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第三十一話  封印の村

再度変更します。すみません。

ソフィア side


ポペルの森をようやく抜け出して早一週間、私たちはひたすら草原地帯が続く平原を進んでいる。道中何故か遠方にオークの群れを発見することがあったが、幸いあちらさんには気づかれることなく少し大回りで王と方面に向かったこと以外は特に特記するようなことはなかった旅路であった。

そしてリオンによるとなんでもこの平原を抜けて小高い丘をさらに抜けるとようやく王都に辿り着くらしい。道中まともな街に辿り着いたのはフォレストの森とポペルの森の境界地にあったジェリシュの町だけでそれ以降は町どころか村にさえ辿り着けず一応川とか池はあったので水浴びして体臭は問題ないのだけれど体力的にも精神的にもそろそろまともな寝床で寝ないと厳しい。

そんなわけで今は目を皿のようにして広大な平原から村や町を探していた。


「はぁ……町どころか家一軒すら見当たらないわね…というか王都なのにその付近の平原に何も無いってどうよ?」

「確かにこの辺って特に地盤が悪いとか風が強いとか水害が多いって訳でもないのに人が住んでいないね。何かあるのかなぁ?」

リオンの言う通りこの付近には小川も流れているし地面が沼になってるわけでもないし王都から近い(とはいえ数十キロはある)のに人っ子一人住んでいないのだ。何か理由…現代でいう訳あり物件的何かでもあるのだろうか?


「そういえばアリシアはさっきから何読んでいるのかしら?」

「う~~ん…え?これリオネッラさんから貰った風の国王都の観光地についての本だよ。ねぇ、王都に着いたらまずウィンディーナ宮殿行こうよ。それから天空都市区画にも行ってみたーい!」

そういえばこの旅の途中色々あったから忘れかけていたけど王都に着いたらプロト…プロトゴナスさん「プロトゴノスさんね、母さん」

そう、それに頼まれた城下町の6丁目のアテネさん?を「テミスさんだよ、お母さん」……に情報を伝えなければいけないんだっけ?

ただ、それが終わった後、私たちはどこかで生活を再開させなければいけないのだけれど当然戦場となったヒーズタウンに戻っても恐らく家は荒らされている上に街も壊滅状態で物資が手に入らない。おまけにあんな戦線の近くじゃまたいつ攻められるか分かったもんじゃない。

そんな訳でこれからは王都か王都近隣の街にでも住もうかと思っているのだが新たな職は本当にどうしよう?

王都とはいえそこに住む人間の食糧の供給を賄わなければいけないから多分大型の農場的なものはあるのだろう。だが以前のように排他的な生活は間違いなく出来ないと思われる。

何故なら都市部郊外というのは平野が多くて以前のように程好く町との距離がある未開発の山など存在しないからである。それにそもそも山生活をやっていたのは日記から自分が指名手配されていると思い込んでいたことが大きな理由だがここが追われていた白の国とは違う国で指名手配されていないと分かったのだから今度は都市部で働いて生活するのも悪くないかもしれない。

それにその方がリオンやアリシアにとっても学校…いや教会か。とか市場とか近くにあって便利で良いかもしれないし。


「あ!母さん村だよ!あんなところに村がある!」

そんな感じで王都に着いてからの事に期待を膨らませているとようやく村についたらしい。村の場所を視認したリオンが私の袖を引っ張りながらあそこあそこと指を差す姿が可愛らしくて特に意味もなくフワフワの金髪の頭を撫でる。あらあら紅くなって本当に可愛らしい。

「ほ、ほら母さんなに撫でているんだよ。村に早く行って宿とらないと駄目でしょ?」

「う~~…お母さん……お兄ちゃんばっかりずるいよ~~~」

ぷりぷり怒った顔でアリシアも撫でて欲しかったのか私の袖を引っ張る。

あの屋敷での離れ離れの一件から子供達はやたら甘えてくるようになった。ただ、どうやら子供達だけで3週間の生活をしのいだことから以前にも増してしっかりとして何だかんだで夜の警護とか私の背に乗せて歩くことがなくなった。その代わり今みたいに無意味に撫でるのを嫌がらなくなったり一緒に寝るときは私の腕や袖をぎゅっと握り締めて眠る。

そして寝言で『お母さんいなくならないで…』を聞いた時はショックでやられた。あの執事達には泊めてくれたりしたことについては感謝しているがこれについてだけは本当に洒落にならないから少し恨む。

アリシアにも撫でてあげると気持ちよさそうに目を細めながら私の腕にしがみ付く。

まぁ可愛いのだからいいか、そう思いながら左腕にアリシア、右手の袖をリオンに引っ張られながら遥か遠方に見える村へと向かっていった。


これから何が始まるかも知らずに……




??? side


「なるほど…これが封印の遺跡と封印の魔石か。封印されてなお周囲に満ち溢れるこの力は紛れもなくコルテュスの力…」

ローブに身を包んだ男が撫でるような手つきで立派に整えられた遺跡とその中央に鎮座している石に触れる。そしてその呼びかけに答えるかの

ように石は薄らと青い光りを発していた。

男はそれを確認するとローブから一冊の黒い表紙の古書を取り出すとそれを石の上に置いて手をかざす。

「■■■■■■■―――!!」

男が言葉として認識できないような奇妙な声を上げると古書は石に溶けるようにして消え、それと同時に石から黒煙のような黒い霧が立ち込めた。


「それにしてもまさかこのような場所で協力が得られるとは思わなかったぞ。――――男爵」

「くくく…それは俺も同じだ。まさか白の国を追い出された俺がどういう巡り合わせか白の国に求められ、あの憎きエンディミオンに復讐を果たせるとはなぁ」

ローブの男の背後から現れた貴族のような上質の服を着た男は薄ら笑いを上げながら答える。


「…で、手筈通り対象はこの村に停泊中か?」

「ああ。おたくらから貰ったあのオークを適当に配置して誘導したからな。それと……そろそろ俺の不細工なペットの世話に追われて何日かはこの村で足止めだ。まぁあんたが教えた魅了の黒魔術だけで十二分だと思うけどな。それより約束は分かっているだろうな?対象を捕らえた暁には…」

「分かっている、エンディミオンへの復讐の余興として貴公が手を下す」


「くくく……くくくく。そうだ…復讐だ。そしてようやく俺は彼女を手に入れられる…くくくははははははははは!!!」


貴族の男とローブの男は未だ黒い霧を放つ石を笑いながら眺めていた。





ソフィア side


「闇封じの村?なにその厨ニ病全開的な名前。もしかしてあれ?俺の邪気眼が疼くぅぅぅぅ!!…ていうの?」

村に付いた私たちは早速ギルドハウスに向かい現在昼食を取りながらリオンにこの村のことを聞いている。何だかんだでこの村ボロ臭い雰囲気があるのだが観光地なのかそれなりに施設はしっかりしていたので今日は久々にふかふかのベットで眠れそうだ。アリシアなんか昼食より先に「お風呂入る!」と言ってギルドのお風呂に一人で行ってしまった程だ。

やっぱりあのお屋敷生活から急にまた野宿生活だと厳しいよねぇ…。


「……お屋敷の文献で見たんだけどこの村は遥か昔に勇者が闇を操る恐ろしい魔物を封じ込めたことで有名であの中央にある遺跡がその封印跡なんだってさ。ところで邪気眼ってなに?」

「フッ。リオンも14歳になれば分かるわ。邪気眼を持たぬものには分かるまいよ」

邪気眼はともかく勇者が封印……勇者って本当にいたのね。ということはあの遺跡の置くにはヒーズタウンにいた黒いドラゴンみたいなのが封印されているっていうことか。昔やったゲームでこういう封印された~的なボスをあえて封印を解いて倒すとレアアイテムゲット!とかなっていたけどだいたいそういうボスってバカみたいに強いんだよね。

そうと分かれば触らぬ神に祟りなし。そういうのは結構です


だいたい強力なボスって現代で考えると核兵器だろ?あんなもの倒したところで死の灰しか手に入らないよ。


「そういえばここから王都って大体どれくらいで着くのかしら?」

「う~ん…道中なんかオークの群れがいて迂回したから…母さんがお屋敷で作った"ホウイジシャク"を参考にするとちょっと本来のルートより北に来ちゃっているけどあとニ、三日南西に歩けば王都に続くウィンドロードに出るからそのまま道沿いに歩けば王都の城壁外区画まですぐ、だね」

「王都の城壁外区画?王都じゃなくて?」

「風の国の王都は広いからいくつもの区画に分けられているんだって。でも王都の城壁外区画まで着いたら宿泊施設だって多いし風の国の特産品、浮遊船だってあるから中心街まで半日と掛からず行けるからそこまで行けばもう王都に着いたようなものだよ」

浮遊船…前に言っていた魔道具のバス…?みたいなものか。確かに交通機関があるなら例えがアレだが都心まで距離のある八王子から東京の間を電車を使えば1時間ちょいで着ける様に郊外から中心街まで少しの時間で着けるから実質郊外に着いたらもう王都に着いたと言えるということだろうか。

ともかくあと数日でようやく王都に着けるというのは何だか肩の荷が下りたようなほっとした気分になると同時に、今まで考えないようにしていたこれからの就職先とかのことでジトッと重たい気持ちも押し寄せる何だか複雑な気分を昼食のトマトスパゲッティと共に味わい深いため息をついた。



「なるほど…貴女が噂のお美しい銀色の髪の女性ですか。お初にお目にかかります、僕はこの地方を治めている男爵、スニーティと申します。以後お見知りおきを」

「「なにこれ…?」」

何か来たんだけど?リオンと声をハモらせて唖然とする私を前にやたらキザっぽくて俗にいうサラリとした爽やか系イケメンという奴が突然家族団らんを楽しんでいる私たちのテーブルまでやってきて私の手を取り勝手に手の甲に…キスをした。

「なっ!?なななお前は勝手に何をやっとんだ!!このボケぇ!!」

すぐに手を引っ込めてキザったくてムカつくその頭をドつこうとするがひらりとかわされてしまい空振りに終わる。うぇぇぇ…気持ちわるい。

いくら女性の言葉使いとか仕草(ちゃんと出来ているか不明)に慣れたかといって男にキスされるとかまだ中身が何だかんだで男の私から言わせて貰うと勘弁して欲しい。愛嬌のある顔立ちで誠実な私の息子のリオンならまだ許せるが、見ず知らずの特にこういう元の世界でも女を誑かしまくりそうなチャラ男は大嫌いだし気に食わん。

「はははは、なかなかお転婆なご婦人のようだ。それにしても本当にお美しい、是非僕の妻になって頂きたい」


……こいつはいったい何を言っているのだろうか?いきなり妻になれって…いくら現代でも性が乱れて出会って数秒でホテルでベッドインとかあるにしろ妻はないだろう。結婚とかってそんな簡単に決められるものじゃないしそもそも私は人妻だ。

……あれ?でもリオンとアリシアの父親、エンディミオンとは日記を見た限り正式に結婚する前に婚約を向こうから破棄されて逃亡生活をスタートした上に姓もリーシェライトのままだから戸籍上(白の国では指名手配だから在るのか不明)では私ってまだ未婚になるのかしら?でもそんなこと言ったり知られたらシングルマザー云々で五月蝿いし面倒くさいから浅木祐二が夫ということにでもしておこう。


頼むぜマイダーリン、前世の俺。

「すみません男爵様、母さんは既に結婚しているので貴方の妻になることは出来ません」

とかなんとか自問自答をやっているうちにリオンが鋼鉄の鉄板を貼り付けたような無表情で丁寧に男、す…す…スイトウ?に答える。それに対してスイートーは相変わらずのイケメンスマイルしやがっているけどどこかリオンに対して忌々しそうな目を向けているのは気のせいだろうか?


…それにしても、何だかこいつを見ていると気持ち悪くなってくる。例えるなら砂利山道でユサユサ揺れる車内で字の小さい文庫本を読んで車酔いしたような気分がする~。

しばらく男は爽やか笑いをしながら突然、私を目をじっと見つめて、リオンはただ無表情に『こいつ面倒くさいなぁ~』というような視線を寄こしてスープを飲み進める。



―――その硬直時間が体内時間的に5分も続いた。ちなみにその間私が考えていたことはその車酔いした時に読んでいた文庫本の内容…確かファンタジーものである美少女姫様が醜いオークに孕まされたと思って周りの人間が監禁していたら数年後、実際にお腹の中にいて産まれたのは旅の途中で出会った勇者の子供で―――という内容だったような?まぁ今この場では本当に関係ないしどうでもいい内容なのだが。

というか何でそんなことを思い出した私?


「………どういうことだ?………ご婦人?僕を見てどう思われますか?」

「…すごく………キモいです」

しばらくしてボーっとしている私にネオニート…?は不思議そうな、何かあり得ないという表情をしてそっと尋ねてきたので今思っていることをありのまま告白する。


「…くっ………まあいいでしょう。ですが僕は必ず貴女をお迎えに参ります。それをお忘れなきよう……そういえば貴女の名前は?」

「……山田太郎」

ネオニートは何だか勝手に悔しそうな表情になって名前を聞いてきたので咄嗟に出た日本なら明らかに"適当に言っただろう!というか男の名前じゃねーか!"を名乗り、それを聞くと男は爽やか笑顔で軽く手を振りギルドハウスを去っていった。



「なんだったんだあいつ……?」

「…母さん、"ヤマダタロウ"って何の魔物の名前?それとスープが冷めちゃうから早く飲みなよ」

リオンはただ母の美貌とそれに対してズレている母にため息をつきながら淡々と食卓を進めていった。

正直この偏の結末辺りを書いていますが最終到達点は決まってますが途中の経過がなかなか上手く決まりません…また改定あったらごめんね☆

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