不思議な少年と起こってしまった最悪な出来事
光はゆっくりと地上へ落下していった。
ある場所の木の上で急に光は消えそれと同時に、
「キャーーーーーー!!!!」
という悲鳴が鳴り響いた。
―――
木の下に落下した綾乃は、
「イテテテテテ……」
と尻餅をついていた。
そこに、
「大丈夫ですか?」
と尋ねる目が透き通った少年がいた。
先ほどの呪文のような言葉を呟いていた少年である。(1話参照)
「大丈夫です。
……ところで、あなたは?」
「名を名乗るほどのことは何もしてませんよ。
あぁ、あと、これ、落としませんでしたか?」
と言い、彼のズボンのポケットから綾乃の黒い眼帯が出てきた。
「あっ、それ、あたしのです。
ありがとうございます」
と言い、受け取り、早速左目につけ始めた。
「あの……、改めてお名前をお聞きしたいのですが……」
「あぁ、いずれまた会うと思うので、名前はその時に言います。
……では、失礼します」
と言い、彼は立ち去った。
―――
綾乃は家に帰り、テレパシーのようなもので、優菜に話し掛けた。
[優菜、大丈夫?]
[…………]
優菜からの返事は無かった。
―――
上空。
綾乃がテレパシーのようなもので話し掛けた数分後。
ベッドの上で寝かされていた優菜の手が、ピクリッッと動いた。
「……ん……?」
彼女は起き上がって、周りを見渡す。
「あたしは一体……」
―――
次の日。
綾乃はいつも通りに学校へ向かうと、後ろから大きな足音が鳴り響くのを聞き、少々寒気を感じた。
「おはよー!!!!」
とハイテンションで綾乃に挨拶をした少女――水澤清美――は、綾乃が通っている学校で唯一の友達である。
「ねぇねぇ、昨日、遊ぶ約束したのに、何で来なかったの?」
昨日誘拐されたなんて、言える訳がない。
「いっ……いろいろあったんだよ!」
「いろいろって、例えば?」
「例えば……、そっ……、そう!
急用だよ! 急用!」
「あっそう。まぁ、いいや。それよりさぁ、これ、見てよ!!
昨日、公園で見つけたんだけど、みんなに見せたら、なんか見えてないみたいなんだけど、綾乃は?
これ、見える?」
と言い、ポケットから何かを取り出した。
「見えるよ、水色の雫の形をしたイヤリングが、はっきりと」
「えっ、マジで!?
……ねぇねぇ、これつけてもいいかな?」
「いいんじゃない?
今のところ、あたししか見えないみたいだし、先生に見つかっても困るのは清美なんだから」
「何それ?
……まぁ、いいや。
つけたいからつける!!」
と言い、すでに彼女が開けたであろう耳の穴にイヤリングをつけた。
そして、2人は校門を抜けた。
―――
朝のHR。
担任の先生が教室に入り、
「えっと、急なんですが、転校生を紹介します。
入っていいよー」
と先生が言うと、ドアが開いて、転校生が入って来た。
その瞬間、女子たちのハートが突きぬかれ、
「キャーーーーーー!!!!」
という奇声を出す女子たちが続出した。
しかし、綾乃はそうは思わなかった。
それに、彼女には見覚えがあった。
昨日、木の下で会った少年だったからだ。
「北原龍也です。
よろしくお願いします」
―――
上空。
起き上がった少女は、こう呟いた。
「あたしは一体……誰……?」