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エピローグ  動き出す運命

side エンディミオン


あれから…ソフィアと子供達の小屋発見から既に半年が経過してしまった。

そんなに時間が経ってしまったというのに未だソフィアと再会を果たせないのは恐らく私が不甲斐ないからだろう…。

べラストニア戦争の戦後処理から時間を見つけては眠る間も惜しんでソフィアを探した。ヒーズ・タウン、北方山間部、クケル村、南部草原地帯、地下道……。だが、結局彼女を見つけることは出来ずわざわざ私に付き合って捜索を手伝ってくれた軍の皆や騎士隊にも申し訳がなかった。皆表向きには『最近べラストニアの復旧も終わりに近づいてきて丁度暇だったんですよ』といってくれたが裏では睡眠の時間や家族に会う時間を削って捜索してくれて、本当に感謝しても感謝したりない。


それでも捜索の成果は、というよりはソフィアの生存確認だけは取ることが出来た。ベラストニア西端のギルドハウスで双子を連れた銀髪の女性を見たとの目撃情報があり、そのギルドハウスで受付嬢に頼んで銀髪の親子のギルドカード申請書を見させてもらうことが出来、ソフィアと子供達の生存確認と足取りを手に入れることが出来た。この書類を手に入れたとき騎士隊全員が喜んで祝ってくれた。


やっぱり名前はリオン、アリシアだったのか。早く二人に会いたい。…ただ、ソフィア…と思われる人物のギルドカードの名前がアサギ・リーシェライトとなっていたがこれは偽名だろうか?




そしてその書類を元により詳しい捜索をしようとした矢先のことだった。


白の国の急襲。

白の国はどんな魔法を使っているのか風の国の各地に現れては急襲を繰り返し、人々はいつ来るか分からない敵の存在に脅えている毎日を送っている。それが例え戦線から遥か離れた西方だろうが南だろうが攻めてくるのだから、まるで心が休まらない。

中央に位置するとある街は住民の半数が突如現れた白の国兵に虐殺され、西に位置するとある町は同じ様に今度は数多の魔物も現れて子女全員が奴隷てして連れていかれそうになったが丁度騎乗隊が近くに駐留していてくい止めることが出来た。

そういえば南の村も襲撃を受けていたが、こちらは数人の被害で何故か援軍を送ったときには村には襲撃した白の国兵の死体の山が出来上がっていた…。しかも村人に話を伺ったが、返ってくるのは『悪魔…灰色の悪魔が……』と錯乱してそれしか語らなかった。

一体何者なのだろう?灰色の悪魔。



だが、不思議なのが白の国の一番の敵対国である銀の国ではそういった戦線外の突発的な急襲が無いことだ。風の国では何件も発生しているのに我が国では発生しないその不可解な急襲にやはり我が国が白の国と実は共謀して風の国を攻めているのでは?といった疑いが生じてしまったが幾多の援軍派遣と復旧作業に信頼を勝ち取ることが出来た。そしてもう一つ、我が国の潔白を証明する報告文がプロトゴノス殿から送られてきたことで潔白が確実なものとなった。

風の国の腐敗貴族と白の国が共謀して兵と魔物の転送をしていたのが急襲の正体だったのだ。それに強い怒りを覚えたプロトゴノス殿と風の国女王は近い先一斉粛正を実施すると言っていた。しかし風の国は現在女王が主権を握っているが未だ前王の時代の確執が残っていて王都のある西方では絶対的権力を誇れるとしても中央地域や北部、南部では未だにその地域の領主が主権を持っているようなもので直接的な粛清はまず不可能だろう。だがあの女王のことだ、必ずや何か策を使ってやり遂げるに違いない。



しかしこれで一連の急襲は収まりを見せるだろうが、お陰でソフィアの捜索が中途半端なところでなかなか進まなくて今まで悶々とした日々が続いた。一応中央地区の神聖教会本部トレーネで赤子を抱えた女性からソフィアの情報を聞き出すことが出来た。その女性はソフィアから神聖術で子供を救われて深く感謝しているとのことだった。

見ず知らずの子供にも優しく手を差し伸べる辺り彼女らしい…と思わず顔を綻ばせると女性は少し警戒した顔から優しそうな表情に変わり、教会の大司祭様なら彼女の行方を知っているかもしれないと教えてくれた。早速大司祭に取り次いでもらって話を伺ったが彼は一切何も語らず、こちらとしても無理矢理聞くなどという横暴な真似を出来るはずもなく結局トレーネで彼女の

行方は再び分からなくなってしまった。


そして事態が沈静化し我が国を疑ったお詫びとこれからのさらなる同盟の強化のための晩餐会を開くと風の女王から参加するように強く誘いを受け現在私は馬車に揺られながら風の国の王都を目指している。大まかな政や会談、パーティーはセリアや母上、騎士の皆や大臣たちが引き継いでくれて『陛下は私たちのことなど考えずに早く奥様を見つけてきてください!正直このまま王妃の席が空席の上ご子息もおられないと民にも将来の希望の示しがつかないうえに我らの身が持ちませぬ!……というかとっとと見つけてこいこの色男!!』と王宮から追い出されてしまった上に、実家ではソフィアとお腹の中の子供の生存を知ってから正気を取り戻し、やたら気が立つようになった母上に旅に必要な道具と身分証明、多額の路銀と馬車を押し付けられて『ソフィアと子供達を連れてくるまでこの家には一歩も入れさせません!』と同じように追い出されてしまった。


…どうやら皆に気を遣わせてしまったようだ。おかげでソフィアを探す旅に出ることが出来た。しかし、大事な会談に全く顔を出さないのはまずいだろうと思い、大臣たちと連絡を取ってとりあえず今夜の晩餐会のみ出席することとなった。今回の騒動の一件について風の女王は深く私に謝罪していたが、少しそこを突くようで悪い気もするのだが風の女王にソフィアの捜索の協力を要請してもいいかもしれない。



「間諜から報告です!白の国が風の国へ再び侵攻を開始。現在べラストニア南部の村が戦火に飲まれています!」

連れ添ってもらっている騎士が血相を変えて伝えたのは突然の開戦連絡。…これでようやくソフィアを探せると思った矢先に再侵攻か。本当にあの国は人の都合を考えてくれない。むしろだからこその今侵攻なのか?

「現在の被害と戦線の規模、敵の戦力及び我が国軍の駐留部隊の残存戦力は?」

「戦線は…ヒーズタウンにまでは至ってはいないもののそれより東の村や街は全て戦線内に入っているようです。駐留部隊は現在北方で復旧をしていましたので現地に到着するまで1日はかかります。敵戦力は突発的ゲリラ攻撃の時と同じハーフオークの部隊後方に白の国兵が構えている型ですね。魔物の報告はまだ上がっていないので今回の投入はオークだけではないでしょうか?」

ハーフオーク、か……。人間とオークとが交わってできた混血種。あのべラストニア戦争で奴隷となった人々を解放した時それの存在を知った。白のやつらはそこで捕えた人々、子女に無理矢理オークと交わらせてオークとの子供を妊娠させ戦争の道具として使用する。その現場を押さえた私が見たものはまさしく地獄だった。

言葉が話せなくなってしまった少女、ひたすら愛する夫の名前を泣けびながら犯される女性、その目から一切の輝きを失ってしまった母娘。そしてその全員の腹に宿ったオークの、それも温厚な性格の自然種とは明らかに違う黒魔法にて生み出された凶暴なオークの子供を延々と産ませられる地獄。


先に施設の中を見ていたセリアからは見るなと再三に渡って言われたが国を纏めるものが奴らの企みを知らずしてどうする!と私はセリアの配慮を無視してその地獄を見てしまった。

あの日は本当に最悪だった。見て早々耐えられなくなって吐き出してしまい、そのあまりの凄惨さに一晩中泣き明かして執務室から出る気になれず結局セリアに慰められてようやくまともに動けるようになった。あの時、私は泣きながらあの地獄にいた彼女らには申し訳ないことを願っていた。あの地獄の中にソフィアがいないように……無事に子供達と逃げ切れているようにと……。それがいかに最低の願いであるのかはあの光景を見た自分自身がよく分かっている。それでも、願わずにはいられなかった。


だが、そんな地獄から生まれたオークが再びべラストニアへ侵攻してあの地獄が再び繰り広げられようとしている。それは何としても…ようやく戦争が終わって皆心に深い傷を負いながらも一からスタートしようと立ち上がったのに再びあんな地獄を生み出してなるものか!


「国軍全部隊に通達!第一兵団と第四兵団をべラストニア地方へ派遣させよ!住民の避難を第一とし下種の極みに堕ちた白の国に我らの、人間の高潔さを見せつけろ!そして諸君らも自らの信頼する者、愛する者を守るためここで奴らに大打撃を与えるぞ!!」

「「了解!」」

騎士達は敬礼をしてそのまま疾風のごとく馬を東へと走らせた。私もゆっくりしていられないしどちらにせよこのような一大事となれば晩餐会になど出ている場合ではない。

「へ、陛下!?馬車を降りられてどうし…もしやまた陛下自らが指揮をとられるおつもりで…?」

「当たり前だ。騎士たちが戦場で命を懸けているというのに私が、王が呑気に晩餐会に出ていろと?」

「………はぁ~~本当に陛下は…そんな性格だから一日に何百と告白されるんですよ。それを『私の妻はソフィアただ一人』とか……本当に陛下に告白した女性たちは哀れというか可哀想というか。はぁ~~」

御者は溜息を一つ吐いて首を振ると馬車の方向を東に変える。彼も遠まわしに『我らに全て任せて奥さんのことだけ今は考えればいいものを』といつも言ってくれているが私の、王としての心も理解してくれている。


…私は本当に者達に囲まれているな。







「き、緊急連絡!!べラストニアに侵攻していた白の国でしたがたった今全滅との連絡がありました!騎士隊の話ではおおよそ人とは思えない動きをする黒髪の少年がたった一人で敵軍に飛び込み一瞬で死体の山を作り出したと―――」


……な、なん…だと?


伝令の言葉に私は言いようのない不気味さと、何かが…止まっていた何かが動き出す焦燥感にも似た感覚を確かに感じていた。

おまけ  セリアの手紙


久しぶりね陛下。いえ、エンディミオン。ソフィアちゃんは見つかった?早く見つけてくれないと私が作った服をリオン君とアリシアちゃんが大きくなって着れなくなっちゃうんだから早く見つけなさいよね。正直王宮では皆あんなこと言ったけど心の中では貴方に感謝しているのよ。ようやくソフィアの手掛かりが掴めたというのに国のことに真摯に取り組んで食糧問題や新体勢の調整とかちゃんと皆を導いてくれたし決して自分の国のことを投げ出さなかった。大臣も騎士たちも民も皆貴方には感謝しているわ。でも、そんな仕事の傍らちゃんとソフィアの捜索にまで手を回していたその手腕には私も舌を巻いたわ。…とにかくこちらは大丈夫だからあんたは早くソフィアちゃんを見つけて連れて帰ってきなさい。  セリア


追記:息子と娘が生きているのが分かって嬉しい気持ちが抑えられないのは分かるけど…子供用のドレスを眺めてニヤニヤするのは止めて欲しいわ。最近待女の間で貴方幼児性愛者になってしまったのではないかと噂されているわよ…。




第二章完結!


次章予告

「エンディミオン様って本当に素敵ですね!あんな素晴らしい方に愛されたら私…えへへ」

(言えねぇ~…君の憧れている男は私を孕ませて子供ごと捨てた最低男って言えねぇ~~)

再び集まる者たち。

「王宮アカデミー?」

「そう、貴方達のような素晴らしい成績の者なら無償で入ることが出来る最高の教育機関」

風の国王都で始まる新たな生活。

「……っ!!そ…ソフィア……ソフィア!ソフィア!!」

「?お兄さんは……誰?」

そして交わる運命の絆。

「何でまだ生きているのよこの汚らわしいメス豚!!」

「うるせぇ!テメェこそけばったるいその顔で迫ってくるなこのヤリマ○!」

再び襲い掛かる過去の恐怖と闇


「…もう…もう絶対に君を放さない。愛している、ソフィア」


三章へ続く!


※予告は都合により一部変更する可能性もあります。ご了承下さい。



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