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第五話 初めての街

「街へ行く?」

家でくつろいでいたらお母さんがそんな事を言い出した。

私とお兄ちゃんはまだ一度も街へ行ったことどころか私達家族以外の人に

会ったこともない。

お母さんは小麦の苗とか手に入れるために何度か山を降りて近くの街へ

行っていたらしいけどそれも数えるほどしかなかった。


「なんで急に行こうと思ったのさ母さん」

お兄ちゃんがお母さんに質問している。

どうやら初めて行く街に少し警戒しているようだ。

私としては初めての街は楽しみで何があるのか、お母さんやお兄ちゃんと

どんな遊びが出来るかとても興味があった。


「まぁ・・そろそろ二人にも街とか他人とかを見せて社会性を身に

付けないとね・・。」

お兄ちゃんの質問にお母さんは"シャカイセイ"を身に付けるうんぬかんぬ

言っているけど"シャカイセイ"って何かのアクセサリーなのかな?

それを買いにいくのかなぁ?

「とりあえず母さんは準備してるから適当に外出れるようにだけして

おいてね~」

それだけ伝えてお母さんは着替えに行ってしまった。



「"シャカイセイ"ってこの前お母さんが作ってくれた帽子と合うかな?」


確か牛さんの毛皮から作ったふわふわの帽子でお母さん譲りの銀色の髪と

とてもよく似合ってお気に入りでお兄ちゃんと外でまほう遊びするときに

着けているけど"シャカイセイ"が似合うかどうかお兄ちゃんに聞いてみたら


「馬鹿だなぁ・・。どうせ母さんのことだから"シャカイセイ"って新しい

武器のことだろ?"身に付ける"とも言っていたし多分この前母さんが作って

はしゃいでいた"ダブル・コンテンダー"より大きな銃だと思う。」


と呆れたような表情で回答が返って来た。

ちなみに呆れている対象は私じゃなくてお母さんに、だ。


お母さんは私と同じ銀色の髪で顔もとっても綺麗でまるでお母さんがよく

話してくれる物語のお姫様そのもののような人なのだけれど、

どういうわけかいつも腰にはナイフとか大鎌とか備えていて懐には銃を

仕込んであってそれこそ夜にお兄ちゃんにだけ話す

(夜寝たふりをしてこっそり聞いていた)闘いが多い物語の

・・・"ヨウヘイ"という登場人物の格好にそっくりでせっかくの美しさが

色々と残念な事になっていた・・・。



そして今日も・・・いや、今日は特に酷かった。


下から・・・足から首まで厚いマントのようなものを被って全身を隠し、

顔は目から下をスカーフで覆面のように隠して目だけかろうじて見える

ような感じでそして美しい銀色の髪は布で巻いたターバンで完全に隠されて

いた。


「うん!準備完了☆」


「「着替えてきなさい!!」」

お兄ちゃんと見事にハモった。


「え~、これでいいじゃん。見事に全身を隠してひたすら空気になる事を追求

したアラビアンファッションで」

「・・母さん・・その格好、逆に目立つと思うよ?普通の格好にしようよ・・・」


お母さんは目立たないと思っているらしいがどう見てもその格好は変質者か

盗賊とかそんなものを連想させるような格好でこんなので街に出たら下手

したらお母さんが私達を誘拐した盗賊と思われてもおかしくない・・。


むしろいつもの格好のほうが目立たないと思えるほどその服装は奇抜だった。


「これ逆に目立ってたのか・・。

だから初めて街に行ったときに追い回されたりなかなか小麦の苗売って

くれなかったのか・・」

「一度って・・。そんな格好で街に行ったの母さん!?

もう恥ずかしいからその格好で行くのはやめてね!!」


「う~ん・・。でもなぁ・・変装しないとヤリチンとかサイコパスの手下が

・・まぁこの世界に写真とかないから余程目立った行動しなきゃ大丈夫か

・・・?でもなぁ・・・ごにょごにょ」


ぶつぶつと一人で呟きながらあの"アラビアンスタイル"から元の服に

着替えてくお母さん。

そういえばお母さんはこれから行く"街"や"他人"を極端に避けたり、

街に一人で行ったときもさっきみたいな完全に正体を隠すような格好を

してるけどこれには理由があるのかな?

実はどこかの国のお姫様だったりしt

「銃っと・・スカートに2丁、上着に1丁、鞄にいっ

「「一つで十分です!!」」

・・はい」


・・・それは無いか。







それはまさに衝撃だった。

なにせお兄ちゃんとお母さん以外の人を見るのは初めてだから。


見渡す限り人、人、人・・・。

服は青、赤、黄色、薄茶色、黄緑・・・

大きい人、小さい人、私達と同じくらいの大きさの人・・・

ゴツゴツした体格に人、スラリとした体格の人、丸みを帯びた体格の人・・・

青い目、黒い目、茶色い目・・・

緑の髪、茶色い髪、赤い髪、金色の髪・・・


その何もかもが衝撃的で気が付いたら私は人がにぎわう大通りを踊るように

駆けていた。


――――ガシッ・・・


・・・・が、


「はぁ~い。このままじゃ迷子になっちゃうだろうからお母さんと手を

繋ぎましょうね~」


とガッシリまるで犬の首輪とリールの様に手を握られた。少し痛い・・。

でも確かにこれだけ人がいたらお母さん達と少し離れただけで見えなく

なっちゃうくらいなんだから仕方ないか。


「さて、とりあえず市場で何が売ってるかでも見ましょうか。

前に来たときなんか散々追い回された挙句ようやく手に入れたのが

小麦の苗だけだしねぇ・・・」


いや、お母さん。どう考えても追い回されたのはあの怪しい

"アラビアンスタイル"のせいだから。


はっきり言って私でもあの格好初めて見たときは何かの化物とか魔物かと

思ったほどなんだから・・・。




「おい、あれは誰だ?あんな美人見たことねぇぞ!」

「凄い綺麗な銀髪・・。銀髪なんてこの国にいたかしら?」

「しかも子連れかよ・・。くそ!旦那は爆発しろ!」

「うわぁ~・・あの金髪の男の子可愛い~。将来絶対美形よあれは!」


何かさっきから通りの人たちが私達をジロジロと見ながらひそひそと

話し合っている。

特にお母さんをごつごつした人・・男の人がうっとりするような顔で

見つめていた。


「あ~うぜ~・・。んだよ、そんなによそ者は鬱陶しいってか?

日本なんかお隣さんでも平気で無視だぞ・・ぶつぶつ


――――ギュッ・・・


・・急に抱きついてどうしたのアリシア?」


周りの、特に大人の男の人からお母さんを奪い取られるような気がして

怖くなってお母さんに抱きついた。


「お母さん・・私を置いてどこか行っちゃやだ!」

「!??なんでアリシアを置いて行かないといけないの?

というかアリシアは私の嫁だから!!どこにもやらん!!」


「・・・母さん、前に

『くっそ!なんで女同士じゃ結婚できねぇんだよ!?

せっかく銀髪美少女のアリシアを我の思うがままの理想の女性に育て上げ

素晴らしきキャッキャウフフ生活が出来ると着々と計画を進めていたのに!!

くっそ~将来アリシアを嫁に下さいとか言って来やがる腐れ野郎には腹いせに

鉛弾ぶち込んでやる!』

とかいっていたよね?

アリシアは母さんの嫁にはなれないよ・・。

というかお嫁さんってどちらかというと母さんの方じゃん」


そんな会話をしていると何か周りの人たちが引きつった顔で

一歩後退していた。

この程度でお母さんから引くなんて、・・・フッ、まだまだだね。






・・・・・最近お母さんの影響を強く受けてきたような気がします。



「もし、貴方もしかして最近この辺に引っ越してきた方でしょうか?」

もご、もごごもご。はいそうです


しばらく大通りで買い物(私は新しい服を、お兄ちゃんはご本を、

お母さんは焼き鳥を)していたら黒い服に包まれた、だけどどこか

清楚な感じのする人が話しかけてきた。


「・・・口にものを入れながら喋らないで下さい・・。

何か色々台無しです・・・」


「もぐもぐ・・・ごっくんっ・・。いや、失敬。

何せ急に話しかけられたものですから。」


「ところで見ない顔ですけどお名前をお聞かせ下さいますか?」


「リオンです。5歳です」

お兄ちゃんがはっきりと名乗って歳までいった。流石はお兄ちゃん。

しっかりしてるなぁ・・。


「あ、アリシア・・。えっと・・ご、5歳でしゅっ・・」

あわてて私も自己紹介したけど舌を噛んでしまってうまく出来なかった・・。

恥ずかしい・・。


「あらあらアリシアちゃんは可愛いわね。ところでお母さんの名前は・・?」

「はい、山田花子です☆永遠の17歳ですミ☆」


「「誰だそれはーーー!?」」


「はい本当の名前は?」

「いや、だから花k

「本当の名前を語らなければ貴方は神の裁きを受けるでしょう」

・・・・アサギ。闇に舞い降りた女、アサギ。ちなみに顎と鼻は尖ってないよ」


そういえば街に行く前に真剣な顔でお母さんが

『自分のことをアサギと名乗るから貴方達もそれで合わせてね』といっていた

けどなんで本当の名前を名乗らないんだろう?お母さんの"ソフィア"って

綺麗で清潔な感じでいい名前だとおもうんだけどなぁ・・。


お母さんが偽の名前をしれっと言うと黒服の女の人は木の細い棒を取り出して

「精霊よ、この者の言霊偽りであるか答えよ」

と呟くと棒の先から光が薄らと出てしばらくすると消えた。


「・・・確かに・・。嘘は言ってなさそうですね。まぁいいでしょう。

それよりこの子達明らかに人に慣れていませんね。

もしかして今まで教会や学校に通わせた事はないのですか?」


教会に通う・・?もしかして私達以外の同じくらいの歳の子って皆教会に通っているのかなぁ?


「この二人は今まで自宅で学習させていました。

一応簡単な読み書きと計算は教えましたけど。

そしてさっきの杖は何だったのでしょう?そしてあの光は何!?」


そういえばお母さんが木の葉に文字を書いて木の葉の物語本を作って

くれたおかげで文字ならスラスラ書ける。

"ケイサン"も"タシザン"とか"ヒキザン"、"カケザン"と"ワリザン"

・・・あと最近"ブンスウ"とかいうのを教えてもらっている。


「それはいけませんね。子供にはお友達がたくさん必要です。

たくさんの子供や大人に囲まれて社会について、そして我らが主に

ついて学んでいくのです。

そして先程使ったのは神聖術の言霊読みという嘘を見破る主の聖なる力です。

誰でも知ってることですが知らなかったのですか?」


あれってまほうじゃなくて"シンセイジュツ"っていうんだ。

最初はまほうと同じものかと思ったけどまほうは最初に光ったり

木の棒がいらないから違うっぽいなぁ・・。


「まぁ・・確かに子供達には友達もいませんし出来れば学校にも通わせて

基本的な学術と社会性を身に付けさせたいとは思ってますけど教育費が・・。

ちなみに学校の一年間の授業料ってどのくらいですか?

そしてさっきの嘘発見術って結局は心理学の傾向から導き出したもの

でしょ?もしくは超能力の透視か」


「それでしたら問題ありません。学校は多額の授業料が必要で殆ど貴族の

方しか通えませんが教会は全ての子に無償で授業を受けさせられます。

そして神聖術は主に認められた者だけが使える聖なる力です。」


「なるほど・・。リオンとアリシアはどう?教会に通ってみたい?

そしてそれ神聖術とかとちゃう、超能力や!」


「う~・・ん。まぁ僕は通ってみてもいいかな。同じくらいの歳の子が

何しているか知りたいし。」

「私は・・・お母さんと一緒がいい・・。」

「心配しなくても僕が一緒だよアリシア。それとも僕だけじゃ心配?」

「ううん・・・。」


「それじゃぁ決まりだね」


正直お兄ちゃんとお母さんだけの生活から他の人がいる生活なんて

想像がつかなくて怖いけど他の同年代の子がいるってことで少し興味も

あったからとりあえず通ってみる事にした。


「うんうん!教会の皆は優しいから安心して通いなさい。

では手続きをするので教会までいらしてください。

そして貴方はいつになったら神聖術を理解するのですか?」


お母さんやたら神聖術を認めたがらないけどなんでだろぅ・・?







教会は白くて大きな建物だった。

中は清潔な感じで椅子がずらりと並んでいる。

そして一番奥には石で出来た皺々の男の人の像があった。

あれがシスターさんの言う"シュ"なのかなぁ?


今はお母さんが黒服の女の人、シスターさんから通学の申し込みを

しているそうで私とお兄ちゃんは教会の庭のベンチで座って待っていた。

庭には私達と同じくらいの背丈の子が何人もいた。

みんな走り回ったり互いに笑っていたりして楽しそうだ。



「おい、お前らの母ちゃんってあの銀髪の人か?」


急に声をかけてきたのはお兄ちゃんより少し背の高いぽっちゃりした

男の子だった。

「ふぇ?う・・うん。そうだけど・・・・?」


「母ちゃんが一人で教会に来るって珍しいな。

お前、父ちゃんは仕事でもしてるからいないのか?」



?父ちゃん――――お父さん?

そういえばお母さんの話す物語では夫婦はお母さんとお父さんがいるけど

私達のお父さんは一度も見たことがない。

そういえばなんでお父さんはいないんだろう?


「なんだお前父ちゃんいないのかwww?

母ちゃんだけなんてだっせぇ。母ちゃんなんて口うるさくていつも

ガミガミ怒ってるだけなのにwww

しかもお前の母ちゃんトロそうだしあの髪なんか灰色で汚い感じしか―――」


「お母さんのことを悪くいうなぁ!!!」

なんでお母さんの悪口をいうの?なんでお父さんがいないとダサいの?


「なんだと?おい、お前よくもオレに怒鳴ったn

「そこまでにしておけ。そして次に母さんの悪口をいったら僕が許さない」


男の子と私の間を割るようにきつい剣幕をしたお兄ちゃんが割って入った。



「・・ぐっ・・・。もう・・帰る!」

お兄ちゃんの剣幕に押されたのかぽっちゃりの男の子は踵を返して立ち去った。


「お・・おにい・・ちゃぁん・・・う・・う・・・うう・・」

お母さんを悪くいわれた悔しさと男の子に詰め寄られた怖さで泣きながらお兄ちゃんの胸に顔を沈めた。








「あ~きのゆ~う~ひ~に~て~る~や~ま~も~み~じ~

・・・って今春じゃん・・。じゃぁ・・テンテテテテ~テ♪」



「う・・・うん・・?・・う~」

気が付くと真っ赤に染まる夕日の中をお母さんに背負われながら

帰路についていた。


「あらアリシア、ようやく眼を覚ました。

リオンに抱かれて寝てたからここまで負ぶってきたのよ」


背中に広がるお母さんの優しい香り。

これを嗅いでいると教会であった嫌なことがただの夢であるようだ。




・・・そういえば、お母さんに聞きたいことがあったんだ・・。



「ねぇ、おかぁさん・・。」

「なに?アリシア」





「私のお父さんって何処にいるの?」

感想ありがとうございます!


ちなみにこの第五話昨日書いた没案が別にあるのでまた番外編か何かで

UPしたいと思ってます。

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