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私は戦うダンジョンマスター  作者: もちもち物質
終わりのダンジョン
125/135

125話

 ……思えば、『ウィアの歴史書』も、こんなかんじに血文字で諸々の魔法について書いてあった。

 思えば、確かに変ではあった。

 セイクリアナの王妃になっていた人だとはいえ、『マリスフォールに栄光あれ』なんて書かれた本が、セイクリアナの宝物庫に残っていたのだから。

 書物を運び込んだのはウィアさんご本人だったらしいけれど、その書物がずっと残っていたということは、『ずっと中身を確認されなかった』か、『中身を確認されても黙認された』かのどちらかだったのだと思う。

 ……私はてっきり、前者だと思っていたけれど。

 もし、この絵本に書いてある『我らが一族のみが読むことができる文字を記す魔法』によって『ウィアの歴史書』の血文字が記してあったならば、それで筋が通る。

 中を見られても、『問題なし』として看過された。そして、セイクリアナ王妃が記したものだから、価値が無くてもとりあえずとってあった。だって、『何の問題も無い歴史書』でしかなかったのだから。

 ……この絵本についても、同じだろう。

 絵本の作者が、『コルムナ・オリゾレッタ』。つまり、オリゾレッタ王家のどこかに属する人であったことになる。

『ウィアの歴史書』から考えれば、多分、『コルムナ・オリゾレッタ』さんも、マリスフォールに関わる人、だったんだろう。


 うん。これで、この『コルムナの絵本』についても、『ウィアの歴史書』についても説明が通る。

 ……けれど、今度は、また1つ、謎が生まれてしまう。

『何故、私はこの文字を読めるのか』。




 1つ、考えられる理由を挙げるとするならば、私がダンジョンである、ということ。

 ダンジョンは邪神の力の顕現、らしい。

 そして、マリスフォールは、邪神復活のために頑張る人達、という認識でいいと思う。多分。

 ……だから、マリスフォールの人達の言う『我ら一族』の中に、邪神復活を目指す人達、或いは、邪神の力を行使しているダンジョン達も含まれる、と。

 この理論で行くと……レイナモレの女王様も、『ウィアの歴史書』や『コルムナの絵本』を読めた、ということになるか。

 うーん……でも、レイナモレの女王様が何を目的にして国を丸ごとダンジョンにしていたのか、今更分からないし、そもそも、レイナモレに血文字の文書が無かったとしても、それが『レイナモレ女王が気づいて捨てた』のか、『元々レイナモレには書物が無かった』か分からないのだから、意味が無いか。

 ……一応、調べられる部分だけ、調べておこうかな。




 レイナモレ城に移動して、宝物庫を探す。

 レイナモレ城は丸ごとダンジョンだから、とても探索が楽でいい。自分の指の先に乗っているものを確認する位の気軽さだ。

 ……宝物庫の中を探したけれど、血文字の書物は無かった。

 それから書庫を探したけれど、無かった。

 レイナモレ女王が使っていた部屋も探したけれど、やっぱり無かった。

 念のため、レイナモレの家系図を調べてみたけれど……少なくとも、『マリスフォール』が苗字の人が血統に加わった記録は無い。

 勿論、『ウィア・セイクリアナ』だって、記録の上では『セイクリアナ』の苗字だったんだから、記録に残っていないだけで、マリスフォールの血筋が加わっていた可能性はある。

 けれど……うーん。

 駄目だ。結局、何も決定的な判断材料になるものは得られなかった。

 邪神について、参考になりそうなものも特に見つからない。

 ……ダンジョンは、邪神の力の顕現、か。

 うっかり邪神と戦う事になった時に、どう作用してくるだろうか。




 無いものはしょうがないので、ダンジョン制作に戻る。

 強化ゴーレム達が交代しながら働いて、なんとかそれらしい形にはなってきた、と思う。


 ダンジョンは大体、平屋建てだ。何故かと言えば、ここは『ダンジョン』ではないから。

 ……つまり、邪神の力の顕現、と言うべき力を全く持っていない場所だから、『破壊可能オブジェクト』に設定なんてしなくても……いくらでも、破壊し放題なのだ。普通の町の建造物と何ら変わりがないのだから、破壊し放題。

 そうすると、複雑な地形を作ることはできない。迷路なんて作っても、迷路としてなんて攻略してもらえないだろう。

 そう考えると……当然、ダンジョンをダンジョンとして使いたいならば、当然、平屋建て、というか……つまり、あまり複雑ではない形で、ということになる。

 ただし、逆に考えるならば、迷路は『破壊させることで相手の体力を削る』用途で使えるし、複数階建てならば、『破壊することで落とし穴になってしまう』ような構造にもできる。

 邪神の力を使わないこのスコップ謹製ダンジョンは、私にとって不都合なことがあると同時に、相手……邪神にとっても、自分の力が及ばない場所になるはずだ。

 私はそれを存分に生かす。

 ……逆に言えば、それ以外に勝機が無いように思う。

 ダンジョンでできることを全て邪神ができるという事なら、本当に厄介な相手だと思うし。

 ……まあ、最悪の場合は……邪神と結託して、私の世界を取り戻す為の魂集めをもう一度頑張る、という手段も無きにしも非ず、なのだけれど。

『世界のコア』が邪神にとっても必要だったりしたら非常に厄介なことにしかならないので、できれば……邪神は、殺したい。




 スコップ謹製ダンジョンの準備をするにあたって、できるだけダンジョンの力は使わないように心がけた。

『火石』や『水石』をダンジョンで作って、それをスコップ謹製ダンジョンに持ち込むことは可能だけれど、それはつまり、ダンジョン側に『どのようなギミックがあるか』のヒントを与えることになってしまう。

 塩素の製造をダンジョンの外で行ったのも、同じ理由だ。

 私はダンジョンだけれど、ダンジョンは私であると同時に邪神の一部でもある、らしい。

 まるで自分で自分を出し抜かなくてはいけないような感覚だ。

 どうやったら邪神をひっかけられるトラップを作れるだろうね。

 ……というか、そもそも、邪神って、どういう形状をしているのだろう。悪魔みたいに実体があればいいのだけれど。

 ……考えても仕方ないか。できる準備をしておくことしかできないのだから。




 最後に、スコップ謹製ダンジョンを囲むようにして私のダンジョンを新しく1つ作れば完成。

 ……私のダンジョンを作った理由は、簡単だ。

 邪神がスコップ謹製ダンジョンに『迷宮の欠片』を使ってしまったら、スコップ謹製ダンジョンが邪神のものになってしまう。そうなったら本末転倒なので……先にダンジョンを作ってエリアを伸ばし、スコップ謹製ダンジョンが『迷宮の欠片』を使えないようにしておく。

『迷宮の欠片』は、ある程度の広さが無い場所では使えない。

 つまり、すぐ隣にダンジョンがあったりする場合には使えないのだ。

 邪神がこの辺りのルールを守ってくれる保証はないけれど、やれることはやっておきたかった。




「できたね」

 こうして、スコップ謹製ダンジョンは完成した。

 頑張ってくれた強化ゴーレム達も、それぞれがお互いにハイタッチして、お互いを労っている。

「皆、ご苦労様。ありがとう。いえーい」

 ハイタッチ集団に私も混ざって、しばらくは皆でダンジョン完成を喜びあった。

 これで、私の世界を復活させる準備が整った。

 あとは、最後にレイナモレを滅ぼすだけだ。




 レイナモレの全てのダンジョンを作動させる。

 一気に壁が生まれて、レイナモレのあちこちに立ちはだかった。

 壁にはカタパルトやクロスボウや大砲、レーザーガンや火炎放射器などが備え付けられている。

 ……ここまでできていれば、やることはとても簡単だ。




 レイナモレ中のダンジョンから、強化ゴーレム達が飛び出していく。

 城を中心として点在する30のダンジョン全てが今や、ゴーレムの出入り口であり、また、ダンジョン自体が武器でもある。

 潰すのは、端から。

 最後に潰すのは都にすることにして、末端の町や村から、極力潰していくことにした。


 クオッレ村にカタパルトを数発打ち込むと、逃げる人達を強化ゴーレムが追いかける。

 とどめはできるだけ、ゴーレム達にやらせたい。

 レイナモレはバトルフィールドのほとんどがダンジョンだ。どこで殺しても、経験値を回収することができる。

 当然、それは私にも言えることだ。

 私自身がレベルアップしておく事も、とても大切なこと。

 私も戦場に出て、できる限りのレベルアップを図ることにした。


 壁に用意した武装は、主に人々の動きを制御するために使った。

 カタパルトを打ち込めば、人は散り散りに逃げる。

 火炎放射器が壁から突き出していれば、人は壁から逃げる。

 レーザーガンを人々の進路に撃てば、そこで人が止まる。

 そこへゴーレム部隊や私が雪崩れ込めば、簡単に人を殺すことができる。

 結局は、ダンジョンの中で戦うのと何ら変わりはない。

 ただ、ダンジョンがとても広くて、天井が無い、というだけの違いでしかない。

 いつもやっていることを地上で、それもこんなに大人数を相手に行うという事こそいつもと違うけれど、人の動きを見て、トラップを動かして、人の動きを制御して、そこに私がとどめを刺しに行く、という一連の流れそのものは何も変わっていない。

 ……いつの間にか、私も戦うのが上手くなったと思う。

 やっていることは一番初めと変わらない。

 けれど、圧倒的に効率が違う。掛かる時間が違う。それに、私自身の自信が違う。

 私は戦えるようになった。

 私は、私のダンジョン最強のモンスターとして、十分に戦えるようになった。

 ……それも、もうすぐ終わるのだろうけれど。




 交戦開始から半日で、レイナモレは滅びた。

 正確に言えば、レイナモレの精霊が死に、レイナモレ城の砂時計型オブジェには膨大な量の魂が溜まった。

 レイナモレ女王を倒して、レイナモレのダンジョンを全て乗っ取った時点でほとんどレイナモレは滅ぼした同然だったから、当然と言えば当然なのだけれど……やっぱり、すぐに終わってしまった気がする。




 今回のリザルト。

 今回手に入った魂は、60,023,745ポイント分。

 手に入った魔法やスキルは、今更珍しいものも無いので省略。

 魔法やスキルはそれぞれ、強化ゴーレムやその装備達に割り振った。


 ……これで、今までに手に入れた魂は、全て合計して311,212,419ポイント分になった。

 やっと、私は私が居た世界を取り戻すことができる。




「終わっちゃった」

 すっかり人気のなくなった町をレイナモレ城から見下ろしながら、なんとなく、寂寥感のようなものに襲われる。

 あちこちで燻る煙がゆるゆると空に伸びていって、溶けて見えなくなっていく。

 城下はともかく、他の町や村の様子は、木々に隠れてここからは見えないけれど、木々の隙間から、やっぱり同じように煙が立ち上っているのが見える。

 傾いた太陽に照らされたレイナモレの国は、とても静かだ。

「もうすぐお別れだね」

 装備モンスター達は、それぞれ、少し寂し気に揺れた。


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