男と男の戦い
翌日の夕方頃。
ある男が風花の家の前で、インターホンを押した。
『はーい』
足音と共に風花の声が聞こえた。
「画面を見るなよ、男だから」
『えっ』
風花の足音が止まった。
「大丈夫だよ。他の男と違って、俺は襲わないから」
『……?』
画面がある機械の隣で、不思議がっている風花。
「もしかして……忘れた? 会って早々丸2年なのにもう忘れた?」
『……炎明?』
疑いの眼差しで画面をみる。
「そうそう! 俺だよ! 日高炎明!!」
その顔は確かに見覚えがあった。
そして、風花の1つ年上にも関わらず、あの子供のようなはしゃぎっぷり。
間違いない。彼だ。
そう確信した風花は大急ぎで玄関に向かった。
玄関に着き、ドアを開けると、いきなり強く炎明に抱かれ、耳元で、「久しぶりだな、風花」と言い、強引にキスをした。
その行動に驚いた風花は、「何してるのよ!! このっ、ド変態!!」と叫び、両手で突き放し、右手で彼の頬にビンタ。
風花は赤面で息が荒くなっていた。
「ハハハ、やっぱり風花は風花だ」
彼は痛そうに頬を左手で抑えて笑い、続けて、
「よかったじゃん。……男、平気になったみたいで」
「……え?」
そう言うと、今度は優しく抱き、「おめでとう……今日はそれを言いに来たんだ」
と語りかけて、今度は優しくキスをした。
風花もそれにつられ、目を潰り、両手は次第に炎明の背中の方へと向かって行った。
2人は口を離すと、炎明が突然こう言い出した。
「家の中に入っていい?」
突然の話に風花は耳を疑った。
「はい?」
「いや、事情を聞きたいからさ。……入っちゃだめ?」
「……分かった。その代わり、10分だけだからね!!」
そう言うと、風花は炎明を家へと招いた。
―――
「それで?」
風花の部屋に招かれた炎明は、早速、真剣な顔で尋ねてきた。
「えっ?」
「学校で噂になってるよ? 『俺以外の男と付き合ってる』って」
「……えっ? 何それ?」
「前に俺以外の男がお前の家に来たそうじゃないか。……お前、俺に嘘をついて男と遊んでたんじゃないか?」
突然言われたありもしない疑いの言葉に戸惑いを隠せない風花。
「そっ、そんな訳ないじゃない。だいたい、あれは、清美の友達みたいだったし」
「ふーん。……清美ねぇ」
「それに、あたしはその人を見たときに失神したし」
「……『失神』ねぇ」
「……まだ疑ってるの?」
風花は炎明に睨み付ける。
「……いいや、もう、いい」
そう言われると風花はホッと一息ついた。
「じゃあ、帰るよ。……疑って悪かった」
「……もういいです。気にしていませんから」
意地を張り、怒った顔をする風花に対して炎明は笑顔を返し、その場を去った。
―――
1週間後の放課後。
屋上に男が2人いた。
「お前か? 風花の事情も知らずに家に立ち寄ったっていう馬鹿は」
そう話し掛けたのは真剣な顔をした炎明であった。
「いや〜、すみません。ホントに知らなかったんですよ〜」
右手で頭をかき、軽いノリで返すのは龍也である。
その様子を見た炎明は、歩いて彼の近くに近寄り、彼の服を掴み、自分の顔に近付けると、「ふざけるな。風花がどれだけ苦しんだと思ったんだ?」
彼は、とても――いや、それ以上に怒った顔をし、憎しみが籠った小声で言った。
その後、炎明はすぐに手を放し去ろうとした。
「でも、ああでもしないとあの人はもう2度と外に出られなかったのでは?」
不意に龍也がそう呟くと、炎明の怒りが頂点に達し、
「その出来事が風花を傷つけたことが許せないんだ!!」
炎明は大声でそう叫び、龍也の元へと拳を握って走り、龍也の顔に殴ろうとしたその瞬間。
屋上に入るドアの音と同時に、「もうやめて!!!!」という、少女の声に驚いた。
その少女の名は、「風花……」と炎明は呟いた。
2人は風花の登場に驚いて、動きが止まっていた。
「2人とももうやめて!! あたしはもう大丈夫だから……。……だから、もうやめて!!」
「……風花……」
炎明の体は風花の元へと向かっていた。
そして、また風花は話し始める。
「あたしね、その人が来てから考え始めたの。……ずっと男が怖くて一生出られなかったらどうしようって。だから、挑戦してみようって思ったの。……外に出ることを」
「…………」
炎明はいつの間にか、風花の前に立っていた。
そして、さっきまで怒っていた彼の顔から笑みがこぼれた。
「……ハァ。お前を見ていたら、気が楽になった」
彼はそう言い、そして、こう叫んだ。
「アーアー、もうやめだ、こんなこと!! 面倒くせー!!」
そう言うと「そういえば」と言い、龍也の顔のギリギリまで歩いて向かい、小声で、
「お前のその目、なんか変だぞ? 眼科でも行って来たらどうだ?」
そう言われた龍也は、「はっ、はい」と言い、「じゃあなー」と炎明は手を振り、屋上を去った。
―――
同日。
とある実験室で。
「葛西教授、我々も石の持ち主を探しませんか?」
助手は言う。
「大丈夫だ。いずれは向こう側が全部集めるだろう。……むしろそれが狙いだからな。
……それに俺たちには、完全に力を解放した女がいる。それを鍛えれば大丈夫だろう」
「でも、鍛えるってどうやって?」
「……今、彼女がやっていることだろう」
と言うと、完全に自我を失った優菜が最新式の壁に自分の能力を使って壊そうとしている。
「あれで大丈夫なんですか?」
「……大丈夫だ」
彼は頷くと、葛西は不吉な笑みをこぼした。