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私は戦うダンジョンマスター  作者: もちもち物質
始まりのダンジョン
4/135

4話

 ……Lv3。

 強いのか弱いのか、微妙な数字である。

 が、少なくとも……Lv1よりは、強いんじゃないだろうか。多分。

 けれど、具体的にこの『Lv3』がどの程度強いものなのか、知りたいところではある。

 あまりにも気になるので、ちょっと頑張って集中してみた。

 ……のだけれど、こんな結果しか得られなかった。


 種族:ダンジョン

 体力:あんまり

 魔力:ほとんどない

 攻撃:なかなか

 知力:そこそこ

 敏捷:かなり

 防御:あんまり

 魅力:そこそこ


 ……わかんないよ!




 とりあえず、多分、『敏捷』が高めで、『体力』と『防御』が低め、『魔力』がとても低い、って事なんだろうけれど……せめて、物差しが欲しい。

 具体的に、大体このぐらいの強さの戦士ならこの程度のステータス、みたいな……。

 どうにかしたら、『そこそこ』とかが数字で出せるようになったりするのだろうか。

 それに必要なのは訓練だろうか。

 それとも、特殊な道具とか、そういう何かか。

 ……この世界、どうせ魔法があったりするんだろうから、そういう魔法でもあるのかもしれないね。

 あったとしても、『魔力:ほとんどない』の私に使えるかは分からないけれどね。




 自分の強さがオブラート5枚重ねぐらいのぼんやり加減で分かったところで、早速、今回のリザルトといこうとおもう。


 今回倒した侵入者は3人。

 得られた魂は、なんと、3640ポイント分。

 ……一気に大富豪になってしまった気分だ。

 さんぜんろっぴゃくよんじゅう。

 62ポイントがいかに貧しかったか、よく分かってしまう。

 しかし、本来はこれが正しいのだ。

 大体、普通の人間1人で魂1000ポイント分。

 つまり、普通の人間を1人殺せば、裸スケルトンが10体召喚できるということ。

 皮鎧と鉄の剣ぐらいの武装をさせようとしたらスケルトンの数は2体ぐらいになってしまうかもしれないけれど、それでも、真っ当な戦力になりそうなモンスターが2体。

 今回の侵入者3人に対してだったら、戦略次第で十分に勝てそうな戦力だ。

 つまり、人を1人殺せばダンジョンとしてはそれだけでかなりの戦力を得られる、という事である。

 ……もっと強い相手が出てきてしまったら、足りなくなるのかもしれないけれどね。




 魂で喜んだけれど、まだ喜びは続く。

 侵入者3人の死体と持ち物を回収して、玉座の間に並べて整頓。

 早速、手に入れたものを確認しよう。


 ナイフが3本と片手斧が1振。(ナイフ1本は刃こぼれが酷い)

 あまり綺麗じゃない服が3着。

 皮のブーツ3足。

 皮の手袋2組。

 皮の鞄や袋が4つ。

 皮鎧2つ。(1つは新品同様、もう1つは使いこまれてる)

 薬草が5つ。

 針金がちょっと。

 この世界の貨幣らしい硬貨が2枚。1枚は銅貨で、もう1枚は多分、鉄。

 それからいつもの如く、死体が3つ。


 ……以上である。


 さて、今回の死体は、見る限り『聖印』が無い。

 だから、この死体を素材にゾンビやスケルトンも作れるわけだけれど……。

 骨を素材にスケルトンを作った場合、使う魂は60ポイント分。

 死体を素材にゾンビを作った場合、使う魂は500ポイント分。

 ……スケルトンはともかく、ゾンビはナシのような気がする。

 ゾンビがどの程度の戦力になるかは分からないけれど……うん、ちょっと保留にしておこう。

 だってどう考えても、『ゾンビ』って、長く使えるモンスターじゃなさそうだし。




 装備は一通り、ゴミや汚れを『還元』して綺麗にした。

 じゃないと、今まで侵入者達が着ていた服とか、履いてたブーツとか、下着とか、置いておく気になれない。

(ちなみに、ゴミや汚れは魂ポイントに換算して小数点以下になってしまったらしい。1にもならなかった。)

 そして、ナイフや斧を見て、私は自分の武器……てるてる坊主さんのナイフと、スコップ。これらを見比べる。

 ついでに、皮鎧やブーツ、服なども全部並べて、見比べる。

 戦果の整理が終わったら、次にやることはダンジョンの強化。

 ……つまり、私の強化、装備の強化、なのだ。




 まず、服に関してはてるてる坊主さんが着ていたものを作り変えて着るのが一番良さそう、ということになった。

 てるてる坊主さんのてるてるマントやローブは、布が丈夫だし、綺麗だ。

 今回の侵入者達の服は薄っぺらいし、防具としては頼りなさすぎるから却下。


 私は魂を2ポイント分使って、てるてる坊主さんの服を改造した。

 てるてる坊主のコスプレをする趣味は無いから、フード付きマントはおいておいて、ローブの方を何とかする。

 ずるずるしたワンピースみたいな服だから、とりあえず裏返して、一回り小さく縫い直すイメージ。

 動く邪魔にならないように、裾はできるだけ絞らないようにしてフレアスカートみたいになるようにして、丈は膝丈ぐらいにした。

 イメージするだけで、後は適当に出来上がるから便利なものだ。

 早速着てみると、そんなに悪くなかった。

 布の肌触りは良いし、何より、なんだか防御力があがったかんじがする。漠然としているけれど。


 次に、皮鎧を調節した。

 これに使った魂は9ポイント分。

 加工箇所は多いし、皮の方が布よりも加工が難しい分、多くの魂を食う、ってことなのかな。

 それでも、『作成』で魂から皮鎧を作ろうとしたら、一番安いのでも50ポイントかかるんだから、かなり安上がりではあるのだけれど。

 ……そうしてできた皮鎧は、胸と肩を覆うだけの簡単なものだ。

 無いよりは絶対に良いし、それでいて、動きの邪魔にもなりにくい。

 あまり立派な鎧なんて身に付けたら、動けなくなりそうだし、これでいい。

 私の武器は『敏捷』だろう。

 なら、それを削るような装備は避けるべきだと思う。


 それから、ブーツと手袋のサイズ調整を行って魂を3ポイント消費。

 ブーツは膝まである奴だから、多少は防具としても期待できるかもしれない。

 手袋は手指の保護というよりは、滑り止め。

 これからスコップを使うのか、ナイフを使うのか、はたまた斧で頑張るのかは決めていないけれど、どちらにせよ、武器が手の中で滑った、なんてシャレにならないから。




 さて。これで残り魂、3626。

 私の最低限の強化も終わったし、あとは、これをどう振り分けてダンジョンを強化していくか、だ。




 どうせダンジョンを強化するなら、長く使えるようなモンスターなりトラップなりを増やしたいと思う。

 使い捨てのモンスターなんて使ってたら、すぐに魂が無くなってしまうし、そうなると私の居た世界を取り戻すのがどんどん遅れていく。

 だから、私はできる限り、1つのモンスターやトラップを長く使えるように工夫して、節約に節約を重ねていこうと思うのだ。

 ……そして何より。

 1つのモンスターを長く使うことのメリットは、魂の節約になるということだけじゃない。

 そう。『レベルアップ』だ。




 多分、私は侵入者3人(ともしかしたらてるてる坊主さんも)を殺して、そのために『Lv3』になった。

 つまり、敵を殺せばその分、そのモンスターのレベルが上がるのだ。

 ……ダンジョンとしての私にはなんとなく、その感覚が分かる。

 敵を殺した時に魂が回収される。

 しかし、回収しきれない魂の屑みたいなものは、その場に残るのだ。

 そして、その魂の屑は、敵を殺したモンスターに吸収され、糧となる。

 魂の屑……言うなれば『経験値』みたいなものだろうか。それが溜まっていけば、モンスターは強化されて強くなっていく。

 そう。

 同じモンスターが大量に敵を殺していけば、その分、そのモンスターは強化されていくことになる。

 長く使えば使う程、モンスターは強くなり、より長く使えるようになっていく。

 ……完璧である。

 つまり、私がすべきことは……できるだけ、モンスターを死なせないようにすること。

 弱いモンスターいっぱいじゃなくて、強いモンスター1匹で回せるようにすることだ。




 ということで、早速、モンスターの選定に取り掛かる。

 トラップをいっぱいにして私1人で頑張り続けることも考えたけれど、やっぱり手数は多い方が良い。

 弱いモンスターをいっぱいにする気は無いけれど、強いモンスターを1匹増やすことは是非前向きに検討したい。


 ……モンスター一覧を見ていく。

 まず、強そうなの、ということで探してみたけれど……。

 ……『ドラゴン:魂1000000』

 だめだこれは。なんだこれは。ケタが幾つ違うんだ。

 ドラゴンは伊達じゃなかったということか。うん、ドラゴンはパス。

『ガーゴイル:魂50000』

 もうちょっと現実味のある数字になったけれど、今の段階で手が届くものじゃないからやっぱりパス。

『フェンリル:魂100000』

 駄目だ、コストが増えた。もっと安い奴を探そう。

『ゾンビ:魂1100』

 ゾンビなら、魂500で作れるから、お手頃といえばお手頃。

 しかし、ちゃんと備考があるのだ。

『ゾンビ:劣化するので注意』。

 ……長く使えないモンスターを雇う気は無いのでパス。ということは、侵入者3人の死体も還元行きだ。


 ……それから、延々と召喚できそうなモンスターを探し続けて、遂に、まともそうな奴を発見した。

『リビングアーマー:4000』

 これは中々強そうだし、お手頃だし、期待できるのではないだろうか。

 勿論、今の魂は3626ポイント分。4000には足りない。

 だけれど、てるてる坊主さんの杖から取った『魔石』があれば、魂3000ポイント分にまでコストを抑えられるのである。

 ナイスだ、てるてる坊主さん。

 これも装備が別売りなのが痛いけれど、一応、斧は手元にあるからそれを使えばいい。

 生きた鎧。生きた鎧。間違いなく見た目にも強そうだろう。

 よし、決めた。こいつを召喚しよう!




 早速、玉座の間の中央、魔法陣の上に『魔石』を乗せる。

 そして、玉座に座り、隣にある砂時計型オブジェに触れる。

「出でよ、リビングアーマー!」

 ……そして魔法陣に薄青の光が溢れ、眩く光り……。

「……あれ」

 魔法陣の上の魔石が消えただけで、特に変化が無かった。

 いや、砂時計の中の魂の量は減っている。がっつり減っている。

 なのに、魔法陣の上にはリビングアーマーが居ない。魔石も消費しっぱなしだ。

 ……これは。

 これは、やっちまった、だろうか。




 だが、焦りはそんなに長く続かなかった。

 もそもそ、とした音が聞こえてきたと思ったら、部屋の隅……道具を保管しておいた辺りで、何かがもそもそ動いている。

 それは、私が加工しなかった方の皮鎧だった。

 ……ああ。

 成程。

「装備別売りって、鎧も含めて、別売り、なんだ……」

 私が呟くと、部屋の隅で皮鎧が申し訳なさそうに揺れた。

 ……こんなのって、ないよ。




 仕方ないから、魂580ポイントと刃こぼれしたナイフを使って鉄の全身鎧を作成して、『リビング皮鎧』と『鉄の全身鎧』を合成。

 これでやっと、『リビングアーマー』らしい『リビングアーマー』が完成したのだった。

 モンスターの『合成』なんて心配だったけれど、モンスターと道具とをこうやって合成することもできるみたいだ。良い鎧が手に入ったらその都度こうしてリビングアーマーを強化してあげられそう。

 ……しかし、これにて魂は残り、46。

 たくさんあった魂が一気に無くなってしまった……。




 流石にリビングアーマー1体が増えただけだと不安だ。

 せめて、ダンジョン内にもう少し障害物がほしい。


 今回、私がナイフとスコップだけでなんとか侵入者3人を殺せたのは、間違いなく、不意打ちのおかげだ。

 不意打ちの方法はいくつかある。

 相手から見えない位置に潜んでおいて、相手の意識が自分の方から離れている時に急襲する。

 相手の意識が別のもの……お宝とか、トラップとかに行っている間に、急襲する。

 2つが組み合わされば、より安全。

 だから、せめてもう少し……障害物になりそうなものが欲しいな、と、思うのだ。

 私が潜んでおけるような場所とか、相手の意識を一気に持っていけるようなトラップとか。


 その為に、とりあえず、死体3つを還元した。

 3つで95ポイントになった。

 ……てるてる坊主さんの死体は1体で50ポイントだったから、中々高級な死体だったんだな、と思った。

 だが、これで魂が141ポイント分になった。

 これで、落とし穴(小)を2つ、3番目の部屋に設置する。

 1つは入り口近く。もう1つは真ん中らへん。

 これで魂は残り41ポイント。

 トラップの発動条件は『任意発動』にしておく。

 つまり、私が逐一指示して動くタイプだ。

 踏めば必ず発動するようなものじゃない分、細かい戦略に使いやすいけれど、オートマティックじゃないから手間取るとも言える。

 ダンジョンの規模が大きくなったら逐一発動指示なんてしていられないのだろうけれど、少なくとも今はまだ大丈夫。

 トラップも存分に私の武器にさせてもらおう。


 そう。それから。

 このダンジョン、間違いなく、『最後まで』使い続けることが決定しているモンスターが居る。

 ……私だ。


 効率を考えると、私は戦い続けることになる。

 私が死ぬと私の居た世界を取り戻す手段が無くなりそうだから、できれば私は後衛をやりたかったけれど、しょうがない。

 今現在、リビングアーマーの他に戦力は私しかいないのだ。少なくとも次回は私、続投である。

 そして、リビングアーマーは生まれたてのLv1。対して私はLv3だ。私の方が先輩で強い。

 これじゃあしょうがないね。




『侵入者1名』


 そして、私のダンジョン部分が、侵入者の来訪を告げる。

「君の初陣だね」

 リビングアーマーに話しかけると、私の言葉の意味が分かるのか、がしゃ、と、鎧が揺れた。

「斧とナイフとスコップ、どれがいい?」

 リビングアーマーに片手斧とナイフとスコップを差し出すと、鎧のガントレットが動いて、片手斧を手に取った。

 数度振って、様子を確認したらしい。

 多分、これでいいんだろう。

 ……けど、うん。

「侵入者を殺したら、その魂で君の兜、作ってあげるから……」

 頭が無い相手って、コミュニケーションの取り方がいまいち分からない。兜があれば、首を縦に振る、横に振る、ぐらいはできるから……次に作るのはリビングアーマーの兜かな。

「じゃあ、いこうか」

 侵入者が最初の部屋に入ったのを見て、私はナイフとスコップを手に取った。

 油断せずに行こう。

 敵は1人だが、1人だからこそ、注意しなくては。

 つまり、1人でダンジョンに入る度胸と自信がある人、という事なのだから。

 ……ダンジョンとしての私の目には、隙の無い身のこなしで進む1人の剣士の姿が映っていた。

 つよそう。


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