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第七話 鮮血のエンディミオン

今回はかなりハードな話の上、残酷描写があります。

そういうのが駄目な人は戻るをお願いします。


エンディミオン視点です。

私は白の国アンドラダイト公爵が息子、エンディミオン・リ・アンドラダイト

・・・いや、もう白の国の公爵ではなくただのエンディミオンだったな。


「ふぅ、今回は2万・・か。全く命を無駄にする馬鹿ばかり・・」

精神を集中させ後方に魔法で作った氷の矢を3万本ほど構築し空に停滞させる。


「せ、鮮血のエンディミオンだーー!」

「あいつを殺せば国王様から多額の報酬が貰えるぞ!!」

「白の国の反逆者に鉄槌を!!」


「黙れっ!!」


伸ばした手を一振りし、後方の氷矢が敵陣に向かって一斉掃射された。


「うわぁぁぁぁぁ!!」

氷の矢は兵の一人の腹に突き刺さり


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

一人の足を吹き飛ばし


「ごぉぉぉぉぉぉっ!!・・・・・」

ひとりの顔面を深く抉り――――



殺して

「・・・だ・・・せ・・・っ!」

殺して殺して殺して

「・・出せ・・・出せよ!」

殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して

「・・おうを・・・国王をだせ!!」

殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して

「出て来い国王!!貴様をっ・・!私の妻、ソフィアの仇を討ってやる!!」


いつしか私は"鮮血のエンディミオン"と呼ばれていた。






7年前、私が国王に王宮へ呼ばれているときソフィアが妊娠していると

聞き飛ぶようにアンドラダイト家へ戻った時にはその惨状に呆然とした。


家にソフィアの影はなく残されたのはドアが乱暴に破壊され、

グチャグチャになった彼女の部屋だけ・・・。


「他に婚約者がいるとはどういうことだ!!お前をそんなロクデナシに

育てた覚えはない!!」


「あんなにいい娘・・ソフィアちゃんの心を踏みにじるような事をして・・。

私もうお父様とお母様に合わせる顔がありません・・」


家に戻って早々父上と母上にどういうことだと問い詰められたが、

逆にこちらがどうなっているのか分からなかった。

ソフィアはいない、父母上は見に覚えのないことを問いただしてくる、

屋敷に知らない連中が我が物顔で居る。


どうなっているんだ・・・。



事件の顛末は何故か私の婚約者を名乗るゴルトー伯爵の娘ローズが

「あの女は賊とつるんでエンディミオン様を誑かしこの公爵家を

襲撃するとんでもない悪女だったのですわ!

お腹の子も賊と成した子ですわ!」

とか勝手に喋っていたがあんなものは参考にすらならなかった。


そもそも私の婚約者を偽っている段階で既に信用には値せず、

それもあのソフィアが賊と一緒になる事はまずあり得ない。


というかこの惨状の原因がこいつとしか思えないのでソフィアを

殺そうとしたことでここで始末しようかとも思ったが、

事の状況も知らないまま動くのはまずいと思い何とか耐え切った。



念のため使用人の何人かにも聞いてみたが同じ回答しか返って

来なかった。


だが、

「エンディミオン、私も独自で調べたけど例の事件、明らかに不自然よ。

いつもは厳重のはずの門の警備が近くを通りがかった平民の話では

やたら少なかったそうだし当日当番でなかった使用人がどういう訳か

屋敷にいたのよ?裏で何かあったに違いないわ」


エンディミオンの古くからの専属メイド、セリアが本当の当日の

状況と不審点をいくつか教えてくれた。


彼女は屋敷で一番ソフィアのことを気に入っていて

「ソフィアはもう私の妹よ!エンディミオン、ソフィアが欲しければ

まず私を納得させなさい♪」

というほどだった。

それだけに今回の事件の胡散臭さを一番に感じ取ったのも悔しいが

彼女だった。



屋敷全ての者に教会の神聖術士の"偽り読み"によって事件の

全貌が明らかになった。

頑なに"偽り読み"を受ける事を拒んだ使用人が何人かいたが下半身を

氷付けにし動きを止めさせ無理矢理"偽り読み"をさせたらペラペラと

喋りだした。




ゴルトー伯爵の娘ローズがアンドラダイト家に押し寄せ私の婚約者を

名乗り、偽の手紙と魔法印、アンドラダイトのペンダントを使って

婚約者の証明を突きつけそれを見た両親は困惑、ソフィアは泣き崩れ

そのまま部屋に篭ってしまった・・。


どうやらローズは本気で私の婚約者になりたいと思ったらしく、

その際に本当の婚約者で私の子を宿していたソフィアを忌々しく思い

彼女を襲撃した。

その際、襲撃をより確実にするためにアンドラダイトのあまり関係が

深くない使用人や庭師に賄賂を贈りソフィアを襲撃するよう命令し

私の両親からも裏切られたと思ったソフィアは命からがら逃亡した。


そしてローズ及びゴルトー伯爵は未だにソフィアを賊の一人として

指名手配している。



話を聞き終え、

「最後に、・・・言い残すことはあるか・・?下衆・・・」

「ぼ、ぼっちゃん!私達は正直に全てを話したはずだ!!

助けてくれ!!仕方なかったんだ!あのローズとかいう貴族に脅されt」


「あら?貴方達がローズからお金を貰って嬉々とした表情でソフィアを

襲ってた所を見ていた娘がいるのだけれど?」


「う、うそだ!見間違えd」

「黙れ!!」


下衆が喋り終える前に氷の矢を四方八方から突き刺し処刑した。

奴の悲鳴が上がる前に首に一本突き刺したので不快な声が聞こえなくて済む。



「くそっ!全てはあのローズとかいう奴の仕業か!これから行って奴の

屋敷ごと凍らせt」

パーーーン

「冷静になりなさい!エンディミオン!!ソフィアがいなくなって気が

立っているのは分かるけどさっきの処刑にしたって感情を怒りに任せすぎよ!

それにこの事件はまだ謎の部分があるのを貴方理解してる?」


セリアに頬を叩かれ、ふと冷静になって考えてみる。



――――謎の部分・・?・・・・っ!!



「魔法印か!?」

「そう、それにアンドラダイトのペンダント。

まずこれを一介の貴族が持っているのはあり得ないし、また王宮の公爵の

部屋から盗むのなんて王宮結界で不可能。

魔法印なんてそもそも陛下が管理しているものだし盗むのは無理。」


アンドラダイトのペンダントは公爵部屋の箱に仕舞っているはずでそれにも

封印魔法がかけてあって公爵家縁の者か陛下以外はまず箱に触れる事さえ

出来ないはず・・。


魔法印など私ですら触った事もない。

昔に父上が書面に押印したものを見たことはあったがあれは押印後印が

個人の魔力色と同じ色になり押印後契約内容や制約内容を印の本人が

述べれば魔力的拘束によって縛り付ける事が出来るというものだ。


そんなものを自由に盗める人物といったら・・・。

「これは・・・相当バックにとんでもないのがいそうね・・」

「ああ・・。王宮に忍び込み、王宮結界や封印魔法すらいとも容易く破壊

してしまう程の者・・。少なくとも魔力総数では公爵クラス・・

いや、王宮クラスかもしれん・・」

「とにかく今はソフィアの捜索に力を入れるべき。

私は裏で誰が動いているのか調べてみるわ!」

「わかったセリア。そちらは頼んだぞ!」


―――どうか、どうか無事でいてくれ・・・ソフィア・・・








「おーほっほっほっ!先日私の使いからあのエンディミオン様を

誑かした雌豚の死亡が確認されましたわ!残念ながら死体は焼き

焦げて残ってないようですけれどこれで安心して私と結婚

できますわよね、エンディミオン様。しかもあの豚最後まで

エンディミオン様から盗んだ指輪をみずぼらしく抱えながら~」


1年後、ソフィアの死亡が伝えられた・・・・


ローズの父、ゴルトー伯爵にソフィアについてはそちらで動くな!

決して手を出すな!と命じたにも関わらず・・・。


ローズが汚物でも触るかのように摘まんでいる指輪はソフィアに

婚約のしるしとして渡したもの・・・。


「そうそう、そういえば私の父ゴルトーは伯爵から公爵に格上げされ

ましたわ。ただ残念なのがアンドラダイト家は賊を擁護したことで

伯爵にさげられてしまいましたけど・・・

それはたいした問題ではありませんわよ!

私とエンディミオン様が結ばれれば―――」


シュゥゥゥゥゥーーーーー


先ほどまでペラペラと喋っていたローズの口は凍える風とともに

大きな氷で塞がれていた。


「誰か、こいつを牢に放り込め。

これ以上こいつの顔を見るのも声を聞くのも不愉快だ。」



アンドラダイト家の者は皆絶望の表情をしていた。

ソフィアと同じ歳のメイドは泣き崩れ、仲の良かったシェフは壁を殴りつけ、

父上は虚空に向かって

「ほぉ~ら~・・。おじいちゃんですよ~・・。あはははこの子は可愛いなぁ。

流石は我が息子とソフィアの子だ~~」と焦点の遭わない目でぶつぶつと呟き、


あんなに優しかった母上は

「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

と叫びながら狂ったように草を掻き毟っていた。




「・・・もう予想はついてるかもしれないけどこの事件の黒幕は―――」


「陛下、だろ?」


「・・・・・ソフィアのことは・・残念だったわ・・っあと少し!

あと少し私達が早く彼女の居場所を突き止めていればっ・・・!!」


セリアは悔しくて、悔しくて、ただ地面に崩れながら泣き続けていた。

実際ソフィアの乗った馬車襲撃現場の山までセリアは辿りついていた。

あと少し、ほんの少し早ければ襲撃者を蹴散らしソフィアを救えた

かもしれなかった。


「なんであの娘が!なんであの娘がこんな目に遭わなくちゃいけないの!?

貴方との子を産んで幸せな家族として過ごす未来がもうすぐそこだった

あの娘がなんでっ!!」


ソフィアは失われてしまった・・。私のせいだ・・。

私はソフィアを守れなかったのだ・・。

一番大切な人。一番側にいて欲しい人。一番笑っていて欲しい人・・・


初恋の人であり、

最初の出会いから彼女と関わる内に美しいものを見せてくれた―――



春はうっすら色付く花々を眺める彼女が可愛くて、

夏は太陽と共に笑う彼女が眩しくて、

秋は月光が照らす彼女の姿が美しくて、

冬は彼女の温もりとやさしい香りが暖かくて・・・


でも、もう彼女は・・・い・・な・・・い・・・?



――――なら、


「・・・セリア、泣いている暇があったらさっさと事の顛末を話せ」

「エンディミオン・・。貴方は泣けないの!?あんなに好きだった

ソフィアが死んだっていうのに・・・・・ひぃっ!?」


セリアが私の顔を見た瞬間恐怖し悲鳴をあげた


「さっさと話せ。セリア」

「あ・・・あ・・あ・・あ」



早く話すよう命じたが終始セリアは呻き声を上げるだけだった。





事件の真相はこうだった・・。


銀髪の娘(ソフィア)の噂を聞いた国王が

『それは珍しい。是非ともワシの側室としたいものだ』といったが既に

アンドラダイト家に身請けされており、さらに公爵の息子と恋仲にあると

なると手は出せない。


だが王は『ワシはその銀髪の娘が欲しいのだ!公爵のガキなどそこら辺の

女でもくれてやればよかろう!』と我侭を言い、

それをこっそり聞いていたゴルトー伯爵が自分の娘がエンディミオンに

惚れていて、銀髪の女は適当に盗賊に内通しているとでも罪状を出して

公爵家から放り出された所を誘拐し楽しむだけ楽しんで平民だから

その辺にでも殺して捨てればいい。


エンディミオンには自分の娘を惚れさせるよう禁断魔術の"惚れ薬"でも

飲ませればいいと浅はかな進言をした。そして国王はそれを承諾。



その際に婚約の証として必要だろうと公爵の部屋の結界を解除し

ゴルトー伯爵に家伝のペンダントと別れ文を偽造し証拠として魔法印を

押して公爵家に乗り込む口実を与えた。


早速エンディミオンの飲み物や食事に惚れ薬を仕込み計画は完璧だった。

だが、彼のソフィアを思う心が強すぎ、薬の効果すら押しのけていたため

ゴルトー伯爵、国王どころかエンディミオンも知らぬ間にこの計画は

瓦解した。


だが、もう一つの計画により公爵家に婚約者を名乗って乗り込んだ

ローズとゴルトー伯爵の手のものや王宮の手の者によってソフィアは

襲撃され命からがら逃げ出した。


そしてこの時、王宮に一番見られてはいけないものが発覚してしまった。

ソフィアが逃亡する際、追手から逃れるために古代魔法"時間制御"を発動

してしまった。



彼女を公爵家で引き取った際に孤児院の院長が内密にと教えてくれたが

何と彼女はこの白の国、近隣の風の国、海の国、火の国、闇の国全ての

元となった古代王国皇帝の末裔。


全ての国の王宮魔術の頂点に君臨する皇帝の血筋だったのだ。


そして代々その家臣の末裔である院長が王国分裂後、

皇帝の末裔をあの孤児院でひっそりと見守り育てていた。


それを聞いたときは驚いたが

「くれぐれも、この事は国王には内密にお願いいたします。

この事が公になれば今は失われた古代魔法"時間制御"をどんな輩が

狙ってくるか分かりません。どうか・・」

と院長に念を押された。


それにも関わらずソフィアの血筋に王宮が気づかれてしまい、

国が古代皇帝の者に乗っ取られるかもしれないと思った王は

アンドラダイト家が知らない間に国全域にソフィアを指名手配し

見つけ次第拘束、若しくは殺しても構わないと触れを出した。


そしてソフィアは王国全土から追われる中1年もの間お腹に子を

宿しながら逃げて・・・逃げて・・・逃げて・・・




――――――殺された。





「結局は・・・あのローズも踊らされていた・の・か・・」

「エンディミオン・・・」

「セリア、少し王宮に手紙を出して欲しい。頼めるか」

「・・・ええ。分かったわ」




ソフィアの・・・死体もなく遺品しか弔えない葬式が終わり、

数日が経った。





「セリア、例の手紙に国王はなんと?」

「・・・『せっかく良いおもちゃが手に入りそうだったのにゴルトーの

奴め殺すとは・・使えないな。』・・としかいいませんでした・・。

まるで・・ソフィアを・・・公爵家に・・アンドラダイトに泥を塗った

この事件をなんでもなかったように・・・・っ」


「・・・・そうか・・・」


「エンディミオン・・・・本当に・・いいのか・・?」

「父上こそ・・。せっかくの代々のアンドラダイト家を捨てることに

なるのですよ?」

「ふっ、構わんさ。孫を殺された恨みとアンドラダイトの地位。

比べるまでもない。それにこの国は永くは持たん。この地位に

いるからこそそれがよく分かる・・。」


「エンディミオン・・本当に・・いいのね?」

最後にセリアが確認をとる。

「ああ。もう失うものなど何もない。」



そして私達は


「「「国王に血の報復を」」」



白の国に宣戦布告した。






戦争会戦から5年が過ぎた。

最初は規模の小さな反乱しか起こせなかったが、いつしか平民の集団が

共に闘いたいと志願してきて今では白の国と全面戦争が出来るまでに

発展していた。


元々国王の腐敗した王政に国民も不満を持っていた。

蔓延る汚職、年々増していく税、貴族達の権力を使った横暴に不満は

高まりアンドラダイトが反乱を起こす前に既に各地で反乱が勃発している状況。

まさに父上の言った通りだった。


度重なる闘い。

最初はただ私と父上の魔法で敵に向かい氷の矢の一斉掃射でなんとか

勝利を収めてきたがつい2年前のヨーホークの闘いで父上は敵の矢に射られて

しまったが全身矢だらけになりながら最後の最後でまさに全身全霊を込めた

氷の魔法で一面の王宮軍を凍結させ壊滅させて最後に狂ったように

笑いながら逝った。


アンドラダイトの軍は誰でも、平民だろうと誰であろうと受け入れてきた。

まぁ、ならず者や盗賊なんかは追い払い、成りすましている賊は永久に

凍結させてやったが。


ソフィアにも言ったことがあるが身分など気にしているようでは

今の時代上には立てない。身分関係なく優秀な者を立たせる、この白の国を

滅ぼした後そんな者達で作り上げる・・そんな国を作って彼女に見せて

やりたかったが・・もう彼女はいない。


「セリア、私が死んだ後は頼む。

新たな国を・・ソフィアのような優しい国にしてくれ・・」

「もう・・。縁起でもないこと言わないの!私は貴方の姉の様なものよ。

ちゃんとここに帰ってきなさい」


「ああ、・・・国王を・・奴の首を切り裂くまでは・・・・・」



今日も私は戦場を血で染め上げる。

挿絵(By みてみん)

結構急ぎで書き上げたのでまた落ち着いたら改定したいです。


次回は一気に数年飛びます。


挿絵、下書きですけど後ほど書き直してUPしたいです・・。

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