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第四話 僕の母さん

リオン視点です。

ものごころつく前から僕と妹のアリシア、そして母さんはいつも一緒だ。


母さん、ソフィア・リーシェライトは息子の僕の目から見ても美しい。

月の光のように優しく輝く銀の髪、全てを包み込むような深緑の瞳、

そのどれもが綺麗で優しくて・・・。


そんな母さんはいつも僕らのために畑を耕して狩で鳥や魚を採ってきて

僕らに美味しい料理を作ってくれる。



僕とアリシアの一日は母さんのパンを焼く臭いから始まる。


丁度窓から差し込んでくる陽の光が眩しくてゆったりと目を覚ますと

朝食の準備中であろう母さんの鼻歌が聞こえてくる。


「る~るるる~る~♪」


母さんの鼻歌の穏かな旋律と外の小鳥のさえずりが綺麗なハーモ二ーを

出して聞いている僕とアリシアも穏かな朝を感じていた。





・・・・・が、


「るるる~るる~・・・・・ッカモン!イイェア!テゥテッテッ

テーテテッテッテー!レッツロック!!テテンテテェーー・・

デデデデンッテテ~♪」


急に先程の穏かな鼻歌をぶち壊すような激しい鼻歌に変わってめん棒を

持ちながら片手でシャカシャカと踊りだした。



「・・・か、母さん・・おはよう・・・」

「デデデディーーーーーーン!レッツ・・・・・っ!お、おはようリオン。

パンはもう焼けてるわよ☆」

挿絵(By みてみん)

若干引きながら挨拶する僕に母さんは歌っていた激しい鼻歌を止め返し

辛そうに、だけど何事も無かったかのような笑顔で返した。


「う~~・・・。おはよ~・・おかぁさぁん・・・」

「あらあら、アリシアもおはよう。それじゃ朝食にしましょうか」


まだ眠そうに目を擦っているアリシアが起きてきた。

アリシアは銀色の髪と可愛い顔はまさに母さんをそのまま子供にした

ような姿だった。


ずっと昔から、母さんの話だと生まれたときから一緒だったからか

いつしかアリシアがいないと僕も落ち着かない、まさに半身とも呼べる

存在になっていた。


それに容姿は元より仕草が可愛くてアリシアが僕の後ろを必死で着いて来る

様子は兄として妹を護らなきゃという気持ちを強くさせる。


そんな訳でいつも僕はアリシアの隣の席で一緒に採る。

今日の朝ごはんは白パンにウサギのお肉、山の果物が多数だ。


「ふみゅぅぅぅぅ~~・・・」コテン・・・。


未だ眠たいのかアリシアが僕のほうへ座ったまま倒れてきて肩に頭が

乗っかってきた。


「ほらほら、アリシア。食事中なんだから目を覚ます。

母さん、今日の予定は?」


「あらあら、アリシアはお眠さんね。今日はお昼まで鉄工所で

それからは畑の収穫かしら?危険だから鉄鋼所には近づかないでね?」



母さんは基本午前中はいつも畑仕事で午後からは"テッコウジョ"という

所で色々な道具を作っているらしい。

僕らがまだ小さいという事で母さんはたった一人で家の広大な畑の管理や

収穫をやっている。


正直あれだけの大きさの畑だから苦労しているのは一目瞭然だった。


3歳くらいの時に「ぼくもかあさんのおてつだいする!」といったら

「あらうれしい。でもまだリオンじゃ危ないからもう少し大きくなったら

お願いするわね?」


と断られてしまった。でも一人で畑の小麦を収穫して茎を取り除いている

母さんはとても大変そうでやっぱり心配で手伝いたかった。



そんなある日。


『あ~・・脱穀機とかないかなぁ・・。あれって何かこう回転するギザギザの

ような物だっけ?そうだ!なければ自分で作りゃいいんだよ!」


と、突然言い出してその何日か経って気が付いたら家の側に木と布で出来た

変な小屋が出来ていた。それが"テッコウジョ"というらしく一度こっそり中を

見たことがあったけどもの凄く暑くて変な焦臭いにおいが充満していてその中で

母さんが赤い板をハンマーでカンカン と叩いていた。


あまりの暑さにそれ以降一度も入りたいとは思わなかった。


そして"テッコウジョ"が出来てから2週間後


「ふっふっふっ・・。ふははははははーーーー!出来た!見よ愚民共よ!

これが脱穀機だー!ふはははは!科学最高!」


と一人なんかギザギザがいっぱい付いた筒のような物が入った箱を見ながら

物語りの悪役みたいな台詞を叫び笑っていた母さんが居た。


母さんの悪役セリフは別として"ダッコクキ"は凄かった。

今まで手作業でとても時間が掛かっていた脱穀があの箱にいれてギザギザの

筒を回転させるだけで簡単に脱穀出来ているのだ。

今まで家族全員でやっても何週間かかかった脱穀がほんの数日で終わるまでに

なった。

おかげで母さんの畑仕事の時間も余裕が出来たらしく以前にも増して僕らに

構ってくれたり遊んでくれるようになった。


そんなわけで母さんは"テッコウジョ"で作る道具のおかげで広大な畑の管理

とか収穫にそれほど苦労せずに済んでいるようだった。


そんな道具を生み出す"テッコウジョ"にとても興味を引かれたが

「あそこは高温だし火花が飛び散るから危険なの。もっと大きくなったら

入ってもいいけど今は我慢してね?」

と入らないように念を押された。


確かにあの中はとても暑くて長い時間居られそうに無かったから興味もあった

けど今まで最初の一回きり入った事は無い。




昼、僕とアリシアは畑の水溜りで遊んでいた。

「水溜りよ、凍れ!」


――――― シュゥゥゥゥーーーーーーーー・・・・・


呪文と共に水溜りを指で差すと急に周りの温度が下がったような気がして

水溜りはみるみるうちに凍っていった。


「わぁ~!!お兄ちゃん凍らせるの早くなったね!アリシアもやるぅ!」

そう言って目を輝かせながらアリシアが別の水溜りに手をかざすと僕の時より

さらに周りの温度が下がって今は夏前なのに冬の大雪の日のような冷たさに

までなってバキバキと音を立てながら激しく凍りついた。


「出来た~!まほうってやっぱり凄いね、おにいちゃん!!」


そう、僕らが遊びでやっているのは魔法。ものごころついた時には出来る

ようになっていた不思議な力。


確か最初に魔法が出来たのは4歳の時、冷たい水が飲みたくて水桶から掬って

飲んだけど温くなって全然涼めなくて


『この水が冷たい氷になればいいのに・・・』と思ってたら急に桶の中に

氷の山が出来ていた。


最初はよく分からなくてちょっと驚いたけど『不思議だなぁ~』程度で

終わらせてたけれど同じような事がその後も何度か合ってなんで水が急に

凍るんだろう?と思いながら過ごしていたら、ある日母さんが寝る前に

聞かせてくれた物語でその中の不思議な力を使う事が出来る"まほうつかい"

と呼ばれる人が魔物や化物を凍らせる力をもっている、

という話でようやくこの水を凍りにする力が"まほう"ということが分かった。


その次の日から小川の近くの水溜りとかで水を凍らせて遊ぶのが日課になった。


一緒についてきたアリシアも出来るかな?と思って

やってみさせたらやっぱり出来た。それどころかアリシアは僕より氷の山の

出来る大きさが大きくて少し悔しかった。



ちなみにまほうについてはまだ母さんには話していない。なぜかというと・・・


「おにいちゃん、これだけ出来ればお母さんびっくりしてくれるかなぁ?」

「う~・・・ん・・。もう少し大きな氷が出来ればびっくりするんだろうけど・・」


実はいきなり魔法が使える事をみせて母さんを驚かせるいたずらをしようと

二人で計画していた。

あの母さんのびっくりした顔が見たくて二人でこの1年色々と話し合っている

のだけどやっぱりただの小さい氷を見せただけであの母さんが驚くとは思えない

からこうして遊びながら大きな氷が作れないか練習をしている。


この1年で何とか僕らの身長より少し小さいくらいの氷の塊は作れるようになった

からそろそろ母さんに見せたいと思っている。


「もう少しかぁ・・・。今日はまほう使いすぎてヘトヘトだから

明日またやろぅ」

「うん、そうだね。お日様もお山に少し入っているからそろそろ帰ろう。

今日はご飯なんだろう?」

「今日はいっぱい遊んでお腹空いたからお肉がいいなぁ~」


アリシアと一緒に今日の夕飯について話し合いながら真っ赤に染まる夕日の中、

帰路についた。






「やったー!出来たーーー!ようやくできた!!」

家に着くと母さんが一人で何か手のひらより少し大きいくすんだ鉄の

筒を抱えながら喜び踊っていた。


「フリントロック式で単発式とはいえ改良すればリボルバーにもなるし

・・・ふははははは!!これさえあればあのドラゴンとかなんざ俺様の

敵じゃねぇ!!ふはははははは!!!俺TUEEEEEE!!!」


「おにいちゃん。お母さんまたやってるね」

どうやらアリシアはもう慣れているようだった。アリシアはすごいや・・・。


「・・・母さん、ただいま・・・」


「ふははははははは・・・っ!?お、お帰りなさいリオン、アリシア。

夕飯の準備するからもう少し待っててね?」


・・・毎度の事ながらこの切り替えは凄いと思う・・・。






「おかぁさん、今日はなんのお話聞かせてくれるの?」

「う~ん・・、そうね・・今日はシンデレラでも聞かせましょうか。」


毎晩寝る前に母さんは僕らにお話や物語を聞かせてくれる。

母さんの物語は面白くて色々なお話しがあった。昨日聞かせてくれたのは

"赤ずきん"というお話だった。


「あるところに貴族、まぁ偉くてお金持ちな家ね。の女の子がいてある日

その子のお父さんが~~」


おとうさん・・・。そういえば物語にはお父さんとお母さんがいるけど

僕らにはお母さんしかいない。どういうことなんだろう?


「~そこで魔法使いのおばあさんがシンデレラに魔法をかけるとあら不思議、

シンデレラは綺麗なドレスとガラスの靴を~」


母さんの話してくれる物語は面白いけど・・・なんかこう恋愛?というか

男の子と女の子が結婚して幸せになりました終わり、という展開が多い気がする。

もっとこうカッコイイお話ってないのかな?


「~こうしてシンデレラはめでたく王子様と結ばれ、末永く幸せに

くらしました。終わり。」


「す~・・・。す~・・・。」

「あらあら、アリシアはお話の途中で寝ちゃったみたいね。

リオンは起きてるのね。どうだった、シンデレラ?」


「うん、とってもおもしろかったよ。・・・でもさ母さん。

物語って何かいつも女の子が王子様と結婚して終わりというのが多くない?」


「ああ~確かに・・。アリシアに気を使って恋愛物を中心にし過ぎていたわ。

・・・じゃぁ男の子が好きそうなカッコイイ話、聞いてみたい?」


カッコイイ話かぁ・・。前に魔法を知るきっかけになった勇者と魔王の

お話もあったけどあれもそんなに闘いの場面がなかったしなぁ。



「まぁ聞いてて面白そうだったら続けて、面白くなかったら寝ましょう?」

「うん、聞いてみたい。母さんお話してよ」

「ふふ、わかったわ。――――ある山の奥深くに尻尾の生えた男の子がいてね。

そこに一人の女の子が~」


正直最初の方は今まで聞いた物語とあまり変わらなかった・・・・が、


「そこでコクウはジャック・チェーンの攻撃をかわして~二人の

がめがめ波が炸裂!・・・そして~」


戦い、戦い、戦い・・・・また戦い・・。確かに戦い物の多い物語を

聞きたかったけどこれはやりすぎ・・・。


「『ちくしょー!この星もろとも貴様らを消し飛ばしてやる!!

くらえ俺様のギックリ砲!!』ヘジータの攻撃で地球が消滅の危機に

見舞われたそんな時!なんと~」


・・・仕舞い内には星を壊すってもうそれ闘いとかそんなレベルじゃないじゃん。


「~・・・ということでなんとか虚空たちは野菜人を地球から追い払う事が

出来たのでした。めでたしめでたし。」


・・・うん、めでたしじゃないよね?まだチャーハンとかヨムチャとか

死んだままだよね?


なんか母さんのお話に心の中で突っ込んでいたら眠くなってきた・・・。

「あらあら。もうおねむなのね。おやすみなさい、リオン」


母さんの優しい声と共に僕の意識は次第に闇に包まれていった――――




これが僕の日常だった。

僕がいて、アリシアがいて母さんがいる。いつも気ままに遊んで、美味しいご飯

を食べて、面白い物語を聞きながら母さんの優しい声と共に夢の世界へ旅立つ。


僕もアリシアもこの生活が当たり前だったけど好きだった。


僕らの母さんは優しくて、暖かくて、ご飯が美味しくて、色々な事を知って

いて、僕らのために一生懸命働いて、本当に大好きな、自慢する人がいないけど

自慢の母さん。



「トラコンボール、か・・。そうだ!銃で撃つとき何か必殺技名を言おう!

・・・ハイパーシェルショット・・いや、コンテンダー・・・それじゃぁ

銃の名前か・・。エターナルガンバースト・・・う~む・・。」





だけど、・・・・・どこか残念だった。

お願いだから母さん、本当にその鉄の筒()を撃つ時はその恥ずかしそうな

技名を叫ばないでね・・・。





この穏かな日常に変化が訪れたのは丁度僕とアリシアが5歳になった頃だった。

リオンとアリシアは優秀な血統のため情緒など色々成長が早いので5歳で様々な

考察をします。

次回はアリシア視点です。

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