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第三十四話  動き出す闇

お待たせしました。また改訂があって繋がりがないのでご注意下さい。

一応この場で謝らせていただきます。申しわけありません。

side  スニーティ


「くそ!くそ!くそ!くそ!」

一体どういうことなんだ!全てが…俺の計画した作戦全てが裏目裏目に出る!俺様の獲物であるソフィア・リーシェライトには魅了の黒魔法が何故か効かなかったのが全ての始まりだ。

あれはどんな女でも一度かければ雌豚のように靡き術者の虜になるとあの方から聞いているのに何故効かない!この地方の観光客や村娘で何度も試し一人も例外に漏れず俺の雌奴隷となって売り飛ばし巨万の富を手に入れたのに何故ソフィアには効かなかったのだ!あと"ヤマダタロウ"ってなんだ!?魔物の名前のようだが…彼女の偽名なのか!?

そして…先程の俺様が用意しあの忌々しい顔のエンディミオンの餓鬼を殺させるように指示をしたイノシーは結局餓鬼を殺すことも、俺様をソフィアの前に現れた勇者にすることもなくあのエルフの雌に殺されてしまった。そうだ、あのエルフも俺の計画を邪魔しやがって忌々しい……いや、だがあの美貌、そして高密度な魔力と今は失われたエルフ族というのは大きい。

…くくく、そうだなあいつだけは俺様の奴隷としてやるか。確かに作戦は失敗しソフィアを俺のものにすることは出来なかった……だが、まだ最後の特大の切り札と最大の目的である奴らをこの村に足止めさせる計画は完璧だ。

こうなったら強引にでもソフィアを俺様のものにし、あのエンディミオンの餓鬼は殺して娘の方は幼女趣味の変態貴族にでも売り払ってやるか。

「くくくくく……ははははははははははは!!」


スニーティの笑いが夜闇と遺跡の岩に響き渡った。





side  ソフィア


「どうぞ、冷めないうちに召し上がれ」

ティーカップに入れられた赤々とした紅茶をゆったりとした手つきで傾け口に流し込む。紅茶が口に入った途端芳醇な香りと甘味料とは明らかに違う紅茶そのものの甘みが口に広がってどこか気分を落ち着けさせてくれる。

「………おいしい。やっぱりエルフでも紅茶を嗜むことってあるんですか?」

「いえいえ、私の場合は育ててもらった人とか一応名目上メイドになることもあるのでそれで身に付けました」

そういえばエルフは自分ひとりではぐれ者と言っていたからこの娘は本当にエルフの常識とか知識とかを知らないのだろう。それにしては非常に教養が高くてどこぞかの貴族のような立ち振る舞いなのだけど。



さて、なんで魔物を倒した本日の討伐クエストの主役、リリアさんとギルドハウスでしんみりお茶をしているかというと話は3時間ほど前に遡る。

あの風の国の騎士が使う風魔法の刃と似て非なる技によってイノシシの魔物を文字通りトンネルにした後周囲の人々は討伐の成功に歓声を上げてリリアさんを褒め称えた。それと同時に脅威が去ったことで冷静になったからだろうかリリアさんの美しさに目を見張る者が多数出て一人の上級ランカーが一緒に食事をしようというのを皮切りに何十人もの男が名乗りを上げる小さな混乱になったがそれはリリア自身の

「私明日にはこの地方から出て行くので食事をしているような時間はありません。申しわけありませんがご遠慮します」の一言で切り捨てられた。

まぁそれもちょっとした騒動であったが問題はここから…私に関してのことだった。


詳しく言えば私が魔物に撃った加速弾丸によって吹き飛ばされた上級ランカーのお偉いさんや魔物の肉などを狙っていた商人が死に掛けたから謝罪しろ!と怒鳴りつけてきたのだ。

まぁ…確かにまだ逃げている人がいるにも拘らず攻撃して被害を与えたのは悪かったと思っているがこちらだって強制召集で呼び出された上に私の大切なリオンとアリシアがピンチだったのだ。そもそも自分は上級ランカーと散々子女や初級ランカーに物品や施設整備を押し付けて偉そうに昼間から酒を飲んでいたくせにいざ魔物との闘いになって前衛が崩れたと知るや逃げ出したり協力に来ていた子供達や村娘を押しのけて盾にしようとしたような屑が吐くな。

…と頭にはこちらも悪いのは事実なので一応謝罪しておいた。


……まぁ、謝罪で済むほど甘くないのはやはりこの世界でも地球でも変わらないわけで、

「謝罪で済むか!俺は死に掛けたんだぞ!!そこは責任をとって俺に奉仕するか金貨10枚でも払ってもらわなければな!」

とかほざき出した。当然先程の欠点を懇切丁寧に述べてやったが

「うるさいうるさい!黙れ!!そもそも俺達がいなければ何も出来ないただの女のくせに生意気だ!貴様らがどうしても手伝いたいからと連れてきて働かせてやったのに何だその態度は!!」

この言葉で頭の血管がブチッときた。勝手に呼ぶだけ呼んでなんなんだその言い草は!そしてあの魔物はお前が倒したんじゃねーだろ!怒りに身を任せて直ぐに拳に魔力を補填し強化した拳で殴る準備をする。

こいつ魔力の流れから錬魔術すら身に付けていないようだから強化の威力が半分の私の攻撃でも十二分に効き目はあるだろう。と殴りつけようとしたとき思わぬ人物が反論した。


「魔物を倒したわけでもなくその女の子や子供を押しのけて我先に逃げ出した弱虫が、魔物に立ち向った母さんに偉そうに言うな!それにお前が逃げるためにバリケードを壊したせいで何人犠牲になったと思っているんだ!」

リオンが男の前に立ち塞がり怒りの表情で反論を吼えた。そしてよく周りを見渡せばリオンの意見に同意するように怪我をした何人もが男を睨みつける。

それにしても大人の前に啖呵を切れるようになるとは…たくましくなったわねリオン。


「な、なんだその表情は!俺はランクBの冒険者だぞ!王都のギルドにもコミュニティに属しているんだぞ!貴様らなんか俺が中央に―――」

男の長ったらしい脅しは銀色の閃光によって遮られた。


「黙りなさい。私の成果をさも自分の物のように吐くな下等種族の人間風情が!そしてソフィアさんが何もやっていないと貴様は言ったがそもそも左翼にいた私がここまで来れたのは彼女が魔物の動きを一時的に止めたからです。」

レイピアを男の目の先3cmの所でピタリと止めて、あの妖精の様に優しかったリリアさんがまるでというか本物の女騎士のような凛々しくも厳格な表情と冷たい言葉で男を罵る。ちなみに先程までリリアさんに黄色い歓声を上げていた者全員がそのあまりの豹変ぶりに目を点にしていた。


「そういえば貴方はいいましたよね?被った被害に金貨10枚払えと……そうですね、私のご主人様は常々私の無償の人助けに呆れ果てて『せめて一人につき金貨1000枚、若しくはそいつの全財産ふんだくってこい』と言ってました。だから貴方をわざわざ助けた私に謝礼として金貨1000枚、もしくはギルドカードを含めて貴方の身ぐるみ全て寄こしなさい。」

…これは…これが本当にあの妖精のような優しく美しかったリリアさんなのだろうか?周りの人間全員顔青くしているし…。そしてやっぱりあの娘の主、外道だ。全財産ふんだくれ、なんてえげつないことをこんな清楚で可憐な娘に命じるとか…


「そ、そんな馬鹿な話があるか!どこにそんな話がある!謝礼などせいぜい金貨1,2枚が通例だ!!」

「この国の常識など知りません。ご主人様の命令こそ私の全て。いいからさっさと払いなさい」

案の定上級ランカーの男は喚いて反論したが即座に切り捨てられた。それにしてもこうも堂々と"ご主人様の命令こそ私の全て"と言えるとはよほどその主のことを信頼して慕っているのだろうな…。

イケナイ考えが浮かんでしまったが内緒だが。


「…さて、おしゃべりは済んだかBランク。お前の今回の行動や発言は冒険者、延いては風の国の民としてあるまじきものだ。私と共にギルド本部の

査問協会まで来てもらおうか?」

「ゲェェ!ギルドマスター!!俺は悪くない!俺は悪くないぃぃぃぃぃ!!!」

突如現れたデレゼ村のギルドマスターのダゴナスさんに上級ランカーの男は首根っこを引っ掴まれてそのままズルズルと連れて行かれた。どうやら一件落着したのだろうか?その証拠に先程男と一緒に抗議していた中級ランカーや商人は同じように何人かは捕らえられてそのまま連行。残った何人かはそそくさとこの場を立ち去っていた。


ふと、一人の子供を抱えた女性が私の前で立っていることに気が着いた。この人も、もしくは彼女の子供も私の攻撃で被害を受けた一人なのだろうか?

そりゃ子供が傷つけられたら怒るよね…とビンタの一つでも飛んで来るのかと思い目を瞑る。


「あなたの……貴方のおかげで息子が助かりました!ありがとうございます……本当にありがとうございます!!」



――――え?

いつまでも飛んでこない頬の痛みと突然の感謝の言葉に目をそっと開けてみると何人もの子供やその母親、手伝いに来ていた村娘や初級ランカー達が一同に私に対して頭を下げていた。

どうやら私が撃ったあの一撃で膝を擦り剥くくらいの傷を負った者はいたらしいが重症には至らずむしろあの加速弾丸の衝撃でイノシシの走行軌道上から外れて急死に一生を得たとかなんとか。さらには私があそこでイノシシを止めていなければ丁度後ろに子供達の集団があって全員殺されていたかもしれない。だから貴方のおかげで救われました、と何度も何度も感謝の言葉をかけられた。


そしてその後、Sクラスの魔物討伐成功を祝って宴会を開こうと冒険者たちが特に活躍したリリアさんや私を誘ったがリオンもアリシアも既に疲れ果てて立ちながらコックリコックリとしていたのでご遠慮。そしてリリアさんの方も明日は早くからここを経つとのことなので辞退しそれを聞いた冒険者達は一気に意気消沈していた。


そしてようやく闇封じの村のギルドハウスに到着しすっかり帰路で眠ってしまった子供達をベットに寝かしつけていた時にリリアがティーポットとカップを持って「一杯どうでしょうか?」と深夜のお茶会をひっそりと開き冒頭に至る。


「そういえばリリアさんのあのサーベルから出た風の刃?凄い威力ね。やっぱりエルフだと魔力が強かったり特殊な強力魔法が使えるの?」

あの時リオンを助けた時にレイピアから突きで放たれた風の刃的なものはまるでドリルで抉ったかのようにあの加速弾丸すら通さなかった硬い皮膚のイノシシにあっさりとトンネルを構築してしまった。

ベラストニアでプロトゴノス…団長?が使っていた風の刃の魔法より遥かに

強力でしかも魔力も殆ど感じなかったから極少ない魔力で膨大な効果を発揮するエルフだけの特別な魔法なのだろうか?と話題が思いつかなかったので

聞いてみた。


「ああ、緋燕突のことですか?あれはエルフ魔法ではなく私のご主人様から教わった古流剣術です」

「……え?あれって魔法じゃなくて物理攻撃だったの!?あんな風の刃的なもの物理で出来るの!?」

「はい。だから修練して感覚のコツさえ掴めば誰でも…とは流石にいきませんがそこそこ剣のセンスがあれば習得可能ですよ。そもそもあれは…」


概要はこうらしい。モノを斬るには段階があるそうでまず最初の段階は叩ききる。要するに刃物のように尖ったもので強い荷重をかけて潰し切ること。次の第二の段階が切り裂き、断ち切り。素早く刃を通すことでモノの抵抗が発揮するより早く切り裂く。俗にこの第二段階が優れている者ほど名剣士とか剣豪と呼ばれているそうな。まぁ確かに相手が仕掛けるより早く敵を仕留めたらそこで勝ちだからね。

そしてここからが本題。次の斬撃の第三段階になると本物の斬る、という行為になってくるらしい。なんでもモノと刃物の最も斬りやすい角度と力の方向を見極めて物体の抵抗を完全に0の状態で斬るのが第三段階、絶対斬撃という。これを極めるとそこいらで売っている包丁で硬い岩とか鎧なんかも真っ二つに出来るとか……恐ろしいな。

そしてリリアさんが使った緋燕突とやらがその応用であり次の段階、固体だけでなく水や空気といった流体の絶対斬撃を見極めて空間ごと斬る斬撃の第四段階、斬撃の移動。


この技でイノシシの魔物を空間ごと突き斬ったからあんなドリルで穴を開けたような悲惨な姿となったらしい。……うん、ここまで聞いたけど全くわからん。というかエルフの剣士って普通剣に強力な魔法を宿らせて闘うといったイメージだったのにこの娘の剣ってよく分からない物理のオンパレードだから何だか神秘的なエルフファンタジーのイメージが瓦解していくような錯覚を覚えてしまう。



その後も私のことやリオン、アリシアのこと。彼女の主人の惚け話…等などいつの間にか自分の娘のように語り明かして月は傾き、夜は更けていった。

ぶっちゃけこの二ヶ月全くこの作品を書く気にすらならずもうエタルか削除するか悩んで結局放置してましたが他作品書いても結局この作品のことが頭に過ぎって上手く集中できず帰ってきた次第です。

さっさと終わらせて次に移りたいです。

一応完結までおおまかな展開は頭にあるのでまた完結目指したいと思います。……投稿は遅くなると思いますが。


斬撃の段階については作者の本番作(投稿未定)から取りました。

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