表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

02.情報

 それからかなりの間、カレル王と話をした。

 正確には、俺が思い浮かべた文章を王女経由で伝えてもらい、言葉で返答を貰う形だ。

 翻訳付きの筆談とでも言うべきなんだろうか。

 カレル王の印象は、率直に言ってもかなりデキる人間だ。一国の王として、人間としても。

 民と国のためならどんな犠牲も厭わない、という徹底した倫理観を除けばの話だが。

 論理的で知性を感じる。良く異世界にいる、暴君でも無能な王でもなく、心から民のことを案じているのが言動から伝わってくる。


(国のトップって、これくらい割り切れないと務まらないのかもな)


 そんな思考に納得してしまう自分もいた。

 

 統治しているアレス王国は、南側に位置する大国らしい。女神を信仰する聖国とも仲が良く、聖国に次ぐ権力を持っている。


(確かに女神には祈ったけど…)


 まさか見た目自体ないに等しいなんてな。

 それはともかくこの世界では、複数の神がいないらしく女神しか信仰してないようだ。

 普通、女神がいるなら召喚される時に対面して、スキルやステータスを授かるんじゃないのか、という疑問も湧く。

 が、 少なくとも俺は女神と会った記憶が一切ない。パソコンが光って気がついたらここにいた訳だしな。

 相応の報酬も、今の俺に相応の報酬なんてあまり存在しないのかもしれない。

 例え、金銀財宝を貰っても触れないし使う事が出来ない。

 領地やでかい家なんて貰っても意味がない。

 身体を戻す方法を探してくれるのはまだマシだが——またあの身体に戻ってもという感じだ。


『もし身体を手に入れられたら、こう美少年とかに出来ないんですか』


 段々慣れてきて、文字も一文字ずつではなく、ちゃんとした文章としてまとまっている…はずだ。

 自分の姿が結局具体的にどう視えるのもわからないしな。


「変身の魔法を使える者はいるが、時間付きで他人に施せる代物ではない」


 予想はしていたが、魔法でもそれは無理らしい。魔法もそこまで万能でものではないっぽい。

 そもそも魔法と魔力に関しては、未だに分からないことが多いらしい。

  魔力はエネルギー的存在という認識は俺と同じだ。異世界系でもそういう設定がデフォだ。

 見えないし触れないが、魔法に変換することで初めて視認でき、影響を確認できる。

 これも多分一緒だ。


 つまり直接魔力に関与できる存在がいない限り、倒す事や死ぬ事がない実質無敵な存在。

 幽霊も特別なお祓いをしないと成仏できないのと似ているな。


『魔力を消したり、関与できる魔物や魔法はあるんですか』


「魔王を含め、七枢機という魔王直属の幹部は全員特殊な魔法を使うが、余の知る限りでは存在しない」


 七枢機って言うのはいかにも強そうな響きだ。

 中ボス的立ち位置。かなり興味を唆る。

 

 でもひとまず、明確に俺をどうこうできる存在がいなくて一安心といった所だろうかだろうか。

 魔力だから魔力が消えたら死ぬのか。その場合は元の世界に戻るのか、それとも本当の意味で死ぬのか。その境界線も曖昧だし、可能性はやっぱりなるべくない方がいい。


(でも、なんでこの王女は俺のことが視えるんだろう)


 目隠し——布越しだと魔力を視認できる魔道具という線はかなり現実的だけど、一応訊いてみるか。


『サシャさんは、どうして自分のことが視えるんですか』


 ぐっと個人的な感情も押し殺して、年下でもさん付けをして丁寧に聞く。我ながら大人らしい対応だと思う。


「この国には15歳を迎えた子供は聖国に出向きます…そこで魔力測定をすると同時に、稀に私みたいに女神様から唯一無二の力が与えられるんです。しかし歴史上でもごく稀な事で…私で四人目です。この布は魔力だけを視認し、良く流れが視えるように日頃から着用してます」


 少し不満そうながらも、しっかり答えてくれた。

 眼が見えなくても全身から滲み出ているが、やっぱりというべきか。

 どうやら俺のことがあまり気に入らないらしい。

 最初の印象が悪かったのかもしれない。俺の本当の姿も現に知ってるわけだから、そう考えると普通なのかもしれない。

 人の第一印象は視覚情報、つまり見た目が大半を占めるのは有名な話だ。

 でも何故だが別に嫌悪をしてるわけではなさそうのは気のせいなのか?

 

 今までの実体験で俺は人が心から嫌悪を、存在自体を拒絶する人はたくさん見てきた。

 でも彼女にそんな印象はなく、ただ嫌ってるだけ。大分マシな方に見える。


『教えてくれてありがとう』


 一応感謝を伝えながら、ある程度の情報は把握できたと判断した。


-----


 しばらく熟考をして考えた結果、俺は勇者として魔王を倒すことに決めた。

 もし本当に魔力。つまり自分の姿を変えるだけしか出来ないのならかなりまずい。

 でも、一応勇者という体で召喚されてるんだ。きっと何かしら戦い方はあるんだろう。

 もし出来なかったとしても、その時はその時だ。序盤にその七枢機や魔王と相対するはずはないだろし、俺を殺せる。脅かせる存在もきっといないだずだ。その場合、俺はゆっくり何か考えつくまで過ごせばいいだけだしな。

 

 正直勇者。主人公的立場にも憧れは今まであ。今まで脇役以下の、エンドロールにすら名前がないモブ役。それが人の、世界を救う役に回れるのなら。万が一があってもやってやろうじゃないか、そういう考えに至った。

 なんなら異世界無双も、俺の事をうずうず待ってるのかもしれない。


『カレル王、貴方の願いである魔王討伐。勇者として引き受けましょう』


「だそうです」


「それは誠か。そう決断してくれて感謝する、津井殿。それでは早速だが、急いでサシャと共に魔王討伐へ向かうのを盛大に見送る準備をこれからしてくる。少し、ここでサシャと一緒に待っておいてくれ」


(うん? 一人じゃなくて?この王女と二人きりで旅??)


 その返答は少し予想外だった。てっきり俺一人で行くものかと思ったが……

 だってサシャって、自分の娘なんだろ?一応王女なんだし、なんでわざわざ危険な目に晒すんだ?

 するとそんな俺の心を読んだかのように、

「サシャの心配ならば無用だ。途中まで国でも随一の実力者を護衛として同行もさせるし、余はこれでも見る目があると老害ながら自負はしている。本当に視えないのは初めてだが、其方なら問題ないだろう。

サシャもお前の世話役のゼバスも付いてる。異論はないだろう?」

 

「仰せのままに」


-----

 

 丁度一時間ぐらいだ。時計があるから間違いはないが、体感ではその以上の時間が流れた気がする。

 王女と俺の二人。

 会話なんてあるはずもなくひたすら気まずい、沈黙だけが流れてたんだ。

 グループワークで干され、先生が渋々ペアになって課題をやるあの気まずさ。時間が止まってるんじゃないかと錯覚するほどの長く感じるあれだ。過去の事も思い出すしかなり苦しい時間ではあった


 だが、その間に俺はそんな気を紛らわすために、新しく移動する事を覚えた。

 慣れてきたらこの通り。あり得ない速さで動けるし、上下左右に縦横無尽で部屋を飛び回る事も可能だ。元々召喚専用みたいな場所で探索するのもあまり意味を感じなったが暇つぶしでひたすらグルグル回る。これがかなり楽しい。

 最初は移動したい所に、瞬間移動するイメージを思い浮かべたが、上手くいかなかった。

 代わりに、自分自身が動く事を想像すると無事に少しずつ動く事が出来た感じだ。

 でも文字のまま自分が移動するのを考えるのは難しい。

 色々試した結果、イケメンだった世界線の自分を想像して動く事もやりやすくはある。

 しかし球体。これが圧倒的に便利だ。素早く移動できてかつ空中に浮いて移動もできてイメージがしやすい。まさに完璧としか言いようがないフォルム。

 普段使いをするなら、基本球体のまま過ごすのが楽かもしれない。

 するとついに準備が整ったかバタンと部屋の扉が開く。


「準備が整いました。王女様、どうぞ私と一緒にお父様の元へと向かいましょうぞよ」


 衛兵らしき人物を想像してたが、燕尾服を着た老人が代わりに入ってきた。


(さっき同行すると言われた執事か?)


「待ちくたびれたわゼバス」


 どうやら俺の予想は当たっていたみたいだ。

 彼女と執事の隣に浮遊しながら、長らくいた召喚部屋を後にした。


-----

 

 しばらく一緒に付いて行った結果、俺はこうして今広いバルコニーにいる。

 中央にカレル王、左にサシャ王女、周りに家臣と後ろには護衛らしき人物がずらりがいる。

 目の前に欄干があって下の様子があまり見えないが、空中移動をマスターした今の俺なら確認することぐらい容易い事だ。

 王様と王女の間に挟まれる形でいたが、上に移動する。

 すると、下の様子が無事伺えた。たくさん人だかりが出来ていて今か今かと王様の言葉を待っているみたいだった。


「皆の者よ、よく集まってくれた!」

 口を開いた、カレル王の声が響く。威圧感がある。


「余の息子であり剣聖のテオ・アレスが、枢機の一角と相対し亡くなってから久しく皆の者も未だ悲しい気持ちで包まれてるだろう。だが!今日は実にめでたく、明るい知らせだ。この度、余の娘であるサシャ・アレスが勇者として女神様に選ばれた! 必ずや兄の仇である魔王の首を土産に持ち帰ってくれる事だろう!」

 

 (俺って……勇者じゃないの?)

 すさまじい歓声が飛び交う中、一人だけ言葉も出ずに困惑している人物が一人だけいた。


(俺って……勇者じゃないの?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ