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私は戦うダンジョンマスター  作者: もちもち物質
終わりのダンジョン
120/135

120話

 リザルト。

 今回手に入った魂は、元々『恋歌の館』に貯蔵されていた分も含めて、801,427ポイント分。

 ……ちょっとだけ魂のお小遣い稼ぎができたし、目的も達成できた。

 上々、ということでいいんじゃないかな。




『恋歌の館』の店は焼き払ってしまったけれど、奥、玉座の部屋の近くにあった部屋の中に、宝飾品やドレスがたくさんあった。

 それから、『恋歌の館』さんのものと思しき寝室や浴室も。

 ……『恋歌の館』の中を探索していたら、寝室の奥に『目指せ1日1000000精気、100日で1サキュバス!』と貼ってあった。

 精気……サキュバスを利用することで手に入る、魔力と魂の間みたいなもの。

 サキュバスは戦闘能力が無い代わりに、他の生き物から『精気』を奪い取る能力を持つ。

『精気』は、100精気で1魂に変換できる。

 ……と、『恋歌の館』としての記憶が理解した。

 つまり、このダンジョンでは1日に10,000ポイント分の魂を稼ぐ事を目標にしていたらしい。

 人間の魂最低価格が1,000ポイント分だから、その計算でいけば最大10人分の魂。でも、少し強い人なら10,000ポイント分ぐらいは魂を持っているから、所詮はその程度、ということかもしれない。

 ある意味、『恋歌の館』はコンスタントに安定して、そしてかなり安全に魂を稼いでいた、ということになる。

 賢い手段だったのかもしれない。


 ただし、気になる所もある。

『恋歌の館』さんは、『静かなる塔』さんや『常闇の洞窟』さんと一緒に、邪神復活のために頑張っていたはず。

 ということは、当然、邪神復活のために『恋歌の館』さんも何かしらかの働きをしていたはずなのだけれど……それが、『100日で1サキュバス』だったんだろうか?


 サキュバスは、1体につき魂1,000,000ポイント分のモンスター。ワルキューレやオートマタと並ぶコストのモンスターだ。

 当然、この『恋歌の館』における魂稼ぎの手段であり、また、『恋歌の館』の商売繁盛のための手段でもあったはず。

 だから、『恋歌の館』を運営するにあたっては、この目標は妥当だ。

 ……けれど当然だけれど、『1日1000000精気、100日で1サキュバス』を実行していった場合、魂の貯蓄ができない。

『ウィアの歴史書』にあった、『邪神に大量の魂を捧げることで邪神を復活させる』というような記述と矛盾する。

 やっぱり、『恋歌の館』さん達が目指していた邪神復活は、私が知っている邪神復活の方法とは違う経路を辿るものだったんだろうか。


 ……『静かなる塔』さんの言っていたことやマリスフォールの遺跡の壁画から考えれば、ダンジョンは、邪神の力の顕現。

『静かなる塔』さんは、ダンジョンで生成された魔導書を読んで、邪神復活の方法を探ったらしい。

 つまり、邪神の力によって生成された魔導書から、邪神復活の方法を探っていたことになる。

 それに、常闇の洞窟』さんは、『静かなる塔』さんも『常闇の洞窟』さんも『恋歌の館』さんも同時に、『邪神様から直接声を聞いた』と言っていた。

 ならば、そうそう間違った答えを得るとも思えない。


 対して、『ウィアの歴史書』を書いたウィアさんは、多分、マリスフォールの王族の出身だ。

 邪神のお膝元の王家に居て、間違った答えを得るともやはり思えない。

 特にウィアさんについては、『ダンジョンの位置を知る魔法』の効力がもう証明されているし、信用に値するだろう。


 何かが引っかかる気がする。

 答えがすぐそこにありそうなのに、どうにも答えが見つからない。

『静かなる塔』さんは、邪神復活のために様々な素材を集める必要がある、と言っていた。(実際に集めていたものが何かは正直分からないのだけれど。『静かなる塔』にあったのは人間牧場ぐらいだったし)

『常闇の洞窟』さんは、邪神復活のために100万の配下と武具を集めていた。

 そして『恋歌の館』さんは、サキュバスを集めていた、んだろうか。

 ……何かの素材と、100万の配下と、武具、そしてサキュバス。

 それで邪神を復活できるんだろうか。

『足りない』なら、話は簡単だ。他にも邪神復活を望むダンジョンがある、と考えればいい。

 でも、『必要あるのか』だと、話が難しくなる。そしてどちらかというと、これは『必要あるのか』だ。

 サキュバスって、邪神復活に、要る?

 ……要らない気がする。


 ウィアの歴史書の記述と、各ダンジョンの目指すものの違い、矛盾。

 それらを全て綺麗に収める理屈が、多分、あるような気がするのだけれど。




 ……考えていても答えが出ないし、『恋歌の館』は探索し終わってしまったし、モンちゃんはとても可愛いし、一旦休憩することにした。


 モンちゃんを磨きながらソファに座って休憩。

 ふわふわのソファに座りながら、とてもとても可愛いモンちゃんを磨ける幸せ。

 ……と思っていたら、不意に、リリーがネックレスの端でモンちゃんをびしり、と叩いた。

 すると、途端に幸福感が薄れていってしまった。

 ……モンちゃんは可愛いけれど、さっき程でもない。

 多分、モンちゃんが少々余分に『魅了』してくれたところをリリーに咎められたんだろう。

 すっかりしょげた様子のモンちゃんを磨いてあげながら、少し怒ってぱたぱたしていたリリーもついでに磨いていった。

 その内、両者ともご機嫌な様子でぱたぱたころころし始めた。

 仲良きことは美しきかな。




 その後ついでにホークとピジョンとクロウのお手入れをして、ガイ君も磨いて、ボレアスは洗濯した。

 ムツキ君と春子さんと秋子はちょっとどうしていいか分からなかったので、とりあえず撫でておいた。




『恋歌の館』は迷路で時間稼ぎできるようになっているので、少し席を外す。

 最初に向かう先は最初のダンジョン。

「お久しぶりです匠」

 相変わらず、ソウルハンマーの匠がベルヌーイ炉を動かして、人工宝石を作ってくれている。

 最近の生産は専ら、魔石粉末入りの人工宝石だ。

 ……普通の宝石なんて、王城4つを占拠した今、余る程ある。

 だから、モンスターの強化にも使える魔石粉末入り人工宝石を量産してもらっていたのだ。

「それじゃあ、貰っていくね……あ」

 そういえば、このダンジョン、初期からほとんど強化していない。

 今のうちに強化しておこう。


 リビングドール姉妹にそれぞれ、魔法陣を刻んでおく。

 金鉱ダンジョンのレイル君が教えてくれた魔法陣は、ゴーレムやリビングドールといったモンスターに幅広く有効らしい。とても便利。

 それから、匠にも魔石粉末入り人工宝石を導入した。

 ……匠がちょっとおしゃれになった。

 これだけだとやはり不安は不安なので、モンスターの増産ができたらこっちにもモンスターを回そう。


 次に向かうのは『王の迷宮』。

 各種モンスターメーカーを稼働させて、強化ゴーレムの増産を行う。

 ゴーレムをゴーレムメーカーで作って、ソウルソードやファントムマントやリビングアーマーも作って装備させていく。

 勿論、メーカーには材料と一緒に魔石粉末入り人工宝石を投入して、モンスターの強化を図る。

 魔法陣を刻むのは、後でまとめてやろう。


『王の迷宮』の次は、『レイナモレ城』。

 ここに置いてあるホロウシャドウメーカーで、ホロウシャドウを量産中。

 ずっとホロウシャドウメーカーは稼働させっぱなしにしているので、ホロウシャドウが数十体誕生していた。

 ついでに、散々手に入っていた血液を使って、ブラッドバットも量産しておくことにした。

 やはり、体が小さくて空を飛べるモンスター、かつ、物理的攻撃に強い、となると、かなり使い勝手が良いから。


 本当は、モンスターを大量生産しなくて済むのが一番いいのだけれど、ダンジョンの数が多くなった今、モンスターを増やさないと防衛が難しい。

 ある程度は迷路で時間稼ぎしたり、トラップで殺したり、といった工夫もできるけれど、やはり、モンスターと組み合わせて使った方が、余程効率が良い。

 モンスターの生産自体は、メーカーがある今、ほぼノーコスト。魂の消費も無い

 だから、今の内に生産できるだけ生産しておこう。




 モンスター量産待ちの間、レイナモレのダンジョン群を整備した。

 レイナモレの主要地域を網羅するダンジョンは、城と最初の拠点を含めて31。

 私は、それら31個のダンジョンの内、城を除いた全てのダンジョンをくっつけた。


 画用紙を張り合わせて大きな画用紙にして、そこに絵を描いていくような感覚で、複数のダンジョンを1つの大きなダンジョンにする。

 迷路はダンジョンからダンジョンへと繋がれ、複雑さも規模も大幅に上昇。

 それと同時に、各ダンジョンが1つのダンジョンとして成立するようにもしてあるから、『息が詰まる』こともない。

 ……ダンジョン同士を繋げておけば、『同時攻略』される時の困難を格段に減らせる。

 その代わりに、『1つのダンジョンを囮にして他のダンジョンを助ける』みたいなことができなくなるけれど、最初から1つたりともダンジョンを譲る気は無いのだし、問題ないだろう。




 ダンジョンの改造を終えた後、レイナモレ城の大浴場で少しのんびりした。

 レイナモレ城はダンジョン兼お城なだけあって、こういう設備が充実している。

 このお風呂は『火石(中)』と『水石(大)』を使って贅沢にお湯を使えるようになっている。多分、中庭に植えてあった薔薇の木から花を摘んできて薔薇風呂にしたりしていたんじゃないかな、あの女王様。

 私は『魔銀の道』の山に生えていたひのきを木材にして湯船に入れて、ひのき風呂状態にしている。

 木の香りはなんとなく落ち着く。


 湯船では春子さんがぷかぷか浮いている。

 体の中に空気を含んでおくことで、春子さんは水に浮くらしい。

 それから、リリーとモンちゃんもお風呂に入っている。2体とも浮かないから、私が装着したまま入浴しているのだけれど。

 秋子はあまりお風呂が好きではないらしく、パス。まあ、血だもんね。

 それから、ガイ君、ホークとピジョン、クロウも、お風呂はパスらしい。金属だからかもね。……その理論で行くと、リリーは大丈夫なんだろうか。

 ボレアスも、洗濯したばかりということもあり、パス。

 そしてムツキ君はいつの間にか一緒にお風呂に入っていた。

 ムツキ君が親指を立てて影に沈んでいくのと一緒に、私も親指を立てたまま湯船に沈んでみたら、(つまりター○ネーターごっこ)ムツキ君に好評だった。

 親近感が沸いたのかもしれない。




 体が温まったら、ホロウシャドウとブラッドバット達を連れて、『王の迷宮』へ戻る。

 生まれていたゴーレム達に魔法陣を刻み、装備モンスター達を装備させ、強化ゴーレム部隊の完成。

 彼らはそれぞれ、モンスターの少ないダンジョンへ派遣する。

 最初のダンジョン、『魔銀の道』、『常闇の洞窟』、『アドラットのお屋敷ダンジョン』、そしてレイナモレのダンジョン群。

 一通り派遣が終わり、各ダンジョンを強化したら、一安心、かな。




 邪神復活を目論む人は、多分、他にも居ると思う。

 そしてその人達が『魂』を欲するならば、私を殺して私のダンジョンを奪うのが一番早い。

 ……だから、防衛しておかなくてはならない。

『王の迷宮』の玉座の部屋、薄青に輝く砂時計型のオブジェの中には、6千万を超える魂が貯蔵されている。

『元グランデム城』にも5千万超、『幸福の庭』にもその程度。

 私が使う時まで、守らなきゃ、ね。




 ふと、砂時計型オブジェを見て、なんとなく気になった。

 砂時計の上部には、たっぷりと魂が蓄えられている。

 そして、下部には、今まで使った魂が、これまたたっぷりと。(『王の迷宮』さんがたくさん使いこんでいたから、その分も含むと思う。)

 ……今まで特に疑問に思った事はなかったのだけれど、この機構。

『使った』魂の量も、表示してくれるのか。

 ……。

 使った後、魂って、どうなっているんだろう。


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