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私は戦うダンジョンマスター  作者: もちもち物質
魔銀の道とグランデム城
64/135

64話

 私と装備モンスター達より一足早くダンジョンへ凱旋していく毒スライム達をのんびり追いかける。

 わっしょいわっしょい、とパレードかお神輿よろしく運ばれていくのは、すっかり動かなくなって最早死を待つのみとなった兵士やグランデム国王である。

 気絶しているのか、仮死状態みたいになっているのか、単に弱り切ってもう動くこともできないのか。もしかしたら死んでるかも。

「できるだけ急いで。生きてるうちにダンジョンに運びたいから」

 毒スライム達に声を掛けると、彼らは自分達の速度では無理がある、と判断したのか、兵士や国王をガーゴイル達にパスして運んでもらう事にしたらしい。

 中には一緒にくっついて運んでもらって楽をしている毒スライムも居た。中々やりよる。




 さて、私もガーゴイルに運んでもらって毒液の池の上を飛んで部屋ダンジョンに戻ったら、とりあえず最初に、『水石(特大)』と『毒石(特大)』とスライムメーカーを止める。

 そして、ダンジョン内の毒液をきれいさっぱり還元してしまったら、ここでやっと兵士達の出番だ。

 1人1人にちゃんととどめを刺していく。そうするまでもなく死んでる人も居たけれど、まあ、そういう時にも念を入れて刺していく。

 ……そして、彼らをきっちり殺した途端、ダンジョン内の砂時計型オブジェが凄い速度で稼働し始めた。

 内部に溜まっていく薄青の、気体とも液体ともつかない不思議なもの。

 魂。

 見るだけで分かる。つまりこれは、精霊が死んだ、国が死んだ、ということなんだろう。

 ……もしかしたら、国の精霊が死ぬ条件って、単純に人が減る、というだけじゃなくて……王が死ぬ、ということも条件に含まれるんだろうか。

 それとも、王を殺したことで死んだ人カウントが、国が死ぬレベルに達した、という事だろうか。

 まあ、今はどっちでもいいか。




 ということで、今回のリザルト……といきたいのだけれど、その前にやらなきゃいけないことがある。

 そう。このダンジョンの改築だ。


 今、この城は誰のものでもない。

 所有者であった王が死に、所有者であった精霊が死んだ。

 よって、この土地は誰のものでもないから、ダンジョンを広げることができる。

 とりあえず、城全体をダンジョンにできそうだったので、さっくりとダンジョンの面積を限界一杯に広げる。

 階層もお城全体まで一気に増やす。

 ……ついでに、城下町も少しだけ範囲に入れられた。やったね。

 侵入者が居るとダンジョンの中身を変えられないけれど、ダンジョンの面積を広げるだけなら人が居ても大丈夫らしい。

 まあ、ダンジョンにとっては自分の領域が広がるけれど、他の人にとっては何ら変わりが無いようなものだし、そんなものか。


 ということで、部屋ダンジョンダンジョンへと進化を遂げた。

 こうなって最初にやることは、勿論、リザルト……では無く、ダンジョン内に居る『侵入者』の排除である。




 ダンジョンは私の一部であり、私はダンジョンの一部である。

 つまり、このダンジョンは私の一部であるから、侵入者の場所も様子も全て分かる。

 とりあえず、元気が無さそうな人から順番に殺していこうかな。


 元気がありそうな人の所には毒スライム達を派遣しつつ、私は元気が無さそうな人達の魂を回収していく作業に入る。

 医務室にこんにちは、そして魂回収。

 厨房にこんにちは、そして魂回収。

 訓練所にこんにちは、毒スライムと戯れていた兵士達の魂も回収。

 そして城下に下りていったら、人をできるだけダンジョンエリア内に追い込んでから魂回収。

 私も装備モンスター達も、すっかり強くなった。

 弱った民間人の魂を回収していくことくらい、もうすっかり簡単になった。

 自分の成長が嬉しい。




 そうして、太陽が傾く頃。

 一通り、ダンジョン内の清掃を行った結果、グランデムの都からすっかり人が居なくなった。

 殺せなかった人達は全員逃げたらしい。賢明だね。残念だけど。

 ……さて。

 ということで、やっと、待ちに待ったリザルトだ。




 今回のリザルト。

 手に入った魂、50,922,056ポイント分也。

 やっぱり精霊って、すごい。


 アイテムはまあ、お察しの通り。

 ……城にあったもの、全部。

 全部。

 つまり、薬以外のほぼ全ての生活用品に加えて、宝物庫の中身も、武器庫の中身も、全部手に入った。

 だって城が丸ごとダンジョンになったのだから。

 ……後で整理しないと、訳が分からない事になりそう。

 必要に応じて、『王の迷宮』の保管庫に物を移したり、こっちに物を持ってきたりした方が良いかもしれない。

 ちなみに、今回の鎧コレクションの中にガイ君のお気に召す鎧は無かった模様。

 とても煌びやかな鎧があったのだけれど……最近のガイ君は、デザインよりも性能で鎧を選びたがっているような気がする。

 逆に、宝物庫にリリーを連れていったら、とても喜んでいた。光り物いっぱいあるもんね。

 ……それから珍しく、ボレアスが喜んだ。

 何やら、とても手触りが良く、かつとても丈夫なマントが宝物庫にあったのだ。

 裾の方に綺麗な模様が刺繍してあって、そこがお気に召した様子。

 ということで、今までボロいマントで頑張らせていたし、折角なのでそちらのマントに合成し直した。

 ボレアスはやや興奮気味にぱたぱたしている。うん、気に入ったならよかった。




 手に入ったスキルは、今回はちょっぴりいいかんじ。

 まず、《虎視眈々》なるスキル。

 一定距離内なら、対象の監視ができるもの。

 ……つまり、ダンジョン外でもある程度の距離まで、かつ、対象を絞れば、その人が何をどうしているかを把握できる、という優れもの。

 《ラスターケージ》と合わせて、本当にインスタントダンジョンが作れる。便利。

 ……ちなみに、このスキル、予想外だったのだけれど、シーニュさん他1名から計2つ貰えた。

 なんだろう。シーニュさん、誰かを監視してたのかな。

 ……もしかして、私だったのかな。うん。


 それから、《百戦錬磨》。

 これは国王陛下から手に入ったものだ。

 全体的に大幅な身体能力の向上、みたいなかんじ。

 ただし、このスキルを持っていてもスライムには効かない。注意しよう。


 それからおまけに、《以毒制毒》なるスキル。

 これは、比較的元気だった兵士数名から手に入ったもの。

 そのまんま、『毒を以て毒を制す』だ。

 解毒剤が無くても、バッドステータス覚悟で解毒ができる、という、実は初めての回復系のスキルである。

 ……多分、こんなの使わない。


 他に、いつもの如く《一刀両断》とかのスキルがいっぱい、魔法が少々。

 グランデムはテオスアーレと比べて、魔法が採れる割合が少ない気がする。

 お国柄だったのかもしれない。




 さて。

「では改めてお疲れ様いえーい」

 アイテムの整理をざっと行って、すっかり夜も更けた頃、私達は食堂で晩餐と洒落こむことにした。

 食糧庫にあった果物のシロップを割って、今度こそ美味しい乾杯。うん、甘い。

 ……ちなみに、当然私以外はスライムしかご飯食べないんだけれど、逆に言うと、スライムはご飯を食べる。

 そして、今はスライムがいっぱいだ。

 なので、なんだか賑やか。とてもいい。

 多分、今日の兵士達の食事だったのだろうスープやスモークチキンを温め直して頂く。

 ラビ下級武官の部屋に残りっぱなしだったパンは、硬くなっていたので、スープに入れてふやかしながら食べる。美味しい。

 それから、テオスアーレの食糧庫で手に入れた美味しいお菓子や果物なんかも出して、楽しく美味しくご飯を食べた。




 本日のMVPである毒スライム達がぷるぷる飛んだり跳ねたりしているのを眺めつつ、私はガイ君とボレアスと一緒に地図を見る。(性格なんだと思うんだけど、こういう時にホークとピジョンとクロウ、リリーなんかは来たがらない。ムツキ君は気まぐれに来たりする。)

 ……次の国をどうにかするダンジョンを、考えるために。


 次に狙う国の候補1つ目は、セイクリアナ。

 テオスアーレの、グランデム側じゃないお隣さんである。

 多分、テオスアーレとはそこそこ仲が良かったんじゃないかな、と思われる国。

 ただし、当然だけれど、この国には何の伝手も無いから、1からの開拓作業になる。

 またどこかの国とぶつけて戦力を削ぐとか、そういう事をしないと、1から国を滅ぼすのはちょっとめんどくさい。

 そしてまあ、普通に考えれば、テオスアーレの『王の迷宮』みたいに都合よく町の中にダンジョンがあるわけがないから、そのあたりを考えなくてはいけない。

 ……それから、ストケシア姫が亡命しているとしたら、多分、セイクリアナ。

 だから、セイクリアナをすぐに襲ってしまうと、新しい国どころか、村1つできる前に折角の国の種を殺しかねない。

 ストケシア姫にはせめて村の精霊ぐらいは作ってから死んでもらわないと困る。

 だから、セイクリアナを狙うなら、やり方を考える必要がある、ということかな。


 それから、もう1つの候補が、レイナモレ。

 これは、グランデムの、テオスアーレ側じゃないお隣さんであるらしい。(つまり、国を並べると、セイクリアナ、テオスアーレ、グランデム、レイナモレ、という具合になる。)

 聞いた話だと、レイナモレは女王様が治める国なんだとか。

 武力はあるものの、基本的に争いを好まない人達なんだそうで……レイナモレは山の中、森の中にある辺境の国だ。

 そして、そこで森の恵みを受けながら、薬草で薬を作ったりして暮らしているのだそう。

 この話は、グランデムで薬の買い占めをしている時に聞いた。

 最高級薬と良質な解毒剤はレイナモレからの輸入品だったんだとか。

 ……ということは、この国は、正面突破もできない、毒を撒いても看破される、しかも多分、町の中にダンジョンがある訳でも無い……という、とても条件の悪い国なのである。

 でも、国だから。ここはなんとか、頑張ってみたいところではある。




 ……ということで、2つの国について考えたところで……ふと、『私』の感覚の中に、侵入者の気配を感じ取った。

 ただし、侵入者が居るのはここではなくて、『魔銀の道』。

 ……なんとなく嫌な予感がするので、とりあえず地図を片付けて、私は『魔銀の道』へ向かう事にした。

 だって、金ぴかのゴーレム他その他がいっぱい来てるんだもん。


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