表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/83

第三章プロローグ

お久しぶりです!なかなか更新できなくて申し訳ありません。

激動の第三章開幕です。

side ベジャン


今、私の目の前で起こっているコレは何だ?

私の目の前、そこには血だまりが広がっている。その中には不気味に乱雑する赤と肌色の何かが無数転がっている。一目でわからないそれはよく見れば人間の死体であった。いや血だまりや人間の死体くらいどうでもいい、問題はその骸と化した人物だ。


バラゲラス・ガリガーン

十年ほど前に出会いこの私に素晴らしい力を、そして"ワタシ"に復活する力を与えた男。それは白の国を掌握した後も変わらず凶暴なハーフオークの量産、黒魔法のさらなる発展、この世界にかつて存在した7体の使徒。それらの知識を我らに与え、いくら減ろうとすぐに補給できる戦力を多数生み出し、さらなる発展を促したまさしく最強の駒と呼べる重要人物。

…それが死体と化していたのを見た瞬間私は膝から崩れ落ちた。




あの悪夢の始まりは一つの緊急連絡からだった。


『ハジャス村にて我が軍の兵士が全滅。斥候によると黒灰髪の子供がたった一人で壊滅させたとのこと』

それを聞いた当初はまだそんなプロトゴノスのような猛者がこの国には居たのか。恐らくその子供も属性魔法持ちで村が襲われたことで覚醒したのだろうか。このままでは厄介だが所詮は子供、エンディミオンの様に完全に魔法が成長しきる前に潰せば問題はない。だがたった一人で数百もの兵を倒すその腕は非常に惜しい。是非ともその子供は捕えてバラゲラスに我が軍の精鋭として改造してもらわなければと、プロトゴノスと同じように上級の魔物か数の暴力で攻めれば討ち取られるだろうと容易く考えていた。


……その次の連絡を聞くまでは。



『べ……べラストニアに進撃していた全部隊が全滅!原因は…偵察によると黒灰髪の少年が単騎にて我が軍を滅ぼしていると……さらに敵はそのまま王都方向へ突っ込んできています!』

楽しんでいたワインのグラスが割れる音が響く。

私の目の前では黒魔法によって遠方の光景が水面に映る道具によって、べラストニアから我が国の国境に向かって黒灰髪の青年が一人死神の如く大鎌を振るって我が国兵を次々を切り捨て、首を刎ね、抱えた黒い不気味な筒から火炎を吐きながら王都目指して駆け抜ける。


「らっしゃぁおらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

が、我が軍の屈強な兵士の一人の斧によって奴の振るっていた大鎌が弾き飛ばされて無手になった奴に一斉に兵が追撃を仕掛ける。ふん、ようやくこれで片付くか。その光景を水面から眺めた私は安堵の溜息を零した……が、それは一瞬にして吹き飛ばされた。


「へぇ…良い斧持ってんじゃぁねぇかぁぁぁ!!おらぁ!その臭せぇ腕ごと寄こしなぁぁ!!」

青年は大鎌を失ったことに全く気を留めずに大鎌を弾き飛ばした兵士の腕に手刀を当ててその手首ごとへし折りながら引き千切ると兵士の斧を掴みとって鎌と同じ要領で今が好機と囲っていた兵達の首を一瞬で刎ね飛ばし、斧も回転させながら遠方にいた師団の中心へと投げ捨てて何十もの兵の命を一瞬にして刈り取った。そして今度は背中に携えていたサーベルを抜き放ち青年に向かってくる何百、千という我が兵達へ向かって行く。

「ひゃははははははは!!臓物ぶちまけろぉぉ!味気もない白の国とかいう糞集団を綺麗な赤い色彩で彩ってやるよ!今からここは血みどろの国だ!ひゃははははははは!!!」


「貴様ら何をしている!!たかが餓鬼一人にいつまで手を焼いているつもりだ!?」

「第二隊、第五隊出撃!ハーフオークも量産型ダークネス・ドラゴンも全てつぎ込め!」

「くそっ!何なんだよあの悪魔は!!」

『緊急連絡!第三奴隷棟が奴によって襲撃。奴隷たちが逃げ出しています!』


第三奴隷との壊滅、そこで私は決断した。あそこは新たな戦力を手に入れるための重要施設であった。べラストニアで捕えた奴隷はその半数以上が忌々しいエンディミオンに襲撃され逃げられてしまったがそれでも数万の奴隷を捕えてオークの子供を孕ませるという重要戦力となっていた。偶に我も施設へ視察に行ったがまだ幼さを残す娘や恐らく既婚者であろう女が泣き叫びながらオークの子供を産む光景を眺めながらの酒は非常に甘美であった。それが、それまでもがあの黒灰髪の餓鬼によって壊滅とあってはもう出し惜しみをしていられる余裕はない、生かして捕えるなどという生易しいことでは許さない。

7体の使徒、その内既に5体までの回収及び復活には成功した。流石に古にこの地を恐怖の底に叩き落とした魔物たちを相手にすればこの餓鬼も一瞬で塵と化すであろう。私は封印石に魔力を込めてかつて世界を支配した古の魔物を呼び覚ました。







「■■■■■■ーーー!!バラ゛ゲラ゛ズーーー!!俺ば貴様が許ぜねぇ!!出て来やがれ!出でごねぇならごごいら一体ぶぎどばじでやらぁぁぁ■■■■■■■■!!!」

突然の衝撃にコテージから飛び出すと市街の、いや王宮の幾つもの建物が黒い煙を上げながら倒壊している。

「緊急!黒魔法研究棟、武器保管庫が突如爆発!」

「先遣隊、守備第二、第三、第八部隊の通信が途絶!」


そう、塵と化すはずだったのに…。私の遥か遠方には5体の内今回投入した3体の使徒のバラバラになった巨大な死骸がまるでそこいらに落ちている石ころのように横たわっていた。古代の魔物は死という概念そのものがないはずなのにバラバラに分断された肉片は再生する気配もなく、唯一顔が残っている魔物はおよそ魔物とは思えない恐怖に歪んた表情で最後に

『あれは……何なんだあれは……?なんであんな存在がこの世界に……あ奴も同じ概念存在のはず……なぜだ……あんなのはリーフィンと同等じゃない……もっと性質の悪い……』

と呟きながら砂と化して消えてしまった。


そしてバラゲラスのいる第一魔物試験棟から絶叫が響いたとき、この私が…このベジャンは屈辱的なことに恐怖で動くことが出来なかった。



なんだ…なんなのだこれは?何故この我の計画を邪魔するのだ!奴が死んでしまえば黒魔法の技術が止まってしまう!しかもあの餓鬼はバラゲラスの試験施設全てを壊して行ったためオークの生産方法や黒魔法を使えるようになる方法など重要な書籍や情報媒体までも失われてしまった。

黒魔術開発棟が突如爆発し、オーク生産所が横倒れとなり、立ち向かう兵は愚か市街地に居る住民や破落戸達など目につくものは全て殺された。しかも…人を殺しているとき奴は笑っていた。さらには髪の色が途中銀色…いや、白色になったと思ったら禍々しくどす黒い魔力?を身に纏いながら一睨みだけで目の前の兵に一切手を付けることなく殺害し、今まで使っていた得物のサーベルを仕舞い出すからようやく降伏したのか?と思ったら凶器のように禍々しく豹変したその爪と牙で人間を引き裂き、噛み殺し、変な欠片を投げて爆殺して……。

あれはまるで……魔物ではないか?アイツは我々側の人間ではないのか?何故人間をああも愉悦的に殺しながら我らに刃向う?何故このスニーティの配下とならない?


死者6万8000人、行方不明者10万人、倒壊建物400棟


それが今回この厄災としか表現できない餓鬼によってもたらされた我が国の被害だった。そしてバラゲラスの死体は原型が人間であったとすら認識できないほどにまるで鈍器で殴り潰したかのような狂気的なまでの殺意と憎しみを感じる首なし死体として発見された。




許せん……許せん!あと少しで…あと少しで風の国を掌握し古代の魔物を揃えての最強戦力を手に入れ、奴隷にオークを孕ませて大量の駒を手に入れて忌々しい賊国を滅ぼして最後にエンディミオンの目の前で生存が確認されたソフィア・リーシェライトを犯し絶望させてから虐殺するというこの我の計画が…たった一人の餓鬼に潰されるなどあってたまるか!バラゲラスの研究棟の瓦礫を見ながらこの怒りを増幅させる。この憎しみ必ずや…必ずや復活して成し遂げて――――――………?

ふと、何かが目に入る。瓦礫の中に何か光ったものが見えている。

気になってこの我自らそんなことをするのも癪だが瓦礫を退かしてその光るものをよく見ようとするとそれはドアの取っ手だった。いや、ただの取っ手ではない。取っ手の先は地面に…地下になっている。これは……


瓦礫と土埃で重くなった取っ手を黒魔術で強化した握力で思い切り引っ張ると埋まっていた扉が開き、そこから階段が伸びていた。一抹の不気味さを抱えながら階段をゆっくりと下って行く。地下は薄暗く、ただ私の靴の音のみが響き渡る。100段程螺旋状になった階段を下った頃だろうか少し薄明るく感じて歩みを進めるとそこで階段は終わっていた。


「……こ……れは?……くく……くくくく………くはははははははは!!まさかこんな…まさかこんなものを残していたとは!流石は我が最高の友だバラゲラス・ガリガーンよ!」

紫の光に照らされた部屋の中には数々の黒魔法について記された書籍、奴が依然使っていた"テイサツキ"と似た魔道具、人間に孕ませることの出来る種オーク。


そして一番奥の透明の器の中には………7体の使徒の身体の一部がそれぞれ入っていた。

リリアちゃん描きました。某携帯獣育成者コスです(帽子だけ)

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ