手紙
一通目
「若山沙英様
お久しぶりです。
お元気でいらっしゃいますでしょうか。
僕の方は相変わらず仕事が長期休みに入ると体調を崩してしまう情けない毎日を送っております。
今は、病院に行き熱も下がったので、愛猫とともに筆をしたためております。
あれから数えきれない程の夜と昼を超えましたが、その間一日たりとも貴女を忘れたことはありません。
僕は、もう髭なんて生やして白髪頭になってしまい、昔の体型からは程遠い何とも情けない状態になってしまっております。
貴女と別々の道を歩き始めてから、ただひたすらに生きる為に生きてきた日々を過ごしておりました。
今では後悔しかありません。
ですが、今の自分の姿を貴女に見せて幻滅される事がないことだけは救いと思っています。
貴女の中では、まだ、若く逞しくよく怒りよく笑い、人生を謳歌している、そんな僕が生きていてくれる、と、そう思っておりますから、きっとこれで良かったのでしょう。
先日、貴女から手紙が届きました。
懐かしさとともに、貴女と過ごした日々が昨日のことのように蘇りました。
湿っぽい話になってしまいましたが、一言だけ貴女に伝えたい。と思います。
まだ、貴女を愛しています。
それでは失礼致します。
佐々木克之」
二通目
「佐々木克之様
今、貴方の横にいる私を見て下さいませ。
私は笑って貴方を見つめているでしょう。
貴方と共に過ごした私の人生は、本当に幸せでした。
今もその幸せは続いています。
最期のその時が来るまで、ずっと幸せに過ごしましょうね。
貴方と私だからきっと、いえ、絶対大丈夫よ!
今も昔も、ただひたすらに貴方だけを愛しています。
佐々木沙英」
三通目
「佐々木克之様
本当にごめんなさい。
幾ら謝っても謝りきれる事ではありませんが、本当にごめんなさい。
弱い私が全て悪いのです。
今では後悔しかありません。
貴方が許して下さるその日まで私はずっと待ち続けます。
死ぬまで許されなくても私は待ち続けます。
こんな事を言える立場ではありませんが、貴方にお伝えしたい言葉があります。
私は貴方だけを愛しています。
若山沙英」
四通目
「沙英へ
この手紙を読んでいるという事は、僕が全てを知っていると君に伝えた後だね。
今もまだ冷静に物事を考えられない。
この選択はこれから先きっと後悔しかないと思う。
だけど、僕を裏切り続けた君を許す事は出来ない。
僕にダメなところがいっぱいあったかも知れない。
だけど、2人で乗り越えられると信じていた。
今は君を責める言葉しか出てこない。
君だけに責任があるとは思っていないけど、嘘を吐き僕を騙し他の男と寝た君の言葉を信じることはもう出来ない。
本当に君だけを愛していた。
今も愛している。
けれど許すことはできない…。
今までありがとう。
本当に申し訳ないと思っている。
さようなら、沙英。
克之」
五通目
「克之へ
今度、20年後の私達へ手紙を書いてみませんか?
貴方はきっと「そんなくだらないことをよく思い付くもんだ」と笑うかも知れませんが、どうしても送り合いたいのです。
きっと、いえ、絶対20年後の私達はその手紙を受け取って、お互いに微笑み合って、また愛が深まると思うの。
目を瞑れば目の前にその光景が浮かぶようよ。
貴方と出逢えて、私は本当に幸せです。
ずっとずっと愛しています。
沙英」