手しておいた。




 ガイ君がすごい事を改めて確認した後、ホークにはそのまま『チェックメイト』を続けておいてもらって、私とガイ君(別の鎧と合成して、私から離した)とボレアスとで、金ぴか鎧の解体に移った。

 これに関しては、本来あまり器用でないはずのガイ君が大活躍した。

 やっぱり鎧だから鎧の事がよく分かるらしい。的確に金ぴか鎧を解体していってくれた。


 そうして、とりあえず『魔銀の道』には、金ぴかゴーレムの残骸と、分解されて動けなくなってる金ぴか鎧と、気絶したままの金ぴか鎧の中の人ができたのだった。




 ……中の人は、私と同い年かもうちょっと上、くらいの男の子だった。

 金ぴか鎧に相応しく、目にも眩い金髪である。地毛かなあ。引っ張ってもずれたりしないから地毛っぽいなあ。

「ん……」

 金髪を引っ張ったりしていたらうめき声をあげたので、慌てて拘束していく。

 布でぐりぐり縛って、縛って、縛って、縛って、巻いた。

 それこそ、ミノムシ状態になるまで巻いた。


 ミノムシ金髪君とお話しするために、新しく小部屋を作った。

 新しく作った部屋は、ガラスにごく薄いミスリル箔を貼り付けたもので四方を囲んだものだ。つまり、マジックミラー。

 壁の一部には穴が開いていて、そこはとても目の細かいミスリルの金網が張ってある。ここから声のやり取りができる。

 最後に、マジックミラーの部屋の中にしっかり照明を点けて、部屋制作完了。

 そこにミノムシ金髪君をつっこんだら、ミスリルゴーレム数体も一緒に詰めておく。

 彼らは回復薬を持っている。金髪君が万一自殺しようとしたら止めるのだ。

 ……さて。

「リリー、やっちゃいなさい」

 早速、金髪君とお話すべく、《スプラッシュ》を弱く撃って、金髪君に起きてもらう事にした。




「ぷわっ!」

 顔面に水ぶっかけられたら、寝てても起きる。

 金髪君も例外ではなく、しっかり起きてくれたからこれでお話ができる。

「……ここは……!?」

 目が覚めたら全面鏡張りの部屋の中でミノムシにされて敵であるミスリルゴーレム達に囲まれている訳だから、金髪君は生きた心地しなかったと思う。

「あ、いわゆる『魔銀の道』の一室です」

 このまま放っておいても可哀相なので、網から声を掛けた。

「っ!貴様、俺をどうする気だ!」

 声を掛けたら、噛みつかんばかりに吠えられてしまった。こわい。

「そっちの返答によってはちゃんとお家に帰してあげるよ」

 宥めるつもりでそう言ってみたけれど、金髪君は私の方(金髪君からすれば、とりあえず声がする網の方を見ているだけなのだけれど)を睨みながら、「すぐに放せ」だの「殺してやる」だの言うばかり。

 ……仕方ないから、ミスリルゴーレムの内の1体に、刃物を出してもらった。

 ミスリルゴーレムの腕に十特ナイフよろしく仕込んである奴。

 お菓子の袋を開ける時と、こういうミノムシ状態の人に突きつけて脅すときに便利。

「返答によっては、って、言ったでしょ」

 ミスリルの刃物の煌めきは、金髪君の気力を削いでくれたらしい。

 とりあえず、金髪君は恨めし気ながらも大人しくなった。よし。


「じゃあ、いくつか質問するから、正直に答えてね」

 金髪君からの返事は無いけれど、構わず続ける。

「お名前は?」

「……レイル・ユレーン」

 案外すぐに返事が返ってきた。偽名かもしれないけれどまあいいや。

「レイル君ね。分かった。じゃあ、レイル君はどうしてここに来たの?わざわざゴーレム連れて」

「このダンジョンを攻略しに来た」

 そりゃそうでしょう。

「ダンジョンがダンジョンを攻略しに来たの?」

 試しにそう聞いてみると、レイル君は明らかに反応した。

「分かるよ。レイル君が金鉱ダンジョンの人だって事ぐらいは」

 更に鎌をかけるつもりでそう続ければ、レイル君はため息を吐いた。

「……なら目的も分かってるんだろう」

「うーん、イマイチ」

 ほら、もしかしたらレイル君は私と仲良くしに来たのかもしれないじゃない。

「このダンジョンを殺すつもりだったんだよ!」

 ……あっさり希望が打ち砕かれた。

 まあいいや。気を取り直していこう。

「それは、目障りだから?収入を減じることになるから?」

 続けて聞いてみたら、今度はそっぽを向いたまま答えてくれない。

 仕方ないからミスリルゴーレムに刃物を出してもらったところ、「ああそうだよ!」と返事が返ってきた。

「……じゃあ、そもそも、なんで最初からこのダンジョンがレイル君の敵だと思ったの?別に、君をいじめるつもりは無くて、むしろ、君が助けを求めてきたならば必要以上に助力するようなダンジョンだったかもしれないでしょう」

「そんなつもり毛頭ないくせによく言うよな」

 もしもの話につもりも毛頭もあってたまりますか。

「じゃあ、レイル君はこちらのダンジョンに協力する意思は無い、ととっていい?」

 仕方ないから刃物をまた取り出してもらって、大人しくしてもらった。

 うーん、前途多難。




「君、ダンジョン歴はどのぐらい?」

「は?」

「ダンジョンに成ってどのぐらい?」

 話が今一つ進まないので、仕方ない。雑談から本題に入っていこう。

 できればさっさと必要事項だけ聞き出したかったのだけれど仕方ない。

「……もう2年経ったな」

 雑談の雰囲気だからか、それともさっきの刃物が効いたのか、レイル君は幾分素直に答えてくれるようになった。

「2年前から金鉱ダンジョンに居るの?」

「そうだ」

 成程。じゃあ、レイル君は2年前からダンジョン・・・・・。

「先輩だった」

「は?」

「このダンジョンよりダンジョン歴長いなって」

 なんだか意外だな。2年もダンジョンやってて、こんなに戦うのが下手とは。

 ……普通のダンジョンは自分で戦ったりしないのか。

 という事は、戦わなくてもいい位の初期資金があった、っていうことなのかな。

「じゃあ、2年前に今のダンジョンを……あ」

 いや、レイル君が『ダンジョンを乗っ取った』と決めつけるのは早い。

 何の情報がどのぐらい価値を持つのか分からない今、うかつにこちらの情報を出さない方が良い。

「今の、金鉱のダンジョンを、作ったの?」

 という事で、こういう聞き方になったのだけれど。

「いや、2年前に『金鉱』になる前の形だったダンジョンを攻略して、それから……俺が、ダンジョンに成ったんだよ」

「その時にはまた別のダンジョンが居た、っていうこと?」

「そうだよ。なんか悪いか」

「じゃあ、レイル君は他にダンジョンを持っている?」

「は?他にダンジョン?」

 他のダンジョンは無い、のかな。多分。様子を見る限りは。

「じゃあ、レイル君は2年前、今の金鉱ダンジョンを攻略して、中に居たダンジョンを殺した。それからレイル君は主を失った金鉱ダンジョンに納まって、金鉱ダンジョンとして活動中。……これで大丈夫?」

「大体問題ない」

 ふむ。


 レイル君が嘘をついていないとも限らないけれど……それに、まだ全然、他のダンジョンを知らないし、結局は仮定なのだけれど。

 でも、レイル君も、『王の迷宮』さんも、元々あったダンジョンに入って、そのダンジョンに成っている。

 ……ということは、だ。

 誰かがダンジョンを初めに作っていなくちゃいけない訳だけれど……。

 誰が、最初にダンジョンを作ったんだろうね。


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