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知られざる彼



第一体操ー!

いっち、にっい、さんっ、し!




今日も元気な朝が来ました。


おはようございます。斉藤まりあでございます。


いや~、昨日は爆睡してしまいました。

宿屋より広いベットでしたから寝返りし放題なので、周りを気にしないで大丈夫!


そうそう、こちらに来て初めて夢を見ました!

願った通り、ロベルトさんの夢です。




ロベルトさん、まだ無名俳優でして、私はそのマネージャーです。

今度CMにチョイ役で出演することになりまして、二人して大盛り上がりしていました。

主演の後方でサイダーをがぶ飲みする役なのですが、主演のリテイクで何回も飲まされてしまって…

哀れなほど炭酸でお腹ポッコリでした…

撮っている時にゲップしないように耐えている姿に、私は涙が止まりません!

それに主演がルーペさんだったので憎さ三倍!




という夢でした。


いや、ほんと夢でよかったです。

見ているほうも辛かったですから…



よし!

気を取り直して、顔洗って着替えてロベルトさんを探しましょう。








***************






あれれ?

お部屋をノックしても返事がありませんし、リビングにもいらっしゃいません。

……いずこに?


あ、昨日言っていた詰所なるものの所に行ったのでしょうか?


っと、机にメモっぽいのがありました!

どうやらロベルトさんから私宛てみたいですね。


なになに~?




「…ふむ」









ロベルトさん、わかりません!


え!?

異世界の文字で読めないのでしょうか!?

言葉が通じていたので、こちらも全然気にしていませんでした!


図書館などで本を借りて調べよと思っていたのですが…

こ、これでは元の世界に帰るとしても、調べようがないではないですか!

いちいち読んでもらうわけにもいきませんし、人に聞くって言ったって限度があります。


あああぁぁ、どうしましょう?

すべて読めないのか確かめなければいけません!

とにかくロベルトさん所有のありったけの本を見させていただきましょう!


お屋敷内で、本が置かれて尚且つ使われている部屋は、ロベルトさんの部屋しかなさそうです。

というわけで、ロベルトさん、無断ですがちょっとお部屋にお邪魔します!

大丈夫、本棚にしか興味ありませんから!

他は(ちょっとしか)見ませんから!



お邪魔しまっす!


ッバン!!











って(きたな)!!! っ(くさ)!!!




「ぎぃやぁ~~~~!!!!」




なんですかこの部屋の汚さは!

()部屋というやつですか!


おまけにこの(にお)い! ってか(くさ)、ほんと(くさ)い!


カビが、カビが舞っているのが見えます…!

どうしたらこのような部屋になってしまうのですか!?



鼻をつまみ、袖を口に持ってきます…!




ロベルトさん!

一体何があったんですか!?


昨日私の部屋を掃除している時は、あんなにプロ顔負けのお掃除魂を見せてくれていたのに!

それが自分の部屋はこんな状態のままだなんて…



それでもよく見たら、入り口が埃だらけで、私の足跡が付いています。

私の足跡だけで、ロベルトさんらしき人の足跡はありません。


ということは昨日はここを使っていない、いや開けてすらいないということです。

…リビングのあの大きなソファで寝たということでしょうか?




そしてこの部屋の状況からして、どうやらロベルトさんは長期休暇の前に掃除せず、ごみと洗濯物も部屋に溜めたままご実家へと帰ったみたいです……



あなた、私の部屋の掃除をしている場合じゃないでしょう!!!

まず自分の部屋を掃除してください!!


…でももしからしたらロベルトさんは自分より私を優先して、私の部屋の掃除をしてくれたのかもしれません。

そして疲れるままリビングで寝てしまったと。






ありえる……ありえますよ!

というか絶対そうです!!


あの素敵紳士代表のロベルトさんのことです。

何せ普段から私優先にしてくれますからね!


それにあの汚部屋だって、休暇始まるギリギリまで仕事をしていて、休暇に入ったら早く実家に帰れと急かされたため掃除する暇がなかったのかもしれません。

今回の休暇は実家に帰れとの上司命令だったと聞いてますし。




ごめんなさい、ロベルトさん!!

私のせいで、自分のことをないがしろにさせて!


もうお詫びのしようがないです…


せめて…せめてこの部屋はお掃除させていただきます……!

恩返しにもなりませんが、ロベルトさんの苦労を少しでも減らすため、斉藤まりあ、頑張らせていただきます!






***************







うわーーーー!!

何週間も前の洗濯物が、湿気て固まっているーーー!



ぎゃーーーー!!

く、黒カビがベットの下にーーー!



ひょぇーーー!!

た、たたた、タマゴが! 何かのタマゴが大量にーーー!




くっ!

くじけません! 綺麗になるまでは!


少しずつ、確実に綺麗にしていきましょう。

窓を開け、上から下に汚れを落としていくのです。


床も水拭きして、洗濯物もしなくては!







…え、本?


そんなの、もうどうでもいいですよ!!


今はロベルトさんのためにも掃除をするときです!





***************






 タラララッタッタッター♪


 まりあ は そうじ の れべる が あがった! ▼






なんて音楽が頭の中に響いている気がします。

何はともあれ、お、終わった~…



長い戦いでした……


埃というザコを倒し、カビというボスをも退(しりぞ)け、大量の魔王のタマゴを葬り去るという、偉業を成し遂げました。

終わりなき敵を倒し、ついに勝利を獲得しました。


今の私は歴戦の勇者もかくやといったところです!





ってあぁ、もうお昼です。

そういえばロベルトさん帰ってきませんね?

昨日あんなことがありましたから、忙しいのでしょうか?


でもそのおかげで、びっくりさせられることができます!


ここまで頑張ったんです!

ロベルトさんも感謝にむせび泣くこと間違いなし。

っていうか泣いてください!!


あの部屋を一人で片づけた苦労を思えば、ロベルトさんに少々の甘えも許していただけるでしょう。

遠慮せずに甘えさせていただきましょう。えぇ、そうしましょう。


若干目が座ってしまいましたが、致し方ありません。

ほんっっっとうに、大変でしたから…



おっと、まだ大量の洗濯物が残っていました。

昼食の前に洗って干してしまわなければ、夜までに取り込めません!


さぁ、お庭で洗濯物との新たな戦いが始まる!




なんて思いながら、庭の水場で足踏み洗濯をしていましたら、人の声がしました。

ロベルトさんが帰ってきたのでしょうか?








「ぅおっ! ロベルトの部屋がきれいになっている! 妖精さんがいるのか!?」


声のほうに行くと、ルーペさんがロベルトさんの部屋前で驚いていた。


「何を言っているのですか、ルーペさん? 僭越ながら、私が掃除させていただきました」


でもその通り。綺麗になりましたでしょう?

私の努力のたまものです!

妖精さんに手柄を横取りされては溜まりません! 


「だよね。普通に考えたらそうなんだけど、あまりのことでびっくりして、つい妖精さんの魔法かと思ってしまったよ…」


「以外にロマンチストなんですね? でもロベルトさんの部屋が汚くなってしまっているのを知っていたってことは、ロベルトさんの長期休暇の件に関わっていますね…!」


この部屋の元凶はあなたですか!

あなたがロベルトさんに余裕を与えないからあの部屋は放置されたんですね!

許すまじ!


「え? まぁ実家に帰すのは団長と俺の作戦ではあるけど……。もともとロベルトの部屋は汚いぞ? でも今回はあの部屋を何週間も放置していたから、覚悟して見に来たんだけど……。マリアちゃんありがとう! どうかこれからもあいつの面倒をみてやってくれな!」


え?

急に何を言っているのでしょうか、この人は。

面倒を見てもらっているのは、主に私ですよ?


それに普段からロベルトさんの部屋が汚い?

ならば昨日見せたあのお掃除プロの技は何だというのです!



ふっ、愚か者め!

私はこの目で見ているんです!


炭酸水ごときの言葉に騙されません!



っあ、ロベルトさんも炭酸水だった!

……まぁいいか。




「あ、マリアちゃん信じてないだろ! 本当だよ? あいつ自分のことはまるっきり何もしないの。他人のことはうっとおしいほど世話するくせに」


「はぁ、そうなんですか。確かにロベルトさん、いつも他の人を優先してしまってますね。うんうん、やはりロベルトさんは素敵な方です!」



そうです、ロベルトさんはとっても素敵な人なのです!


顔も良い、性格もいい、高収入(多分)、家柄も抜群だが跡取りではないから自由。

日本で言う超優良物件ですね!


でもロベルトさんが日本になんていたら、肉食系女子に捕食されてしまいます!

婚活時代の飢えた女性たちの中で、はたして私に守り切れるのでしょうか!?


あぁどうしましょう!

とりあえず、お持ち帰りされないよう飲み会は私もお供します!




「……聞いてない、だめだこりゃ。まぁこれから一緒に暮らすんだし、わかってくるでしょう」


「え、何かおっしゃいました?」


「いーや、何も」


変なルーペさんですね?


「そうだった、そうだった。俺は妖精さんを見に来たんじゃない。マリアちゃんを見に来たんだ」


だからあの掃除は妖精さんじゃありませんからね!?

私ですからね!


「ロベルトのやつ昼には帰る予定だったが、どうも夕方ぐらいまで帰れそうにないんだ。んでそのことを伝えるのと、君に昼食を渡すようお願いされてきたのさ」


はい、と言いながら包みを渡されました。

どうやらこれがお昼みたいです。

まぁ、ありがたいのでいただきますが……


「ロベルトさん、お忙しいんですか?」


「…忙しい、のか、な? 一応あれも?」


えぇ、なんですその微妙な答え。

何で仕事の内容がわかっているのに、そんなに自信がないような感じなんですか?


「…どういうことです?」


「いや、まぁ~なんての? 女王様の相手?をしてるからね」






じょ、じょじょじょ、女王様~!

それは、いったい、どのような意味の女王様なのでしょう!?



玉座に君臨しているほうですか?


それとも…


鞭とロウソクのほうですか…?



あぁいけない!

いろんな想像しちゃったじゃないですか!


待って! 早まってはだめ…

この街に来るときお城が見えたではないですか!

だから女王様がいてもおかしくありません。

ロベルトさんは騎士なのですから、女王様と謁見してもおかしくありません。

そう、そうに決まっています!



………でも一応聞いておきましょうか?




「ち、ちなみに。……王座? ……鞭?」


どちらですか…!







「…え? ……………鞭、かな?」





!!!!


オーマイガ!




どんどんロベルトが不憫なことに!ww

彼の幸運数値は限りなく低いw

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