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第八話 穢れた魔法と超能力

――――リオンside



「さて、では今日の授業は魔法使いについて行いたいと思います。

魔法使いとは~~」


父さん・・いや、僕らを捨てた男の真実に気が付いてから4年が経過した。


真実を知ったあの日父親に捨てられたショックでアリシアと二人で何日か

寝込んでしまって母さんにとても心配をかけてしまった。


何で倒れてしまったかについては隠す事が出来たけどそれと同時にあの日記の

内容を詳しく聞くことも出来なかった。


・・でもやたら人や街を避けた山小屋生活や街へ行く時最初にしていた顔や

髪を隠す・・"アロビアンスタイル"?

のことを考えると指名手配されていた件で辻褄が合う。


・・・もっともあれは逆に目立って"ホンマツテントウ"になってたけど・・・。。



ちなみにこの街や家の山では指名手配で怯える必要は無い。

授業で習ったけどここは白の国の隣、風の国で国境には近いけど指名手配は

白の国のみで適応されるもので風の国では無効だ。


一応ここ風の国であることを母さんにも教えてあげたのだけど

なんだかんだで結局家と畑から出ることなく相変わらずの

引き篭もり生活を送っている・・・。


それにしても白の国の地図を見て日記の逃亡記録から経路を推測したけど

町4つ、山5つは越えていることになる。


必死でお腹の僕とアリシアを守ろうと過酷な逃亡をしたであろう母さんに

言葉にならない感動と感謝で胸がいっぱいになった。




「~~~という訳で、魔法使いの血統というのは非常に高貴なもので、

今ではその血筋は数える程しかいません」


今日は"魔法使い"についての授業だったけど正直この"魔法使い"という

単語は聞きたくなかった。


魔法使いが高貴なもの?そんなはずはない。

あんな連中は悪魔のような奴等だ。



何故ならあの日記を見る前遊びで使っていた氷の魔法は父親の血によるもの

というのが分かったからだ。


母さんを捨て、抹殺しようとした男が高貴な訳がない。



教会に通って数ヶ月が過ぎたある授業で


『魔法使いには基本 火、雷、風、氷、水、光、闇とありますがその中で唯一

"氷"の魔法だけは現在仕えるのはアンドラダイト公爵家・・・いえ、今は

アンドラダイト家のエンディミオン・リ・アンドラダイト様のみと

なっています。ですから~~』


と先生の説明の中で日記のあの男の名前が出てきて、

そのエンディミオンがこの世界でただ一人"氷の魔法"を使えるはずなのに

僕とアリシアも氷の魔法を使う事が出来る。


別の授業で習ったけど魔法というものは授業で習って使えるようなもの

ではなく、また神様にたくさん尽して神様からご褒美として使えるようになる

"神聖術"とも違い、代々魔法使いの血を引くもの、魔法使いの子供だけが

その力を使えるというとても限定されたものだった。


また、その力はいろんな属性が使えるわけではなく代々の継承してきた

属性一つしか使えない。


ということはこの世で唯一氷の魔法が使えるこのエンディミオンが僕らの

父親で確定というわけだ。


日記には名前しか載ってはいなかったから同姓同名の別人の可能性もあって確証

はなかったけど公爵家だったということは日記にもあったからまず間違いない。


そこに思い至った時、僕とアリシアは氷の魔法を"穢れた魔法"と

呼ぶことにして使うことを忌避した。


母さんを苦しめた男の力など見たくなかった。だからあんなに

楽しんでやった魔法遊びもあれから一度もやらなくなった。


なによりもしあんなものが使えることが母さんにばれてしまったら

きっと悲しむに決まってる・・。


それに最近思ったんだけど日記の中での母さんの感じと実際の母さんの

感じがまるで違っていた。


日記の中の母さんは誰にでも分け隔てなく思いやり周りの人を

やさしく照らす月のような人で、

実際の母さんは常に僕たちのために畑仕事とか家事とか頑張ってくれてるけど

・・・日記の中のように同じ場所で働いていた使用人さんやコックさんの

手伝いを積極的にすることはなく、指名手配の件を考えても異常なまでに

僕とアリシア以外の人と話すどころか会うのでさえ避けてる人で

・・・まぁ・・その・・色々と残念だ。


多分これはあの外道エンディミオンに騙され、傷つけられ、さらには

殺されそうになったことから逃亡生活中に性格が変わってしまったんだろう。

性格があんなに残念に変わってしまうほどの辛い生活を強いられた母さん。


・・・くそっエンディミオンめ!やっぱり許せない・・・!!





「~はい、では今日の授業はここまでです。皆さん気をつけて帰るように。

皆さんに主の御加護がありますように・・・」


今日の授業が終わり、鞄に筆記具を仕舞っていると人影が目の前に現れた。


「おいリオン、お前今日の掃除当番代われよ。オレは今から親父の手伝いが

あって、母ちゃんと山に篭ってるだけのお前と違って忙しいんだ」

――――ドガッ・・――――


嫌味たらしげに喋りながら僕を蹴り飛ばしたのは始めてこの教会に来たとき、

母さんの罵倒をしたぽっちゃりした奴、イグル・サーテラス は蹴り倒された

僕を見ながら箒を叩きつけてきて笑いながら取り巻きたちと共に行ってしまった。


教会へ通うようになってからあいつはやたらと僕らにちょっかいや意地悪を

してくる。

なんでも父親が街一番の強者だとかでその息子である自分を皆が慕い、尊敬し、

ひれ伏すのが当然なのにそれをしないよそ者の僕が気に入らなくて教会や

街から追い出そうとしているらしい。


「リオン、大丈夫か?」

「リオン君…怪我してない?」

「まったく…あいつらときたら、親父が強いのをいい事に好き勝手

しやがって・・・!!」


倒れている僕に同じ教会に通っている子達が手を差し伸べてくれた。



教会の皆は表面上はイグルに従う…というよりあまり関わらないように適当に

いうことを聞いたりしているが皆内心ではうんざりしてイグルを嫌っていた。


イグルの父親、アーグル・サーテラスは確かに街一番の強者として有名だが

尊敬どころか街の皆は嫌っていた。

ある程度地位も持っているらしくその権力を乱用して市場の物を荒らしたり、

通行人に暴力を振るったり、滅茶苦茶をいつもしている。


数日前にはお店で急に暴れてお店の持ち主を牢屋に放り込むところを見たことがある。


しかも最近はイグルが『親父の手伝い』と称して街の悪ガキを集めてものを

壊したり店を滅茶苦茶にして遊んでいる。



数ヶ月前なんか僕の友達の一人のエリベルト君のお姉ちゃんがアーグルの家に

無理矢理連れ込まれて服がビリビリに破られて体のいたるところに痣だらけの

状態で逃げ帰ってきて、だいぶ時期が過ぎたけど未だに死んだような目で床に

伏せっていて当時のエリベルト君は授業中も食事の時もただひたすら泣いていた。


そんな訳でイグルとその父親のアーグルは街の皆から嫌われ、そして恐れられていた。



でも彼のお母さんラリサさんはとても優しくて教会に自分で焼いたパンを

届けに来る事もあって好かれていた。


しかもいつも街で乱暴するアーグルとイグルに代わって街の人に

「夫と息子が…大変後迷惑をお掛けしました」

と謝ってまわったり、壊れたものの修復をするなど多分あの二人のせいで

一番苦労しているであろう人だった。


しかも後で聞いた話だけどエリベルト君のお姉ちゃんを逃がしたのも

ラリサさんだったという。


あの事件の翌日ラリサさんがエリベルト君の家までやってきて泣きながら

地面に頭を擦りつける勢いで土下座して何度も

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・っっ!!」と謝っていたそうだ。



「本当に・・あいつらはなんで平気であんな事が出来るんだろう?」

「この前なんかオレの父ちゃんアーグルに殴られて目に大きな痣が出来てたし・・。」

「まぁそれはともかくリオン、今日はどうする?どこかで遊ぶか?」

う~~ん・・。今日は特に買い物する必要もないし最近母さんが栽培しだした

"モロコシ草"の肥料も昨日やったから大丈夫だろうし・・・


今日は遊んで帰っても大丈夫かな?



「返して!お母さんに貰った帽子返してよ!!」


これからの遊ぶ予定を考えていると教会の外で女の子の悲鳴が聞こえた。

…いや、この声は…っ!!


考えるより先に教会の外へ飛び出すとそこには泣きながら帽子を返すように

叫ぶアリシアと、帽子を持っていやらしく笑うイグルとその取り巻きがいた。


「返してよ!!それはお母さんが私のために編んでくれた帽子なの!!返して!!」

「はぁ~~ん、こんな毛糸の帽子がそんなに大事なのか?それじゃぁ・・・」


取り巻きからパスを受けたイグルは帽子を眺めながらニヤニヤ笑って帽子を

左右に引っ張り引き裂こうとしていた。

「や、やめて!!お母さんの帽子破らないで!!いやぁぁぁぁぁぁ!!!」


――――ビリィッ・・――――

「や・・やめろ・・・っ」

あの帽子は・・これから冬になって寒くなるからと寒がりのアリシアに

母さんが編んであげた帽子・・・


――――ビリリィッ・・――――

「やめろ・・・やめろっ!・・」

冬の寒さをしのぐ為に編んでくれたけど結局完成したのが1年後の真夏に

なってしまった・・けど、銀色の髪にとても似合うと喜んで着けていた

紫色のふわふわ帽子。


「やめろ!!やめろよ!!」

帽子の上から頭を撫でるとくすぐったそうにするアリシアが可愛くて・・・

――――ビリリリリリィッ・・――――



「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


――ドクンッ・・・・



その瞬間、世界が止まった。






「なんだ・・・?こ・・れ・・・?」


まるで目の前の状況が分からない。

アリシアもキョトンとした様な表情をしている。


目の前には動きの止まったイグルと帽子、そして全ての色がなくなった

世界がそこには広がっていた。


「おにいちゃん・・?来てくれてたんだ。」

僕に気が付いたアリシアが小走りで来た。

顔は涙でグチャグチャになってる。


「う、うん・・。それよりこの色のない景色ってなんだろう・・・?」

「とりあえず帽子を取り戻そう!今ならイグルも止まっているし私じゃ

背が低くて帽子とれないよぉ・・・。」

若干涙声のアリシアの言葉に従いイグルの手から帽子を取り上げアリシアを

いじめた怒りからついでに顔を一発殴っておいた。


そしたら殴った顔が奇妙に歪んで止まっていた。

本当に何なんだろうこれは?


「アリシア、大丈夫だったか?」

「うん・・私は特に叩かれたりしなかったけど・・・うぐっ・・

お・・お母さんの・・・帽子がぁ・・・っ」


帽子は破りきれることにはならなかったけどパックリ割れてしまって

無惨な姿になっていた。


「くそっ!僕が・・僕があと少しアリシアの声に気づくのが早ければ・・・っ」


悔しくてたまらなかった。

守らなければいけない妹を助ける事が出来なかった自分が情けなくて

無様でそんな自分に対して怒りがこみ上げてくる。


そんな事を思いながら破れた帽子を握り締めていると


―――――シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――

「え・・・!?」

「な、なに・・これ?」


空気の抜けるような音と共に破かれた帽子の破れ目が見る見るうちに

繋がりだしてあっという間に帽子は元の破れ目一つない

ふわふわの帽子に戻っていた。


「も・・・も・・もどったぁーーー!よくわからないけど帽子がもどった!

ありがとーお兄ちゃん!!」

綺麗に復元した帽子にアリシアは喜びまだ涙の後でグチャグチャの顔で

笑い僕に抱きついてきた。


「さ、さっきの・・・何なんだ・・?」




――――――ドゴッ…――――


「ほぉらもう破けっごあぁぁぁぁぁ!!!??」


僕が帽子の修復に混乱していると、今まで止まっていたイグルが急に動き出し

嫌らしく喋りだしたと思ったらそのまま顔をひしゃけさせながら後ろに

吹っ飛んでいった。

「い゛だい゛っ!!な、何なんだよ!!?いったいなんなんだ???」


突然の顔へのダメージに混乱して一人顔を腫らして泣きながら喚いていたが

周りの取り巻きもそんなイグルを不思議そうに見ている。


「イグルさん・・なんで急に顔を腫らしてるんだ?」

「それになんでさっきまで持ってた帽子があいつらの手に・・・?」


アリシアの手に再び戻った帽子に戸惑いながら指を差す取り巻き。

「そうか!リオン、お前がなんかやったんだな!お前らこのよそ者を二度と

この街に来れない様に徹底的に痛めつけてやれ!」


イグルの命令と共に取り巻き達が一斉にこちらに向かってくる。

僕一人ならともかくアリシアはこの状況ではまずい・・・っ!


「アリシア!逃げるぞ!!」

「う、うん。お兄ちゃん」









「はぁっはぁっ・・はぁっはぁっはぁっ・・なんとか・・・逃げ切れた・・・」

「そ・・・そうみたいだ・・・ね・・・」

教会から街を駆け巡り、完全にあいつらの姿が見えなくなったのは家のある

山の入り口に着いた頃だった。


「そ・・それにしても・・・・あのイグルが急に止まったのといい帽子が

元に戻ったのといいなんだったんだろう?」

「う~~ん・・・。もしかして魔法なんじゃないかなぁ?」


「いや、魔法はないだろう。あれは使うのを完全に封印したしなにより

あの感じは"穢れた魔法"を使った時とは違ったし・・。」


それに魔法だったとするとあの男、エンディミオンは氷の魔法しか使えないと聞く。

さっきの帽子が元に戻るのやイグルが止まるのはどう見ても氷の魔法ではない。

そうなると僕はもう一つ魔法を持っていることになる。

それにあの色なし空間で自由に動けたのは僕とアリシアだけ。


つまりは氷の魔法使いの血とは別の魔法使いの血を継いでいることになる・・。



・・・つまりは母さんが魔法使いということだ。


「・・・でもお兄ちゃん。お母さんが魔法使っているところなんて見たこと

ないしお母さん魔法どころか神聖術すら"超能力"といって認めてないんだよ?」


「確かにそうなんだよなぁ・・。あの母さんが魔法使いとは思えないし・・。

案外本当にさっきのは超能力かも・・?」






とにかく人を止めたり帽子を治したりするのを"超能力"と呼ぶ事にして

アリシアと今日の出来事を話し合いながら帰路につくことにした。

PV:400,804

総合評価:7,341

……これは何かの夢だろうか?夢だな。夢に決まってる・・・っ!


感想は少し返信が遅れるかもしれませんが誤字脱字等を先に返信させて

頂きます。すみません!


追伸:イラスト描きたい!でも描く時間がぁ~~~~!!

小説よりイラスト先に描いていいですか・・・?

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[良い点] 9/83 ・エンディミオンさん不憫すぎるw
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