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第十三話 悔しさと暴力

リオン視点。幼児虐待表現注意。

「お兄ちゃん、今日市場のアクセサリー屋さんで珍しいものが入るって聞いたから

一緒に行こうよ」


教会の授業が終わって帰り仕度をしているとアリシアが道草を誘ってきた。

最近はぐっと冷え込んできていつもならそのまま二人で足早に帰って体を温めるのが

定番なのだけど道草に誘ってくるのは珍しい。


特に今日は用事もないし友達と遊ぶ約束もない。みんなも早く寒さから逃れようと最近

では帰りに遊ぶ子はほとんどいなくておまけに今日は凍えるような風の吹く灰色の空。

今にも雪が降ってきそうな天気だ。


僕も早く帰って暖をとりたいと思うけど可愛い妹の誘いとあれば断るわけにも行かない。


それに最近はエリベルト君達と遊ぶのにつき合わせちゃってアリシアの女の子友達と

遊ばせていないのもある。


「いいよ。行こうかアリシア」

了承の返事をするとアリシアは少し顔を赤くしてやったと小さく呟いた。

いつも二人で買い物に行くけどなんでやったなんだろうか?


アリシアの挙動に疑問を抱いて呆然としてる僕の肩を押してアリシアの成すがまま

市場に連れて行かれた。




アリシアが誘ったアクセサリーショップは市場の真ん中に位置する場所に店を

構えていた。

外から見ると店と店の間にある小ぢんまりとした建物だけど中は奥ゆきがあって

広々としている。

店内に入るや否や奥の方へ駆けて行ったアリシアを余所に僕は店の暖炉で冷えた

体を温めて一息つく。


店内に何人かの人の姿が見受けられ、置いてあるアクセサリーの数も相当な

ことから人気店らしい。

女の子達が商品のアクセサリーを試着しながら

「きゃー、これ可愛い!」

「これ綺麗じゃない?」

と互いのアクセサリーについて語り合って黄色く騒いでいたけどふと、僕の姿を

見るやひそひそと話し合って先ほどより活発的にアクセサリーの試着をし出した


……僕何かしたかなぁ…?



「なにあの男の子!もの凄く可愛いんだけど!!」

「あんな子この辺にいたかしら…?」

「あの子将来絶対美形よ!今のうちに私達専用に躾けちゃいましょう!」


……女の子達の会話に物騒な言葉があったけど気のせいだろうか?


「おにいちゃぁ~~~ん!ちょっと来てーー!」

そんな事を考えていると店の置くからアリシアが呼ぶ声が聞こえたので未だに

僕を見てヒソヒソ話し合う女の子達を無視してアリシアの元へ向かう。


「お、お兄ちゃん…。これ、どう…かな?」

髪飾りの棚を曲がるとそこには小さな蒼い宝石の髪飾りを着けて顔を赤くして

照れているアリシアの姿があった。

照れて赤くなっているアリシアの可愛らしさについ頭を撫でてしまって

「お、お兄ちゃん!頭撫でるより髪飾りの感想を聞かせてよ!」

と怒らせてしまった。


「う、うん。すごく似合ってる…!可愛いよ」

蒼い宝石の髪飾りはアリシアの銀髪と色合い良く似合って月の様なその色合いを

より引き立てている。

普段のままでもアリシアの容姿は綺麗で可愛い女の子の部類の中でも間違いなく

トップクラスだと思うけど、高価な宝石の髪飾りを着けているだけでどこかの国の

王女様と思えてしまうくらい美しくて上手く返答する事が出来なかった。


「それでアリシアはその髪飾り買うの?これ結構な値段するんじゃない?」

アリシアの着けてる髪飾りは水の国出土の希少金属サファフィーと銀縁で

覆われたものだ。

少なくとも金貨1枚はするんじゃないだろうか?


「う…うん、金貨3枚くらいするよ……」

うわぁ……やっぱり金貨クラスのものだったかぁ。

金貨となるといつもやってる薬草集めなんかじゃ何年かかっても届かないくらい

高価なものになる。

前のフェスティバルのための衣装を買うために銀貨を集めたけどあれも2,3年間

薬草とか母さんが『モンスターハンガー』とか口にしながら小ドラゴンから剥ぎ取った

牙や皮をこっそり売ってようやく銀貨7枚だったからとてもじゃないが僕達の

小遣いでは手が届かない。


「流石に金貨3枚じゃぁ買えないよ…。どうするのさその髪飾り」

しばらくアリシアは鏡に映る髪飾りを着けた自分を眺めておもむろに

それを元の棚に戻した。


「うん!やっぱりまだ私じゃ早かったみたい。」

「いいの?でもそれ欲しかったんでしょう?」


僕の問いかけにアリシアは髪飾りを撫でて振り返りながら

「じゃぁ将来お兄ちゃんが私にプレゼントして?これみたいな髪飾りを何個も

買える様なお金持ちになってね」


と笑顔で答えて跳ねるように次の棚に向かっていった。



僕はアリシアが先程着けていた髪飾りを見ながら

―――いつか、本当にアリシアにこの髪飾りを買ってあげたら…彼女は―――


そう心で呟きながらその場を後にした。





店から出てそれはすぐに感じた。


何かにべっとり舐められるような気持ちの悪い気配。

それが背後から絶え間なくやってくる。距離は丁度僕らの後ろ7メートル程。


「……お兄ちゃん…何か変な感じがするよ……?」

アリシアもこの嫌な気配を感じ取ったらしい。

しかも恐怖に見開く眼と体の震えを見る限り僕より多大な気持ち悪い感じを

受けているようだ。


―――――カツン…カツン…カツン…―――――

嫌な気配の正体は僕らの歩数と全く同じに聴こえてくるこの足音。

確実に誰かが僕らをつけてきている。


「……おにいちゃぁん…気持ち悪いよぉ……」

アリシアが背後から迫る気持ち悪さに半泣きになってすがり付いてきた。


「……アリシア、いいかい?僕が合図したら全力で走ってここから100メートル先に

あるパン屋さんに駆け込むんだ。いいね?」


ゆっくりと周りに聴こえないように、また話しかけているようには見えないように

アリシアに呟き伝えて後ろの追跡者に悟らせないように何事もないかのように

歩みを進める。



―――――カツン…カツン…カツン…カツン…カツン…―――――


「今だ!!」


合図と共に僕らは全力で人ごみに紛れ大通りを駆け抜ける。

誰かとぶつかった、何かが頬を掠めた…けどそんな事を気にしている余裕はない。


ただひたすら走り抜けてアリシアと共に100メートル先のパン屋を目指して

ひた走る―――――


―――――パシッ…――――――


「おいおい、そんなに急いでどうした?小僧」


急に腕を掴まれぐいんと引っ張られる衝撃と共に気が付いた時には地面に

倒されていた。

突然の衝撃となんで倒れたのかで僕の頭の中は一時的に止まってしまった。


掴まれた手の元を見るとそこには苛立っている表情のアーグルがいた。


「アーグルさん、小娘の方も捕らえましたよ。こいつらすばしっこいから

捕まえるのは骨が折れましたよ」


ため息を吐きながら現れた男の手には恐怖で震えるアリシアの手が握られていた。


広場の人たちはアーグル達に警戒してみんなその場を避けて歩くため結界の

ような空間がそこには出来上がっていた。



「まったくだな。こちらが紳士的に尾行しているのも関わらず逃げ出そうとは

糞餓鬼め……。さて、それよりテメェらに聞きたいことがある」


なんであの街の暴れ者で嫌われ者のアーグルが僕らを捕まえたんだ?

別にお金を持ってるわけでも何かしたわけでもない。

若い女の人を誘拐すると聞くけどアリシアはまだ8歳。

若い…というよりまだ子供だ。こいつらは何が狙いで僕らを捕らえたんだ?



「お前らの母親はどこだ?答えろ。」

――――母さんが狙いか!!―――――


「お前らの母親があの銀髪の娘の餓鬼だってのはそこの銀髪の小娘見てれば

嫌でも気づく。

銀髪の娘なんてこの世にそうそういないしな。」



そうか、母さんは何だかんだで街には数回ほどしか来たことがない上に変装して

出かけるから姿を知ってる人はもちろん家の場所なんて知ってる人はほとんどいない。


だから母さんと酷似しているアリシアを母さんの子供と判断して僕らから母さんの

居場所を聞き出そうと思ったのか。


「フェスティバルであの女を見かけてから街中を探させたが一向に見つからない。

だがその餓鬼がこんなに早く見つかってラッキーだったぜ。

さて餓鬼、さっさと母親の居場所を答えろや」


「やだ!誰がお前みたいな奴に教えるか!!」

もしこんな奴に母さんの居場所がばれてしまったら間違いなく母さんが酷い目に

あってしまう。

こいつに目をつけられた女の人がどういう目にあってきたかはいろんな人から

聞いている。

心も体もボロボロにされて酷い時は奴隷として売られるとも聞いたことがある程だ。


こいつには絶対家の場所を教えるわけにはいかない!!


でもこのままじゃアリシアは捕まっていて僕も押さえつけられて動けない。

早く逃げ出してこいつらが狙っている事を母さんに伝えなければいけないのに!!


ここから逃げ出すには大人4人を相手にしなくちゃいけない。

そんな方法あるはずが…そうだ!前のフェスティバルの時のように超能力で

動きを止めてやる!!




――――超能力……!!





――――――――っ!?


瞬間、頭にとてつもない痛みと暑さ、気持ちの悪さを感じて急いで超能力の

行使をやめてしまった。

「あん?急に黙ってどうした餓鬼ぃ!」


…なんなんださっきの痛みは!?

今まで超能力を使ってもあんな痛みは起きなかったのに…!

それに景色があの色を失った世界になってない。

しかもアーグルはしっかり動いてるし…やっぱり超能力は発動してないみたいだ。


僕の拒否を聞くとアーグルはほくそ笑み思わせぶりな表情でアリシアの手を掴んで

「なるほど、喋らないか。まぁそれならこういうことにあって貰うがな!」



瞬間、渇いた破裂音のようなものが広場に響き渡った。




「可哀想な妹だなぁ~。兄貴がいい子にしないから妹が酷い目にあう。

ひゃっははははは!」


アーグルがぶったアリシアの頬は薄らと赤く染まってその表情が痛みと恐怖で

染まって行く。

それを下劣に笑って眺めるアーグルに激しい憎しみを覚える。


「なんで!なんでアリシアをぶったんだ!僕に聞いているんだから僕を

ぶてばいいだろう!?」

「はんっ!テメェは口が堅そうだし反抗的だからな。

だからこっちの小娘に聞いたほうが早いと思ってな?ほらさっさと吐けよ餓鬼!

じゃねぇとこいつの頬がパンみたいに腫れ上がっちまうぞ?」


「お兄ちゃん!話しちゃ駄目ぇ!!」

「お前は喋るな小娘!」


――――パシーーン―――


必死で叫ぶアリシアにアーグルがぶち、広場に響く平手打ちの音、

その音に耐えられずに叫ぶ。

「やめろ…やめろ……やめろ!アリシアに手を出すな!アリシアに暴力を振るうな!」

「じゃぁさっさと母親の居場所を吐け小僧!おらぁ!お前が吐かないから!

こいつがっ!」

でもアーグルの暴行は止まらない……今すぐこいつを殴りたい!殺してやりたい!!

でも僕の体は別の男に押さえつけられて動けない。


悔しい……憎い…憎い…!憎い!!


「いやぁぁ!!やめてよ!!やめて!!やだ、痛いのやだ!!」

「ひゃはははははは!!まったく餓鬼の虐待は楽しいなぁおい!

おらぁ早くしねえとこの小娘の顔ボコボコにしちまうぜ?」


ついにアーグルはアリシアの髪を掴んで握りこぶしで殴りかかろうとしていた。

「やだ!やめて!もう叩かないで!いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


泣き叫ぶアリシアの悲鳴…。もう、耐えられない……!!


「……いう…いうから…もうやめろ…」


「はははははっ?ん?聞こえんな?」

「……家の場所を…教えるからもうアリシアに酷いことするなぁ!!」

怒りと母さんを売ってしまった悔しさから目に涙を溜めながら叫ぶ僕に

アーグルは見下すように笑いかけて

「おいおい……お願いする時は敬語だろ?餓鬼」


嫌らしく笑いながら抑えられてる僕の頭を踏みつけた。


「おらぁ!さっさとお願いしろよ、

『僕のお母さんの居場所を教えますから存分にお母さんを犯してください』っな!

ひゃはははははは!!」

こいつら…!やっぱり母さんの居場所を聞き出したら酷いことをするつもりなんだ!!


誰が教えてやるか……!でも、このまま教えないとアリシアが……どうしたら

…どうしたらいいんだ!!


―――――ボグッ…――――

何か手はないか思案してたら突然右頬にとてつもない衝撃が襲い掛かった。

「おらぁ!言うならさっさとしやがれこの糞餓鬼!!」


「…北の山……湖の近く……」

「ほぉ…そこにあの銀髪の女がいるのか」


母さん……ごめんなさいっ…ごめんなさい……ごめんなさい!!


「家の場所をいっただろ!?早くアリシアを離せよ!!」

男の腕の中で痛みと悔しさで泣き崩れているアリシアを取り返そうと喰らいついたが

軽く押しのけられて別の男の腕に取り押さえられてしまった。


「おらっ大人しくしろこの餓鬼!」

「ふざけるな!話が違うじゃないか!家の場所をいったら酷いことをしないって……!!」


「あん?俺はそれに了承したわけじゃないぜ?お前が勝手に言っただけだ…ぜっ!」


瞬間お腹に凄まじい衝撃を受けて目の前に地面が広がっていた。

「おごっ……がふっ………」



「おい、お前らこの餓鬼共を西の倉庫にでも放り込んどけ」

「へい。アーグルさんは……もちろん?」


「ひゃはははは!女のところに決まってんだろ!」



そんな下劣なアーグル達の笑い声を最後に次第に闇に染まる視界と共に

意識が遠のいていった……。

最近出来が微妙でこれも何度も直しましたが出来がイマイチです…。


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