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第二十七話  魔力付加

ソフィア視点

「魔力付加…?要するに何か物体に魔力を流し込むってこと?」

執事から出された新たな課題に少し苛立ちを覚えながらも聞き返す。しかし物体に魔力を流す、ということは既に岩破壊の修行で岩に魔力を流して内部から破裂させるという執事が求めている効果どおりかは分からないが一応物体に魔力を流すことに成功している。

「いえ、単純に魔力を流し込むだけなら先程御嬢様が行っていた岩破壊で十分です。少し説明が足りませんでしたね。魔力付加で付加する魔法は錬魔術のように単純な魔力を流し込むのではなく属性魔法を流し込み物体そのものにその特殊な属性の効果を付加するものなのです。なので性格には魔力付加は錬魔術ではありません。」

要するに何か…例えば石なんかに私の時間制御の能力を付加するということだろうか?しかし時間制御の特性を付加したところで出来ることは加速と減速。さらに厳密に言えば減速しかまともに使えない。王都へ向かう道の中で度々暇を見つけては時間制御の練習をしたのだが減速魔法については効果時間や効果そのものも非常に安定しているのだが、対して加速がどういうわけか碌に制御が出来ない。速度は明らかに常軌を逸した倍速になるし、効果時間も5秒~30秒とまるで安定しない。


私の時間制御についてはそんな感じなのだが、これを物体に付加と聞いてもいまいちピンと来なかった。そもそも石に時間制御を付加したところで出来るのはその物体自体の時の流れを緩めるか早めることだけ。動いている途中に時間制御をかければ速くなったり遅くなったりするのだが、静止している物体に時間制御を付加したところで得られる結果はその物体を速く経年劣化させるか劣化を遅くするかだけ。

「……時間制御を付加しても殆ど意味ないじゃん。精々賞味期限を延ばすとかそんなのしか役に立たないし…」

「本当にそう御思いですか?……とにかくこれに関しましては属性魔法を持たない私では直接指導をすることは出来ません。なので一度ご自身で御考えになってみてください。時を操るとはどういうことなのかを、その本質を。ただし魔力の付加そのものの仕方は御嬢様の岩破壊の方法と殆ど同じになります。」

それだけいうと執事は壁に立てかけてあった箒を持ってどこかへ行ってしまった。



「はぁ…いったいいつになったらリオンとアリシアに会えるのかしらね…とりあえず早速手頃な石にでも魔力を付加してみようかな。……賞味期限延長の主婦にしか役に立たない微妙なものだろうけど」


丁度足元に拳大の大きさの石があったので手にとって精神を集中――――――


さっきの岩破壊では流し込んだ魔力をただ暴走させればよかったのだが今回は暴走させることなく魔力を石の中で停滞させなければいけない。だからその物体に入れられる限度の魔力以下でなければ当然暴走してしまうわけで…



ガコッ…


今までの要領でやっていると必然的にこうなる。石はまるで砂糖の塊のように独りでに砕け粉々の砂を撒き散らしていた。

「はぁ…まずは拳大の石がどれだけの魔力に耐えられるかの実験から、だな…。」


樹海の裾にかかっている夕日を見つめながらやれやれと呟いた。





「そういえば私のダブルコンテンダーってどこかしら?」

一応近接戦闘向きの魔法(物理)である錬魔術を身に付けたから無手でも戦闘可能に…なったのだろうか?今出来ることっていっても明らかにコストパフォーマンス最悪の身体強化魔法と付加したものを爆散させるなんちゃって付加魔法のみ。

……これってもう少し何か必殺技的なものにならないだろうか?どう考えても派手さもなければ火力もない。せめて手からビーム的なものを放出したり空を飛べるようになったりしないのだろうか。まぁたかが2週間ででも身体強化が出来るようになっただけでも上出来だからあまり欲張るものじゃないし今のところ修行を完遂させてリオンとアリシアに会うのが一番の目標だから余計なことを言って修行を増やすのは勘弁だから黙っておこう。それはともかく本当に銃はどこへ行ったのだろうか?


「もしや御嬢様?その"ダブルコンテンダー"とやらはこちらの筒になりますか?」

丁度部屋の中を探そうと思って立ち上がった際にメイド長のリオネッラさんが探しものの銃を持ってきてくれた。

「ああ、それです。でも何でリオネッラさんが?」

「御嬢様がここに来た日に倒れられた城門の前に落ちておりましたので御嬢様の物かと思い預からせていただきましたが役に立ててよかったです」

リオネッラさんは銃と一緒に落ちていた弾薬も私に渡してくれて気が付いたのだが残りの弾薬が5発を切っているのだ。ヒーズタウンを脱出した際に既に弾薬数は少なかったがそれからの野宿生活中、特にギルドとか何も無い街では狩りで仕留めた動物の肉や毛皮を売って生計を立てていたため道中も数発使うことになってしまったのだ。


「弾薬数がそろそろまずいな……。リオネッラさん、この付近に硫黄…黄色い石とか砂鉄とかないですか?」

「黄色い石………あの独特の臭いのする少々脆い石ですか?確か近くの街で見たことがありますね。今度街へ赴いた際に入手しておきましょう。砂鉄についてはその街の鉄鉱所から入手の手配をしておきましょう。それらがその"ダブルコンテンダー"の材料なのですか?」


どうやら硫黄も砂鉄…もとい鉄粉については問題がないらしい。それは幸いだったが問題は残る一つ、即ち硝石だ。硝石は一応鉱物の様に地中にあったりもするらしいのだが普通に作ろうと思うととてつもなく手間がかかるし時間もかかる。そのためこれをどうにかするか考えなくては……あれ?何かリオネッラさんの言葉で聞き逃しがあるような……あ。

「ちょっと待て、近くの街!?この近くって街があるんですか!?というかここって場所的に何処になるんですか!?」


今までポペルの森をさまよい歩いてきたのだがやはりいつの間にか森を抜け出していたようだ。ということは既にポペルの森の先にある平原地帯がこの屋敷の場所に当たるのだろうか?

「落ち着きください御嬢様。この屋敷の場所はフォレストの森の最南端、歩いて2刻程の所に鉱物の町ジェリシュがある水の国と風の国の国境付近の無所属国地帯です。」


……水の…国?フォレスの森?





それから屋敷にある地図と照らし合わせてようやく現在地を詳細に認識することが出来た。ポペルの森から西を目指していた私たちはどういうわけか北上していたらしくポペルの森の最北端から延びるフォレスの森にまで来てしまったらしい。そしてこの付近の地域は現在の風の国やら白の国やら水の国が出来る前の前皇国の名残で他国が一切干渉できない無所属国地帯という場所らしい。しかし何で前皇国の王都があった場所がそれになってないのだろう……。それはそうと北上というトンチンカンルートでこんな辺境まで来てしまったものの幸いにも屋敷の場所はポペルの森の西部に広がる平原の末端から近く、上手く平原にさえ出れば何とか元のルートに戻れそうだった。


「それにしても鉱物の町ジュリシュか……明日とかにでも行ってみようかしら?」

先程聞いたジュリシュの町は硫黄や鉄鉱石が産出してるらしく珍しいものがたくさん見れそうなので一度行って見てみたい。珍しい鉱物を入手して次の町で売れば上手く行けば路銀の足しにもなるし。

そう思って何気なく呟いたそれはリオネッラの鋭い一言で遮られる。

「駄目です。御嬢様は修行が完了するまでこの屋敷を出ることは許しません」

「ちょっと待て、別に子供を残して屋敷を去る訳でもないのにただ武器とか路銀の足しになりそうなものを見に行くだけでも駄目なの?」

流石にそれじゃこの屋敷に缶詰…いやむしろ監禁されたといった表現の方が正しいじゃないか。今までは何だかんだでここのメイドとか執事のことを信用してきたが途端に胡散臭くなってきたぞ。

「あくまで修行が完了するまでです。詳しくはまだ話せませんが今の状態でこの屋敷を出れば間違いなく御嬢様は大変危険な目に遭われることでしょう。ですからジルド執事長の修行が終わるまで…どうかお待ち下さい」


そういってリオネッラは深々と頭を下げた。この様子では何を言っても焼け石に水だろうがそれにしても先程の言葉……"今の状態で出れば大変危険な目"…というのが気になる。そして今修行を受けている戦闘能力増強の"錬魔術"。仮に屋敷の人間が私たちを陥れようとしているならそもそもこの錬魔術を教えている時点でおかしいし、単純に推測すれば『今のお前のような雑魚が外に出てもこの先にうじゃうじゃいる魔物とかに即効で殺されちまうぜ』ということなのだろうか?まぁここの人間は行動が胡散臭いのだが雰囲気とか感情とかがあまり悪い気がしないというのも不思議な感じだ。


何にしてもとにかく新たな課題の魔力付加を完成させるのが最優先だろう。仮に屋敷の外に魔物がうじゃうじゃいたとして力があればいくらでも対処の仕様があるし錬魔術はまだ強化しか使えないがあの執事を見ている感じでは色々応用が効きそうだ。とにかくまずは小石に魔力を入れて暴走させないようにするところからか……頑張ろう。

更新が遅れて申しわけありませんでした。理由は後ほど記載します。

それとまたもや説明回でしたね…

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