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第九話 フェスティバル

ソフィア視点

「フェスティバル・・・?」

「うん、明日の夜に街の広場でフェスティバルがあるんだって。街中の皆が集まって

屋台もたくさん出るみたいだから一緒に行こうよ母さん!」


夕食の仕度をしていたらリオンが明日のフェスティバルの話をしてきた。

フェスティバルなんて憑依してから一度も…それどころかこのフェスティバル

毎年あったそうだがなんだかんだで参加しなかった。


家を出るのが億劫というのもあるけどそもそも現代社会でもお祭りなんて

飽きて、たいした興味も無くて中学入る前くらいには全くといっていいほど

行かなくなっていた。


そんな訳で自分としてはこの中世のような世界での明らかに嫌でも人に

話しかけられるようなお祭りはご遠慮願いたい。


……だが、

「そういえばリオンとアリシアはお祭り一度も行ったことなかったわよね・・」

流石に子供達を一度もお祭りに連れて行かないというのは親としてどうかと

思うし可哀想だ。

それでなくとも自分も子供の頃、お祭りが好きではしゃいでいたっけ・・?

でも子供二人はお祭りに行かなくても特に不満とかいったことがないのだけど…?


「ううん。毎年お母さんが寝たのを見計らってお兄ちゃんとこっそり……あ」


なるほど、それでか。アリシアが自らの口を押さえているけどもう遅いよ☆


「うん♪アリシアは正直ね~。さてリオン。どうして母さんに内緒で

夜中に外でたのかなぁ?」

「アリシアのバカ!・・だ、だって母さん外に出たがらないし僕らだって

フェスティバルに行きたいんだよ!」


…確かにいつも引き篭もって外に出たがらないから知らず知らずのうちに

子供達に『どうせお母さんをフェスティバルに誘っても行きたくないと

断られて行けない。行くのを認めてもらえない。』

という固定概念を植えつけていたのかもしれない。


これじゃぁ母親失格だ…。

「夜中に黙って外に出たのはごめんなさい…。でも…」

「いいえ…、私の方こそごめんなさい…。あなた達の気持ちも考えずに…。

こんなんじゃお母さん失格ね…」


「そんなことないよ!母さんは僕らのお母さん失格なわけがない!!」

「そうだよ!!お母さんは私達だけのお母さんだよ!!」


ああ、子供達の言葉が心に沁みる・・・・。


「こんなお母さんでも認めてくれてありがとう。リオン、アリシア。」

「うん!それじゃぁ母さんもフェスティバルに来るってことでいいよね!」


…まぁ今まで寂しい思いをさせてきたのだからたまにはいいかな。


「それじゃぁお母さん、明日これ着てね!!」

そういってアリシアが渡したのは黒いケープだった。


やたらフリルがついて中央には大きなリボンまでついていて……

あまりこういうヒラヒラしたのは機動性が悪くて好かないんだけどなぁ・・・。

愛娘の手前それを断るわけにはいかない。


「というかそのケープ、どうやって手に入れたの?」

「市場で買ったの!これ可愛くてお母さんに絶対似合うと思ったんだ!!」


市場で買ったものか。だけど明らかに見た目は良質な布や糸を使ってると

思えるし華美な装飾は胸の宝石だけとはいえ高級品であるのは間違いない。


「お、お金はどうしたの?お小遣いはあげてるけどこんなのが買えるほどは

・・・まさか万びk」

「教会に行くまでの道によく生えてる薬草を売ったの!

いくらこんな服買えたのが疑わしいからって万引きは酷いよ!!」


「す、すいません・・・。それにしてもこのケープ綺麗ね。高かったんじゃない?」

「う~ん・・けっこうしたけど……銀貨3枚くらいかなぁ」


確か貨幣相場がコーヒー(のような飲み物)一杯で青銅貨3枚で、

青銅貨10枚で銅貨1枚、さらに銅貨10枚で銀貨1枚だからけっこうな額じゃないか。


「お母さんに買うよりアリシアの服を買えばよかったのに…。

お祭り用の服明日買えば間に合うかな…?」

「ううん、もう私の分は買ってあるよ。1ヶ月前にお兄ちゃんと街の市場で教会の

帰りに買ったの!お母さんとお揃いの黒い服~♪」


そういって自分用の黒いケープを取り出してきて体に当てながら踊りだすアリシア。

ああ、確かに黒のケープに銀髪はとても似合いそうだ。


「僕のはこれ~♪」

リオンが取り出したのは茶色の子供用スーツ。よく小学生の入学式の時の衣装の

ような感じだが結構ラフな感じで動きやすそうでとてもよく似合ってる。


さっそく将来イケメンの片鱗がすでに出ているのだが…。


「母さん、明日は僕と踊ろうね!」

「違うよ!お母さんは私と踊るの!お兄ちゃんなんかいつもベタベタ

くっついてくるあのエミリアとかいう子と踊ってればいいのよ!」


くっ・・!!既にリオンはイケメンとしての素質を開花させていたか…っ!!

その内『母さん。俺、この人と結婚するんだ』とかいい出したら……っ!


「えー!僕は母さんと踊りたいんだよ!それに僕は将来母さんと

結婚するんだから!!アリシアこそ女の子同士じゃ踊れないんだから僕が

母さんと踊り終わったら踊ろうよ!!」


な・・・に・・?母はおろか妹までいける口・・だと・・・っ!!

どこまで守備範囲が広いんだこの子は・・・っ!!

まさか我が息子が既に極地(ハーレム?近親?全然余裕です♪)の域に到達

しているとは末恐ろしい・・・っ!!

しかも前世の自分と違ってリアルで美形のイケメン。

2次元ではなく3次元でそれを成してしまう可能性は・・・・・っ大きい!


「リオン、忠告してあげるわ。ハーレムだけは止めときなさい。

もしその中にヤンデル娘がいたら確実に Nice boat 直行だから。」


「"はーれむ"ってなに?"ないす ぼーと"ってなに?とにかく母さんは

明日僕と踊るんだから!いいね?」

「違うよ!私と踊るの!!」


結局その晩は月が高く上がるまでリオンとアリシアの言い争いが続いた。


どうでもいいことだけど流石に9歳児が恋愛とか結婚とか本気でいってないよね?

小さい子供が『将来お母さんと結婚する~』とかいうあれだよね?

なんかリオンの目を見てるとそういうのじゃない気がするのだけど

ただの気のせいの勘違いだよね…?








「ヒーズ・タウンにお集まりの皆様!この街が生誕し今年で70周年となりました。

街長として嬉しい限りです!

この街がこれからもますます発展しますよう、今夜のフェスティバルを

盛り上げていきましょう!」


パラパ~パパッパパ~パパパ~ラパッパパ~♪パララパ~パパッパパラパパパ~♪


「「わーーーーー!!」」

パチパチパチパチ―――――


「では皆さん、心ゆくまでフェスティバルをお楽しみ下さい!」


街長の開催宣言と共に音楽が鳴り響きフェスティバルが始まった。

中世世界(ファンタジー世界といった方がしっくりくる)のフェスティバルなんて

参加するのは初めてだけど明るく広場を照らす灯り火、鳴り響く楽器団の軽快な

音楽、音楽と共に踊る人々、美味しそうな臭いを漂わせる屋台や新商品をここぞと

宣伝販売する商人。


まさに日本の現代のお祭りとは違ってこれなら飽きることはなさそうだった。

そういえば一生のうち一度はヨーロッパのお祭り行ってみたかったんだよなぁ・・。


「母さん!踊ろうよ!」

「いや!お母さんとは私が踊るの!!」

・・・まだやってるよ。



「あ、リオン君だ!やっぱり来てたんだ!!」

茶髪の優しそうな顔の男の子がリオンを指差してやってきた。


「エリベルト君!フェスティバルに来て大丈夫なの?お姉ちゃんは?」

なるほど、あの子がリオンがよく話すエリベルト君か。

あの子もなかなか将来有望だなぁ・・。いいなぁイケメンって。夢があって。


「うん。だいぶ体調もよくなってもう歩けるようになったんだよ。

あ、姉さん!こっちこっちぃー!!」

エリベルト君が手を振る方向に16、7歳くらいの儚そうな顔の茶髪美少女が

優しく微笑みながらやってきた。

「こらこらエリベルト、あまりはしゃがないの。あなたがリオン君ね?

いつも弟に良くしてくれてありがとう。」

なでなで――――

「えへへ。だってエリベルト君は僕の友達だもん!」


「そして・・あなたがアリシアちゃんね。ふふっ、エリベルトの言ったとおりの

可愛い娘ね。これじゃぁライバルは多いわよエリベルト?」

「ね、姉さん何いってるんだよ///」


ほう、私からアリシアを奪おうというのかね。

よかろう、その覚悟に免じて全力で叩き潰してあg

「そしてリオン君のお母さんですね?エリベルトの姉、リリアーヌと申します。

あまり街で見かけませんけどどちらにお住まいなのですか?」


「あ、ああはい。リオンの母そふぃ…じゃなかった、アサギといいます。

街の北側の山の麓に住んでましてあまり人混みは好かないので見かけることは

少ないと思います…。」

「そうなんですか。こんど街へいらっしゃった際には家のハーブ店に

是非来てください。アサギさんに合いそうな香りのハーブを揃えて待ってます」



エリベルト君のお姉さん、リリアーヌさんとしばらく社会情勢や噂話、

街の美味しいグルメなどをしばらく話し合って別れた。


いやぁリリアーヌさんなかなか良い美少女だったな。話し方も上品だし変に

気取ったりしてないし化粧も気持ち程度してるだけでケバくなくて何より

あの儚い感じが良い。前世の自分なら初めてあった瞬間告白しているだろう。


フられるの確実だろうけど…。




適当に屋台でパイとかチキンを買って食べていると一つの屋台で目に止まるものが

あった。


「っ!・・・おじさん、これってもしかして・・・・」

「おお姉ちゃん、面白いものに目をつけたな。そりゃぁ俺が作ったものでなかなか

面白い玩具だと思うんだが皆買ってくれねぇんだよ」


その屋台で売っていたのは銀色に輝くレンコン状に穴が4つ空いた短い鉄の筒。


「これの中にこう石を入れて・・・こうクルクル回してどの穴に小石が入ったか

当てる…って玩具なんだけど全然売れなくてなぁ…」


そう、今目の前にあるのはリボルバー。


一度ライター式フリントロックから回転式拳銃を作れないかやってみたが

どうしてもリボルバーの部分が出来なくて断念していたけどこのリボルバーなら

うまくやれば回転式拳銃が作れるかもしれない…!!


「おじさん、これって…その~こう前に鉄の筒を付けて後ろに打ち火のカラクリを

仕込んだ…こういうものって出来ない?」

「う~~ん?…なんだこりゃぁ?変わった形の筒と・・・玩具?だな。

何か複雑だなぁ・・・。でもこれはアレで代用出来るしこっちは親父に任せれば

なんとかなるか?…まぁ時間はかかるけどなんとかやれそう・・か。」


地面に描いた回転式拳銃の形を見せたらなんとか出来るといってくれた。

「おじさん、これ作って欲しいんだけど…だいたいいくらかかるかな?」

「う~~ん、最近はこれ売れなくて困ってたし姉ちゃんだけが買ってくれるって

いうから特別に銀貨5枚で引き受けるぜ!」


「やった!ありがとう。そういえばおじさんの名前は?」

「俺ぁトムってんだ。大体2月もすれば出来るだろうから街の東の

"オマージ"って鍛治屋に来てくれや」


無事商談を進めることが出来た!これで装填にあまり手間がかからない

リボルバーが手に入る!いやぁ、西部劇っぽくてカッコイイし男の夢

リボルバーはやっぱり一度は持ってみたいよねぇ~。


今は女だった・・。



「お母さん、何してるの?あっちで皆踊ってるから一緒に踊ろうよ!」


私がトムさんと話しているとさっきまでパイを頬張ってたアリシアが

ダンス会場へ連れて行こうと引っ張ってきた。


「おお、あんた子持ちだったのかい?可愛い嬢ちゃんだねぇ」

「あ、アリシアちょっとまって・・・じゃあトムさん、例の件頼んだよ!」


「おう!任された。ほら嬢ちゃんが呼んでるぞ?」

ガッハッハッと笑いながらトムさんは私とアリシアに手を振りながら再び

リボルバーの宣伝を始めた。






「ほらお母さん踊ろうよ!こうやって手を繋いで…繋いで…う~~~ん!!」

私と手を繋いだアリシアだったが身長差からどうしてもぶら下がるような形に

なってしまい必死に背伸びをしてもやっぱりぶら下がってるようにしか

見えなかった。


「う・うう・・わた・・しじゃ・お母さんと・・踊れ・うぐっ・・ないの?」

「ほらほら泣かないの。お母さんがこうやってしゃがめば一緒に踊れるでしょ?」

泣きそうになったアリシアをなだめながら中腰になって一緒に踊った。



タタッタタタタッタタタッタタッタ―――――


「きゃッほ~~!お母さん見てみて、私のステップ!」


タタッタタッタタタッタタッタ―――


テンポのいい音楽と共に軽快に踊るアリシア。なかなか足の

ステップといいダンスが上手だ。これは将来バレリーナとかを目指すのも

いいかもしれない。この世界にあるかは分からないけど・・・。




「そこの銀髪のご婦人、よろしければ私と踊りませんか?」


―――いやぁ、やっぱりアリシアは可愛いなぁ~。

こう自分に向けて満面の笑顔で可愛く踊るとこう胸がきゅんと来る。



「そこの銀髪の黒のケープのご婦人、よろしければ私と踊りませんか?」


―――あらあら、あまりはしゃいで踊ったから髪が乱れちゃってる。

頭を撫でながら髪を直すとくすぐったそうに微笑むアリシア。


パシッ―――

「!?」

「銀髪のご婦人、貴方だ。私と一緒に踊りませんか?」


急に手を握られ声をかけられたからなんだと思って見上げるとダンティな

感じの紳士がいた。

「貴方のような美しい女性をこのフェスティバルで見かけたのは初めてですよ。

どうか私と踊っていただきたい」

そっと呟きなんかこう『シャルウィダンス?』的なポーズをした。


…うん、とっても紳士で乱暴な感じでないところは評価だけどせっかく今

愛娘と踊ってるんだから親子水入らずにして頂きたい。

そして"俺"は男と踊る趣味はない。ほら、アリシアが目を潤ませながら

寂しそうな顔をしてるじゃないか。


「すみません、先客がいますので」

出来るだけ相手を刺激しないようさらっと言って再びアリシアの手を握って

ダンスを再開する。


「ハッハッハッ、これは取られましたな。

ではその可愛らしいお相手の次にでもお願いします。」


・・・まぁそれならば踊ってもいいかな・・?ここで断ったら相手にも悪いし、

なによりこの場での周りの目が『踊ってやれよ』といってて断れない・・・!


「…そ、それなら構いませんが…」

「ハッハッハッ。それはよかった。ちなみにそちらのお嬢さんは妹さんか何かで?」

「娘です。今年で9つです。そして私は中古品です。」

「わ、私お母さんとこのまま踊り続けるもん!お母さん渡さないもん!!」


一応誤解させないために既婚者・・・?ということを言っておく。

これを伝えとかないと面倒くさい問題に発展しかねないからなぁ…。


「ほぉ、既に結婚しておられたか。それにしては婿殿が見当たりませんがね?

それに貴方は十分お美しい」


うわぁ…。人妻でもいける口ってか?それより早速面倒くさい事になってきたぞ。


さて、どうしよう・・・?


イラストが思ったより長引きそうなのでとりあえず第九話だけUPしときます。

一応第十話もイラスト作成の休憩がてら半分くらいは何とか出来ました・・・。

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