第一話 残念の爆誕
眼が醒めるとそこは炎の海だった。
「・・・は?なにここ!?なんで俺こんな所にいるの!?」
これはなんだ?火事か?いや、空が煙で見えづらいが確かに見えることを考えるとここは外。外で火事、さらには自分はその中心地にいるようだ・・・。
明らかに非日常的。
自分はこんな非日常にいるような人間だったか?なんで自分がここにいるのか、この状況は何なのか訳が分からず意識を失う前の情報を必死に整理する。
確か昨日は・・・勝てば2,000万円負ければ死ぬというギャンブルやって16回までは勝ち続けたのに最後の17回であり得ない負けをしてしまいそのまま黒服にコンクリ詰めにされ東京湾に沈められて―――
「・・・って!明らかに非日常に足つっ込んでたじゃねぇか俺!!
なんだよ負ければ死ぬって!?カイ○か!?」
意識を失う前の自分を思い出して頭を抱えたがとりあえず海に沈められたはずの自分は何の因果かこうして陸に居て呼吸が出来る。
それよりも問題は周囲の大火事。
立ち上がって周囲の状況を確認してみると炎の中に焼け焦げて原型がよく分からないが・・・リアカー・・いや、馬らしきものも燃えてるところを見ると馬車か?と複数の人間の死体のようなものが視認出来た。
「うぷっ・・・。くそ、焼死体か・・・?いったい全体どうなってんだ?というか馬車って・・。今時馬車なんてあるのか?・・・それより早くここから逃げた方がいいな・・。俺はまだ火傷とか特に無いからいいけどこのままじゃ天然焼肉にされるしそれに・・・。」
視界を周囲に向けると人の気配を複数感じる。しかも身を潜め静かな殺気を放つこの類の気配は碌な奴じゃない。もしかしたらこの火事や火の海の中に居た焼死体の原因はこいつらかもしれない。
そう判断して身を屈め音を立てないようにしながらそっとその場を立ち去った。
何とか炎の海からも気味悪い気配からも完全に抜け出し暗い森の中をただひたすら進みながらこの状況を考察してみる
―――まず何故海で沈められたはずの自分が山奥にいるか・・・。
多分あの後"やっぱりこいつここで殺さず臓器売買やらにでも使おうぜ"的な理由で陸に揚げられ気を失ったままこの山奥に連行。
んで他の臓器売買者とあの馬車で運ばれてたら他の組の奴ら出てきて抗争発生で火事になり、あの嫌な気配は他の組の黒服か?
―――――いささかどころかかなり無理があるがこれで納得しておこう。
とりあえずこれで当面の方針は"とにかくあの黒服共から逃げるためひたすら
山の中を進み続る"と"街中に紛れて黒服から隠れて生きる"に決まった。
まぁしばらく逃げ続けて都市部についたらひっそりと暮らしていれば名前等を開示しない限りこの現代日本で見つかりっこない。
そういえば目が覚めてからやたら体が動かしづらい。大まかには動かせるのだが手先や足、指、さらには眼までも細かい動きが出来なくなっていた。
・・いや、正確には出来ないのではなく何かいつもと感覚が違うような・・・・。
しかも自身を見るとなんか出ているのだ・・・お腹が。
確か自分の容姿はガリガリ・・・とまでは行かないがそこそこやせ気味だったはずだが何故かお腹がぽっこり膨らんでいた。
もしや・・・と思い既に臓器が抜かれたか、とも考えたがこれだけあるいて単純な疲労しか出ないのはまだ腎臓がある証拠だ。
それと今着ている服が女物になっていた。たしかコンクリ詰めにされた時に来ていたのはダウンジャケットにジーパンだった筈が今着ているのは・・・西洋地方の田舎の村で村娘が着ているような服とロングスカートだった。
・・・・コスプレ?
本当に気を失っている間に何があったんだ!?激しく気になった。
ザザーー・・・
しばらく歩を進めると川の流れる音が聞こえてきた。
あの炎の海から逃れてから一休みもせず歩いてきたものだから喉が渇いて仕方が無かったところだからラッキーと思ってそちらへ向かうと川幅5mくらいの大きさの川が見えた。
早速手で水を掬い・・って自分の手ってこんなに小さくて白かったか・・・?という疑問が頭を過ぎったが軽く無視して水を口へ運び喉を潤してゆく。
「うぐっ・・・うぐっ・・うぐっ・・・・・・・ぷはっ!生き返るぅーーー!・・・ん?」
再び水を掬おうと水面を見ると銀色の髪をなびかせる深い緑色の瞳の美少女が映っていた。
水面の揺れで顔の細部までは分からないが恐らく外国人だろう。
ということはここは外国か・・・?
「あ・・あの・・・あなたは・・・・?」あの黒服の仲間・・?
――――と、聞きそうになったがもし彼女が黒服の仲間だった場合その問いをすると仕留められる可能性は高い。そう一瞬で判断し、
「す、すみません。俺観光でこの辺に来たのですがここってどの辺なんですか?・・・ああ、外人さんだから・・・where is this ?」
と観光客(こんな森の奥に観光客がいるか!)を装って後方に居るはずの少女に現在の位置を訪ねようと振り返ったが―――――
そこには誰も居なかった。
「・・・はっ?・・え?・・でもさっき確かに水面に映って」
再び水面を見たがやはりそこには流水で歪んではいるが銀髪美少女が映っている。
「え?もしかして水中・・・に?」
もしやと思い水中に手を入れたがそこは水だけで他には何も無い。
「ま、まいったな・・。これはいったいどういうこと・・っえ?」
まいったなと思い頬をポリポリ掻いていると、水面の少女もまいった様な顔で頬を掻いていた。
――心なしか少女が着ている服の柄が今自分が着ている服と同じような気がして少女の体に目を向けるとお腹が結構ぽっこり盛り上がっているような気がした。
「はっ!?これって・・・どういう事!?」
自分が驚くと水面の少女も同じく驚いた顔、自分が手を振ると水面の少女も全く同じタイミングで手を振り返す。自分がコマネチをすると同じように・・・・・
ここでようやく悟った。
「なんで俺、女になってるんだーーーーーー!!?」
浅木 祐二(26)はそこでようやく水面に映る少女が自分の姿であると認識した。
とりあえず溜まったストック分UP予定です。




