シュバルツシルトの畔
シュバルツシルト半径からちょっと外側、4 時の方向にその店はあった。
誰が始めたのかは皆目見当がつかないけれど、俗世間から遠く離れてひっそりと過ごしたいという気持ちは私にも痛い程良く分かる。
銀河帝国の建国から 100 万年。銀河は騒がしくなる一方で、どの星系に行ってもダイソン球、ダイソンリングが恒星を覆い隠している。
住人は高度に管理され、さながら家畜の様な生活を続けているそうだ。
奇しくも約 5000 年の眠りから覚めてしまった私はこの様な息苦しさから逃れるべく、ブラックホールに身を投げることにした。
しかし、魔法のような安全装置を載せた宇宙船は、私をブラックホールのほとりの薄気味悪い喫茶店へ不時着させた。