第3話 その2
三人はモニター室を後にする。
[ゆっくり休みなさい。司君][ハイ。お疲れさまです]
その日、司は珍しく夢を見た。
ちょうどコウ・ウエルズと共に任務をこなしていたハッカー時代の。
彼等はある企業の機密を盗んでいた。バイクで走り去る二人。
[師匠、被弾しました。スピードが落ちます。先に逃げて下さい]後方の追手を気にしながら司はコウを逃がす。
ズガガガガガッ
[バカ野郎!被弾しやがって。捕まるな。先に行くぞ。構っていたらこっちまで被害に逢う。着いてこいよ必ず]
カーブを曲がりログアウトの光が見えた。
[持ってくれ!俺のマシン!もう少しだ。………キッ!扉が閉まる。間に合わない!閉じ込められる!]司は観念して目を閉じた。
ガシャーン!
[フーッ。間に合ったか。アブねー]後ろを見るとコウ・ウエルズが扉を支えていた。[ハッ!師匠ー!早く中へ!][逃げ切れ!奴等から。後は頼んだぞ!盗んだ情報を公開するんだー!]
ガバッ!
布団から飛び上がる司。
[ハーッハーッ…………夢か。忘れていた記憶だ。捨てたはずの。その後、あの企業の不正はバレた。だが俺は満足しなかった。師匠を見殺しにした罪を背負う換わりに記憶を消したんだ。あの悪夢を][………コンコン。入るわよ。どうしたの?魘されてたみたいだけど………][なんでもないよ。ただの悪夢だ。疲れてただけだよ][なら良いけど。シャワー空いてるわよ][ウン。行ってくるよ]
ミホは自分のネックレスを見つめた。[不器用ね。あの子。貴方と逆だわ。私もなんで好きになったんだろう。不釣り合いなのにね。貴方とは]ミホはネックレスを握りしめた。血が滲む位強く。
続く