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第六十二話 色の消える世界

side ソフィア



「もうやめるんだソフィア!」


突如私の最高にハイタイムを遮ったのはやたら豪華そうな服を着た…遠目及び夜闇でよく見えないが…恐らくいけ好かないイケメンの貴族の男だった。


「……ぁ?テメェもこのケバケバ糞女の仲間か?…けっ!イケメン貴族様の王子様のご登場でござい。全ては私たちが正しいのよってか?調子乗ってんじゃぁねぇぞこの餓鬼…」


ゆっくり歩いて向かってくるその風貌からどうやら年は20代前半のまだ青臭さが残る男のようだ。……それより重大な問題がある。口では結構強がっているがこの男が現れてから体がビクとも動かないのだ。


こいつからもあの黒魔法か闇魔法か知らないが何らかの攻撃を受けているのか?…とも考えたが、特にそういった気配は無い。

尤も目下最大の脅威であるろー…ろー…ロース?とかいう頭お花畑のヤンデレケバ女も現れたイケメン野郎に目線が釘付けで動いていないのだが。



「……君は…変わり果ててしまったねソフィア……これ以上…罪を重ねるのはやめるんだ……」


「誰だ…お前?変わり果てたも糞も差ほど変わってねぇよ。毎日鏡を見ているし。そもそも罪ってなんだ?このロースをぶん殴ってるのが罪か?」


…変わり果てた?どうやらこいつと私は面識があるらしい。だとしたらどこで会った?この王都に住みだしてからか?いや、この3年間はメイド美女☆ソフィアだったから違う……デレゼ村のすに…スニー…スニーカー?の仲間?戦闘能力的な意味合いで言えば確かにあの時の方が強かった気がするが変わり果てた程

弱くなったつもりはないし……白の国関係者のロースの仲間ということはヒーズタウンの戦争の時に会っているのか?…しかしあれは気分的にハイになり過ぎて目に付いた白の国兵は一人残らず殺しつくしたし……確かにその前と比べると随分殺戮癖が出来てしまって変わり果てているだろうが…マジで誰だこいつ。




「そうだ…私は君を迎えに来たんだよ。……私だよ、ソフィア」


月明かりに照らされたその顔は、私の愛しいリオンと瓜二つであった。

そして、私の体は、完全に動かなくなった。





side ???



『エンディミオン…様……』


まるで水面を通しているかのように映る視界の中に、あの方が…エンディミオン様がいる。

その姿を見るだけで心が跳ねると同時に、真冬の吹雪のように心が冷え上がり、リオンとアリシアごと私を殺そうとしたエンディミオン様への恐怖と、身勝手な浅ましい思いで彼に迷惑を掛けた罪悪感と、ついに見つかってしまった絶望感に、私は全身を氷漬けにされたように動けなくなった。


「…私が君に最後に伝えた言葉は何だったか覚えているかい?」



それは…『王都の仕事をすぐに片付けて帰ってくる。待っててくれ、ソフィ―――



「さようならソフィア。やはり君では妻は務まらない―――だ」


――――っ!


「平民の君では公爵たる私の妻は務まらないんだ。それは君も分かっていたはずだ。私は君を慰み物として扱っていたのに勝手に勘違いをして私の妻となったと思い込んで、私の父を、母を誑かして公爵夫人の座を得ようと画策した……本当に浅ましいよ。君の洗脳が解けた父は自害されたよ。あんな娼婦に騙された

など屈辱の極みだ、と残してね。母は気が狂って未だに床に臥せっている」


……そ……ん…な……。

公爵様が……自害…?婦人様が……床に臥せっている…?


じゃぁ…今まで私がエンディミオン様の前から逃げ出したのは…彼の幸せを祈って逃げ出したこの(ばしょ)は何だったの?


…こんなはずじゃなかった……。

私には…身勝手な思いでもエンディミオン様との絆であるリオンとアリシアさえ居ればそれでよかった。


なのにその裏で何人もの人々を不幸にしていた。


「…本当に君はどれだけ私を不幸にすれば気が済むのだい?おまけに…」

「お前がエンディミオンかぁぁぁぁーーー!!母さんを捨てた最低の男がこの上母さんに何をするつもりだぁぁぁ!!!」


今までに見たこともない憎しみに顔を歪めたリオンが氷の刃を付きたて一瞬でエンディミオン様に肉薄し剣を振るったが、エンディミオン様の横から現れた何かに剣は弾かれ、リオンは胸倉を掴まれた。彼の、息子に対してまるで何の感情も感じられない目を見た瞬間、私は彼が何を言おうとしているのかを理解

出来てしまった。……心の拒絶とは別に。



「二匹も……ローズとの結婚に邪魔な塵を排出して……本当に不愉快だ」






私の―――世界から――――――色が――――――消えた――――――――




「ローズ、苦しかったね。もう大丈夫だ」

「エンディミオン様…私苦しかったわ…痛かったわ…」

抱き合うエンディミオン様とローズ嬢。


――――知らない―――


「っぐ…放せ!この最低男!お前なんか…お前らなんか知らないからもう僕達を放っておいてくれ!!」


「煩い塵め…。危険分子たる貴様を野放しにするはずないだろう。貴様もこの娼婦の血が流れているとはいえこのエンディミオンの子であるなら少しでも父の役に立とうとは思わんのか」

「誰が…お前みたいな…お前みたいな…母さんみたいな優しい女の子を悲しませて苦しませて泣かせる奴なんかに!くたばっちまえ!!」


「何て口の悪い…私の養子にしようかと思ったけどやはり汚い血が流れている塵は処分したほうが良さそうね」

「そうだな。心配しなくとも皇太子なら私と君で作ればいい」

「やぁん…エンディミオン様ったら…」

黒いナニカでリオンを縛り付けて、ローズ嬢と抱き合いながら互いの体を弄るエンディミオン様。


―――――見たくない――――


「いいことを思いついた。ソフィア、君にはべジャン陛下から魔物を生ませるよう命令を受けている。今召喚したオークと存分に愛し合いたまえ。浅ましい君にはとても似合いだ。さぁそれを肴に愛し合おう、ローズ」

「素晴らしいわエンディミオン様。さぁ下女、貴女の夫はこの醜い醜いオークよ!」

「プギィィィィィィーーー!!」


「っやめろっ……母さん!母さん!!母さん!!」


のしんのしんと地響きを立てながら、舐める様に私の体を眺め迫るオーク。



―――――聞きたくない―――――――



そして私の体はオークに抱き上げられて……犯され





「「―――ると思っていたのか?」」



私の体は……勝手にオークの腕を踏みつけ、頭を踏み潰して飛び上がると未だローズ嬢と深いキスを交わし体を弄りあうエンディミオン様の顔面に向かって腰に挿していた鉄の筒、だぶるこんてんだーを逆手に持って、何の躊躇いもなくその鈍器で殴り飛ばした。


そしてリオンは、氷の剣で私に迫っていたオークを針山のように串刺しにして殺し、エンディミオン様とローズ嬢に向かって氷の矢を掃射した。



「そうか…テメェがエンディミオン…か。さよなら、君では妻は務まらない…だぁ?確かにテメェみたいなヤリ○ンにこんな献身的美少女なんざ向かないだろうな。お似合いだぜテメェ…そこの糞ビッチと。それといけ好かない貴族様の公爵が自害?愉快だね!糞公爵夫人が床に臥せった?そのまま死ねばいいのに。貴族王族金持ちなんかさっさとくたばっちまえ!その方が市場にプールされる金も増えて我ら平民万々歳だぜ!」

「そうだ、お前みたいな屑に母さんは勿体無い!お前はそこのケバいおばさんと勝手に愛し合っていろ!もう僕達を巻き込むな!!」

「いいや、リオン。こいつらは先に私達に手を出してきたしまた見逃すのは面倒だわ。ここで二人仲良く始末して闇に葬ってくれようぞ!ふはははははははは!!」


「……いや、もう放っておこうよ母さん……というかその笑い方と言い方だとどちらが悪なのか分からなくなっちゃうよ……」





「ああああああ!エンディミオン様!!……っこの下女!よくも私のエンディミオン様の顔に――――っ!?何これ!!」

ローズ嬢が私に殴り飛ばされたエンディミオン様の顔を見て異常な悲鳴を上げた。



「だ…誰なのよコレ!!?エンディミオン様じゃないじゃない!!」

未だ殴られたショックで地面に蹲るエンディミオン様の顔には大きな罅が入り、一部はまるで割れた陶器のように剥がれ落ちて、別の人間の顔がその中から覗いていたいる。



……エンディミオン様…じゃ…ない…?


なら本当のエンディミオン様は…一体……。






「お母さん!お兄ちゃん!!」

「ソ…フィ…ア……」


突如大通りに響き渡った声に振り向くと、そこには最愛の娘アリシアと……目に涙を溜めたエンディミオン様がいた。


永い間待っていてくれた方々ありがとうございました。そしてすみませんでした。

いつまた書けなくなるか分かりませんが書けるだけ書いてみます。

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