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第二章 プロローグ

白の国王宮、某所


「また奴らか、忌々しい鮮血のエンディミオンと嵐の雷プロトゴノス……」

「先のベラストニアの征服も後一歩のところだったというのに…」

薄暗い部屋。黒い煙が充満したその空間の円卓では8人の男が先の戦争での結果を報告していた。


ベラストニア戦争。1年の硬直からたった1週間ほどで決着がつき風の国に多大なダメージを与えたと云われる戦争。本来であれば領土の殆どを制圧でき勝戦国として今頃この円卓でも湧いていたはずだったが、最後の一日のエンディミオンとプロトゴノスによる電撃戦によって、奪った領土の大半を取られてしまいおまけに現地に派遣していた兵の数はその大半を失ってしまい、最終的な結果はとても勝戦国

のものとはいえない様な結果となった。


「大人しく陛下に飼い殺されておればよいものを、たかだか女一人のために何と愚かな…」

「まぁそう言うでない。奴が道化となっているからこそ我々の計画も進んでいるというもの」


宥める男に戦争結果の書物を忌々しそうにみている男は声を荒げた。

「だがその道化にここまで手酷くやられたのだぞ!賊国に与えた損害はたったの3000、それに対し我らが被った被害は18万だぞ!この責任はどうするのだ!?」

銀の国(賊国)がベラストニアへ救援兵を派遣した際に魔物による猛攻で一万の兵の三分の一を削ることが出来、白の国は甘く見ていたのだ。ボロボロの賊国の兵になど何も出来ぬ。そう思っていた結果、その数たった6000の軍によってもたらされたものはベラストニアで侵略を進めていた白の国兵全員の死という最悪の結果だった。


「だが、風の国から大量の奴隷を手に入れたではありませんか。奴らに因子・・を植えつけた上で子を孕ませれば今より上質な兵が手に入るではありませんか。それに風の属性魔法持ちの者も既に手中に…」

今回の戦争での風の国の被害の内、民間人で最も多かったのは拉致だった。表面上各村や街などで大虐殺等も行ったのだがその裏では魔物に避難途中の民間人の拉致を命じて膨大な数の人間を拉致することに成功し、今では地下牢獄にまとめて監禁してある。また軍人であっても死にかけを何人か回収したため風魔法の術者の確保も期をせずして出来た。


「しかしそれでもたかだか5万!残り13万はどう埋め合わせをするのだ!」







「人間の生死など、どうでもよいわ」





突然の声と共に馬事雑言で溢れかえっていた円卓は一瞬にして静まった。


「人間など所詮放って置いても勝手に増殖する、いくらでも替えはいよう。それより先の聖戦では例のアレは成功したのか?そちらの方が重要だ」

声の主は円卓の中でも飛び抜けで大きく豪華な椅子に座る男。男は今回戦争での死亡者数の書かれた報告書をつまらない物を見るかのように指を鳴らして生み出した黒い炎によって一瞬で灰へと変えた。


「は、はは!今回の戦にて例のものの破壊は確実に成功しました。」

「ふむ、ならばよいではないか。この戦争の最大の目的は矮小な領土などではないもっと崇高で強大なものなのだ。人間の数がどうこうくだらん話をする前に残りの例のアレを効率よく破壊できるかについて話せ。」


そこで男の下に一人の伝令が言伝にやってきた。この円卓のなかで男は最も偉いのか、その伝令が終わるまで円卓の男たちは一言も発しなかった。



「……銀色の…悪魔?………銀色…銀髪……っ!まさか…」

伝令にしばらく思案していた男だったが何かを思いついたらしく目を見開き、やがて円卓の男達に向かい合った。


「諸君…非常に忌々しい知らせだ。我らが究極の敵にして最大の障害因子である"ソフィア・リーシェライト"が未だに生きていることが判明した……」


その言葉に円卓の男たちは皆驚き口々に「どういうことだ!」「あの女は始末したはずだ!」

と円卓は先ほどより馬事雑言で溢れかえった。


「ただの見間違えかもしれんぞ。ただの白髪を銀といったのかも」

「だが銀髪などあの古代皇帝の血筋以外はありえん…」



「……諸君よ。報告ではあの小娘はどうやら我々が見たことも無いような炎の魔道具を操り何十もの敵を殺人鬼の如く惨殺したそうだ。我はこのような者が"ソフィア・リーシェライト"とは到底思えんが……しかし不安は拭えぬ。よって本日より他国に気づかれぬように各地に奴の捜索隊を派遣したいと思う。」


男の言葉に円卓の男たちは伝令から配られた報告書に目を通りながら恐る恐る意見を述べる。

「しかしこの情報は不確定要素が多々あります…。あの小娘が人殺しを出来るとはやはり到底思えません。しかも笑いながらなど…。やはりこれは別人なのでは?」

「だがもし奴が本物ならどうする?あの存在の末裔がもし生き残って再び我らの邪魔をしたらどうする?私は陛下の提案に賛成だ」


「…いや、この場合むしろ生き残っていた方が好都合かもしれませんぞ?あの娘を捕らえエンディミオンの人質にすれば奴はもう我らの操り人形同然。」

「おお!それは素晴らしい。屈辱にまみれた顔で奴の信頼するとやらを虐殺させるのも一興でしょうな」

「拘束されて何も出来ないエンディミオンの目の前で愛する女が人質にされ自分の目の前で犯されればあのエンディミオンはどのような顔をするのだろうな?ククククク…」


「では諸君、捜索隊を結成することに賛成…ということでよろしいか?加え忘れたがなにも今回の捜索隊は奴の捜索だけが目的ではない。我らが古き同胞を目覚めさせるために使うという目的も含む。それでよいか?」


「「陛下の御心のままに」」

第二章開始となります。


閑話予定だったものを章立てにしたので一章に比べてやたら短くなると思います。


追記:イラスト移動

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