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舞台装置 アトランシア

来たぞ、知の都市アトランシア


道を歩けば、祭りでも見たことがないほどの人が大勢いた。

多くは、やはり入学生のようであり、皆が皆、あか抜けしきれていないようであった。


町並みは、中世ヨーロッパという感じだった。実際に行ったことがないが、創作物でみてイメージと似ていため、そう思った。目に映る水路や歩道は、何処か美よりも合理性を強く感じられる。だが、それが一周回って機能美になっているのが、面白い。

きょろきょろと辺りを見渡していると、横を歩く、ヒイラギが口を出してくる。


「ストケシア、田舎者がばれるよ?」


 こいつ…と思った。実際、田舎者なのだからしょうがないと、言いたくなるが、確かに、はしゃぎ過ぎてしまっていたのは事実だ。だが、それを言われ素直に従うのは、癪に思えた。


 何か嫌がらせをしてやろうと思い、頭を巡らせる。すると、昨日の夜のことを思い出した。ヒイラギが寝ぼけて、俺に恥ずかしい事を言っていたのをだ。

 俺のことを、恋人、うん、あいつはそういったのだ。やはり…癪だ。

共感性羞恥のせいで顔が赤くなる。お前のせいだ、アホヒイラギが。



…取り敢えず、そのことを出汁にして馬鹿にしてやろう。入学試験まで、時間はある。ボロカスにしてやろう。


「えっと…ねぇ。ヒイラギ、あれ、食べない?」

適当にヒイラギの煽りをながし、目に映った出店を指さす。

首を少し傾け、上目遣い。声は恋人みたいをイメージした。ついでに手を無理やり組んでも、やった。自身の思う、可愛いくてあざとい女の子を投影した。傍から見れば、恋人にしか映らないだろ。


因みにこれは、遠回しに昨日の発言を馬鹿にしているのだ。

すごく恥ずかしいが、死なばもろともだ。狼狽しろ、はじかけ。


「ッ?まぁ…別にいいけど、」

ヒイラギは、僅かに驚いていた。声と目には、動揺が見られる。うまくいったようだ。

俺はつつきたい衝動に包まれた。続行だ。


「ふぅ…ん。じゃ、最初は奢るよ。同じの食べよ」

自身の顔が良い具合ににやけているのが分かる。きっと、少しだけ悪い顔をしている気がする。このまま、入学試験までいじくりまわしてやろう。


そのまま、手を引いていけば、ヒイラギは簡単についてきた。



 ヒイラギは、ずっと呆然というか、呆けていた。手を引けばついてきて、からかえば、それに引っ掛かる。よわよわになっていた。普段は、よくマウントをとってくるのだが、昨日発言が相当恥ずかしいのかもしれないと思った。


予想していた結果とは違ったが、なかなかに楽しいものだった。


売店で、ケバブ?みたいなものを二人頼み適当な場所で食べた。それは、肉を目の前で切り分け、パンのような生地に乗せられたものだ。

味はやはり、知の都市という名にふさわしく、最先端な味がした。現代を思い出す。


それを平らげて、ヒイラギの手を見ると食が進んでいないようだった。

からかいしすぎたかもしれない。少し、悪いことをしてしまったなぁ。

そんなわけで、軽い気遣いをしようと思った。


荷物の中から、水筒を取り出し。ヒイラギに手渡す。それを受け取り、二口ほど口を付け、ヒイラギは軽く息をはいた。


何か、言おうと思った。咄嗟に浮かんだのは、惚気じみたことだが、言いたくなってしまった。

「えっと、さぁ。ありがとね。」


「なにが…?」

短く、ヒイラギが返す。


「付いてきてくれて。正直に言えば、ヒイラギと一緒に暮らせるだけでも、幸せだったんだよね。学園に行かなくてもさ」


恋人のような言葉が漏れ出す。でも、真実なのだ。ヒイラギと暮らせだけでも、良かった。たけど、俺はストケシアとしてもちゃんと生きないといけない気がした。だから、外に行きたい思ってしまった


離れてしまうと、諦めていたが、ヒイラギは付いてきてくれた。それが、凄く、嬉しかった。


「それは、俺も同じだ。」

ヒイラギはいつものように、だけど、熱を持ってそう言った。


「そっか。なら、お互いさまだね」

声色が何なのか、自分でもよく分からなくなる。


ただ、外から見れば、恋の横断幕にしか見えないだろうな。


ヒイラギにやる、恋人の真似事は、妙にしっくり来た。

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