第六十話 クーデター
長らく長らくお待たせしました!
ちょっと前のお話が変わってます。すみませんでしたー!
意血病出そく死、未だなんとか健在であります!
side エンディミオン
それは突然のことであった。
王都に響きわたるのは歓声でもって賛歌でもなく、恐怖の絶叫と絶望の悲鳴。破壊される街、暗黒の煙を立たせる業火。
そんな中を私とアリシアはーー
「ん?いたぞ!いたぞ-!エンディミオンの野郎がいたぞ-!」
「「うるさい!今何時だと思っている(の?)」」
大混乱の王都から私達を見つけて仲間に報せるべく叫んだ男に同時に氷の矢を放ち永遠に黙らせ、再び第四区画目指して駆け出す。
「しかしこのタイミングで反乱が起こるとは…」
白の国による王宮の襲撃からまさか一晩も経たないで今度は先の白の国と内通していた反逆貴族がクーデターを引き起こしたのだ。…これが白の国が裏で手を引いていないと誰が言えるのであろうか?しかも反乱軍はベラストニア戦争後の襲撃と全く同様の現れ方。則ち王都の中心街に突然として現れたのだ。…風、水両国の中立地である孤島に包囲されて脱出不可能であるにも関わらず。
「た、助けてくれっ!ひぃっ」
「殺せ殺せ!皆殺し―――「こ…このアリシアの前で街の人を殺すなど生意気な貴様等は…この…この…モンキーなんだよー!」へぶっ!?」
「いやだ…いやだぁぁ!助けてお父さん!お父さん!」
「おらおら小娘!テメェは今日から俺様の性奴隷にな―――「下郎!何の罪もない民への殺戮…しかもアリシアと同じくらいの年齢の少女への暴行、断じて許さん!……そしてアリシア、その悪役っぽいセリフは…」ごふっ!?」
「…あれは…銀の英雄エンディミオン様だ!エンディミオン様が助けて下さったんだ!」
「銀の王子様。…格好いい。」
「おい!我らもエンディミオン様に続くぞ!我らで英雄と共にこの街を守るんだ!」
途中風の民に襲いかかる反乱軍を私は氷の矢で薙払い、串刺しにしながら。アリシアは氷の巨大な金槌で吹っ飛ばしながら駆け抜けていたらどうやら助けた民達が私とアリシアを先頭に続き一個師団を形成してしまっていたようだ。
「ぁあ?何の力も武器も持たない平民ごときがこのガグブー子爵の兵団に楯突こうなんざ100年はえーんだよ!いくぞテメェら!男はエンディミオン共々皆殺し、女は捕らえて死ぬまで俺達の玩具だ!クヒャハハハ!」
そう、反乱軍の男が豪語するように襲われていた民達は敵と違って婦女子が多数を占めている上に武器すらないのだ。これでは反乱軍を退けるどころか自らを守ることすら出来ない。
…だからと言って全員を守りながら私だけで戦うなど到底不可能。しかも民に逃げるように説得しても周りを見渡せばどこもかしこも火の海に黒煙、反乱軍が徘徊する戦場であり私と共に戦った方がまだ安全であると聞いてくれない。
―――それどころか私と共に闘い死ぬのなら本望と言う者までいる。
「おらおらエンディミオン!どこ見ていやがる!野郎共やっちまえ!」
「ひゃははは!俺はそこの女を頂くぜ!」
「子供を殺すのは楽しいなぁ~。あの未来の希望を絶望に染めてやるのがなんとも痛快なんだよ。そうは思わないかい?ボク?」
「――――っいかん!」
「…からだは…身体は氷で出来ている」
私が前方の反乱軍に気をとられて側面から攻めてきた敵に急いで対処しようとしたとき、アリシアの声が戦場に響き渡った。
「あ?身体は氷だぁ?何とち狂ったことほざいてやがる小娘。…まぁ顔はいいな。喜べ、貴様はこの俺様の奴隷としてやる。だが逃げないようにその邪魔な足は切り取らせてもら――――っ!?ぎゃぁあああ!!足が!俺の足がぁ!」
アリシアに目を付けた敵がその凶刃でアリシアの可愛らしい足を斬りにかかり、全力をもって防ごうとしたが、突如地に蹲って倒れ、足を―――足首から先が血まみれになった足を抱えてもがき苦しみ出す。
―――これは……一体?いや、男の足下に転がっているのは……氷の剣?
「血潮は天使、心はクリスタル…」
「なにしやがったこの餓鬼ぃぃぃぃ!」
私の驚愕も置いて敵の後続群が弓を構えてアリシアに放つ。それを―――「ロリッ……アリシアス!」右手を掲げそこから出現した蒼く輝くクリスタルの花弁の防壁が放たれた矢を逆に粉砕するかの如くアリシアを守る。
…そして詠唱はまだ続く。
「幾たびの戦場(お布団)を越えて完敗。ただの一度の脱落もなく、ただの一度の解放もなし…」
完敗…?脱落…?そして……解放? まさかアリシアは何か呪いをかけられてそれから解放されていないのか!?そうか、先程の悪役のような言もその呪いの影響―――
「抱き手は一人、布団の中央で安眠に浸かる。ならば私は…この体は…」
「いつまでもブツブツ呟いてんじゃねぇ!野郎共エンディミオン共々氷魔法の餓鬼をぶち殺せ!」
「…お母さんの……抱き枕だった。」
瞬間、私もアリシアも風の民も反乱軍も、この戦場の全ての者は眩い光に包まれ―――次に目を開いた私達の目に飛び込んできたのは――――氷の城だった。
まるで巨大なクリスタルを積み上げて造り出されたかのような城壁。堅固に閉ざされた城門は先程アリシアが出現させた花弁の防壁とは比べ物にならないほど分厚く、蒼い蒼い海の如く薄らと青い光を威圧感と共に見る者に感じさせる。そして空を突き刺す槍のように高く高くそびえ立つクリスタルの城は見る者を魅了するような怪しい輝きを放っていた。
「…な、なんなんだよこれ!?何で一瞬で城が出来てんだよ!」
「野郎共落ち着け!ただ城が出来ただけじゃねーか!相手はエンディミオンを除けば腰抜けの男と俺達のモノになる女、あとは餓鬼共だけだ!」
「な、なんだ…脅かしてくれるじゃねーか小娘が!」
……これは…もしや民を非難させるために氷の城を築いたのだろうか?確かに優しいソフィア……いや、アリシアらしい考えだが……この敵軍に囲まれた状況では民が城に非難するまでに時間が掛かってしまい被害が出る可能性、そして非難してからも街が炎に灼かれるこの状況では城の強度が強くても時間稼ぎにしかならない。
だが折角アリシアが生み出したチャンス、これを生かさなくて何が父親であろうか。そ、そうだ。ここでもしアリシアの造り出した城をあっと驚かせるような活用をして民全員を救い出したら……『お父さんカッコいい!流石アリシアのお父さん、大好き!』
と微笑んで私の頬にキスを………よし!やろう!!絶対にこの反乱軍たちを全滅させて風の民を救い出しアリシアにカッコいい所を見せよう!……気分が良い。
なんだか俄然やる気が湧いてくる!こんな気分になったのは剣の大会でソフィアに格好いい所を見せようとして優勝した時以来だ。
…ところでふと思ったのだが先程の詠唱に氷の城の要素が無かったような気がするのだが…。
だが、私は勘違いをしていた。そしてアリシアの氷魔法のポテンシャルの限界を勝手に判断していた。
「ここに在るものは全て氷。H2O、要するにただの水。貴方達が本物の兵隊と言うのならそのことごとくを凌駕して叩き潰そう。…いくぞエンディミオン…あ、間違えた。お父さんもう敵じゃないから別のにしないと…。そもそもお母さんは『この詠唱を唱えて初めて〝無限のかき氷機〝は完成する!』…って言ってたけど普通に無詠唱で出来たんだけど…やっぱりお母さんだからかな?…お母さんだからなんだろうね…」
アリシアはふいに遠い目をしながら可愛らしい白い手を掲げ、まるで何かに指示するように振り下ろすと、全ての者は地響きに襲われた。
「な、なんだこの地響きは!?」
「まさかまた別の反乱軍が来ているの!?もういや…いやぁ…」
「いや!我らにはエンディミオン様が、そしてエンディミオン様と同じ氷魔法が使える少女が…あのような巨大な城を作り出せる銀の聖少女が付いている!
何も恐れることはない!」
「……おい、見ろ…。氷の城の城門が…開いていく……」
民の一人の言葉に私達も、そして反乱軍も視線は城門へ向かう。そこには確かに、固く閉ざされていた城門が独りでに開き……
「こ…こほん!いくぞは、反乱軍。兵士の貯蔵は充分か」
まるでこの城の主、女王の如く悠然と反乱軍に相対して立つアリシアの後ろには100を超える氷のゴーレム騎士達が構え立っていた。
仕事が繁忙すぎるという建前の没60話大量生産のためなかなか更新できずにすみませんでした……。正直結構良い完成度の60話が複数存在するので暇があれば活動報告でUPしてみたいです。まぁ最終的な結末というか収束点は一緒だから違和感は薄いかも?ただ、まだ繁忙なので次回投稿がいつ出来るのやら…。
今週はまずムリゲーです…勘弁してください。来週は…どうなんだ?
そしてアリシアさん、某紅茶さん完全リスペクトです。この大技についての解説は次回の後書きで…。




