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ヒーローは必ず登場する

ここで人生終了のお時間でしょうか?

まだきちんと恋愛もしていないのにひどいではないですか!




あぁ、家が無宗教だったからいけなかったのですね、神様。

こんなことになるのだったら、この間行った神社で賽銭をケチるのではなかった!

ですが、まだ仕事始まってないし、お給料も貰ってないのです。

お財布の中身はたいへん寂しいものだったので、あれ以上は無理でした。

今からでも間に合うなら、全身全霊を持って祈りますから。

どうかお助けください、神様!


そう祈りながら目をつぶって、衝撃に身構えました。


ですが、衝撃はこず、かわりにキャインッと動物の声がします。


不思議に思い目を開けると、大きな男性が私の目の前に背を向けて立っています。

唖然と彼を見て、周りのオオカミ?に目を向けると一匹は倒れ、その他はじりじりと後退していました。

彼の手には剣らしきものがあり、倒れている一匹はキャインッの原因でしょう。


どうやらヒーローの登場のようです!


あぁ、神様!

あんなしょぼい賽銭でも見捨てず救世主を登場させてくれるなんて、さすがです!


えぇわかっています。

ここは彼に任せて、私はお姫様役を見事に演じて見せましょう。


さぁ、やっておしまい!


ん?これでは悪の女幹部みたいですね。

やはり私にはお姫様などは無理なのでしょうか?


などのくだらないことを考えていたら、彼が私を見下ろしていました。

彼は日本人にはない彫の深い顔だちをして、きれいなブラウンの髪が風に揺れています。

紅茶色の瞳は切れ長で、私の周りではお目にかかれないほどの長身でした。

服装は何かのゲームのようで少々ユニークですが、そこらで見かけるコスプレさんの物のようなしょぼいものではないし、何より似合っているので素敵です。


おっと、助けてくれたヒーローがあまりにかっこいい人なので、思わず顔を凝視してしまいましたよ。ごめんなさい!


どうやらオオカミ?は彼には敵わないと思ったのか、逃げてしまってました。


おぅ……

命の恩人を無視して妄想していたなんて、何たることでしょう!

ここは素直に謝罪とお礼を言おう。


「すみません、あまりのことで呆然としてしまって。あの、危ないところを助けていただきありがとうございます」


第一印象が大事なので、できるだけ可愛く見えるように話しかけたのだが、彼の反応はない。


まさか、言葉が通じないなんて言わないですよね?

困った。どうしましょう……


あまりに情けない顔をしていたのでしょう。

彼はしゃがんで目線が合うようにして、私の頭を撫でてくれました。


さすがヒーロー。

物語で言ったら、あなたは確実に主人公です!

女心をばっちり掴まれましたよ。


彼の仕草に胸きゅんしていたところ……


「子供ながらにしっかりした挨拶だ。もう大丈夫だ、街まで送ろう」




はい、言葉通じてましたー。

なぜもっと早くに返事をしてくれない。

無駄に心配してしまったではないですか。


だがこれで助かりました。

彼はヒーローで主人公です。(私の中では)

きっといい人なのだと思います。

よろこんで、着いていきますよ!離れません、えぇ離れませんとも!


「たいへん助かります!いつの間にかこの草原にいたので、ここがどこだかさっぱりでして…。あ、私斉藤まりあといいます。お名前をお聞きしてもいいでしょうか?」


逃がすまいと、撫でてくれていた手を両手で握りしめました。


すると彼はまたしばらく黙り、緩んだ手を離し私の両脇に腕を入れ、起き上がらせてくれました。

立ってみると彼との身長差に改めて驚きました。

私の頭が彼のみぞおち部分にきます!

私が155cmなので、彼は2mはいっているのでしょうか?

……確かにこれではまるで子供のようです。

さっきも言ってたが、彼は私を子供と思っているのでしょうか?


ここで妙齢の乙女です、なんて言ったら彼は助けてくれないかもしれない……

いや、彼は例え私が老婆でも助けてくれたと思います!

でももしかして、いやいやしかし……





よし、バレるまで子供のふりをしていよう!

うん、私はプライドより命が大事です。


えへっと、小首を傾げながら彼を促すと、答えてくれた。


「ロベルト・サイダー」


彼はなにやら、シュワシュワしそうなお名前でした。



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