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母との約束

 家族とひよこヒイラギとの一件から、数日が経過した。入学試験はいよいよ明日となってしまった。アトラス学園の入試と言うのは、入学式と同日に行われるようで、運営側の運営スケジュールが可哀想でならない。入試の合否と学生記録を1日以内に振り分けないといけないのは、ブラックというよりは物理的に可能なのだろうか…?まぁ、頑張ってくれ、アトラス学園。




 とは思っても、そんないらぬ心配をする暇は、今の俺にはないのだ。前世の知識があるとはいえ、この世界の学問というものは把握しきれていない。読み書きやそれなりの計算は出来はするが、この世界の一般教養は、そこら辺の人間とはあまり大差はない。正直入試試験を突破できるのか、自信はないのだ。この数日間、自分なりに調査はしてみたが、実技試験があるとか、筆記があるとか、裏金しか行けないとか、かわいいね君どこ住み?と言った曖昧な情報しか得られなかった。この村にいる住人のほとんどが学園に行ったことがないのだから、当然といえば当然だ。


 しかし、実技試験があるというのは何となくは知っていた。この世界では騎士階級があるのだ。正直、歴史の授業を高校時代まともに受けていなかったので、制度問題などはまるで分からないが、実技と言ったら剣術などが想像できる。いや、それしか想像できなかった。勿論俺は、剣術なんてものは知らない。高校のころノリで剣道をしたことはあるが、あまり得意ではなかった。基本の人間が中学から剣道をしているので、当然ボコボコにされた。そもそも、竹刀と真剣じゃ、物が違うので役には立たないが…


 そういえば、アトラス学園についての説明を教えていなかった。

 アトラス学園は、知の都大都市アトランシアにある学園だ。主に魔術や剣術に騎士としての心構えや数多く学問を学ぶことができるとのことだ。異世界もののお決まりみたいな学園だ。しかし、貴族と言えば家の中で全て学ばされるイメージだが、学園はそれを凌駕するものがあるのだろうか?いや、主に貴族同士のコネや関係作りの場なのかもしれない。

 あと軽く流したが、魔術もあったな。異世界と言ったらのお決まりだが、正直俺は信じていない。中世にありがちの、占いとかの類だろうと俺は思っているのだ。実際に俺は、15年間この世界で生きてきたが、魔法と言ったものを見たことがないのだ。少なくとも、一般的にもそのおまじないというもの生活のあてにはしていないのだ、だから俺は人の勘違いの産物として扱っている。


 兎に角今は、どうにかして策を弄さなければならない。家族とあの会話をした上で落ちましたなんて、考えたくもない。


 …何だか、疲れたな…とりあえず一般的な歴史とか制度勉強しよう。今できるのはそれしかないな…


 その後、勉強を通した俺は夕陽に照らされながら、帰路に就いた。今日の深夜、アトランシアに行く馬車が来るらしい。

 夕食を終えれば、俺は馬車に乗せやすいように荷物を整理するだけだ。あとは…家族への感謝だな。そんなことを考えながら、歩きなれた道を歩いた。



 その夜、家に帰ると、少しだけ豪華なご飯が用意されていた。献立は、メニューが4品ほど増えていて、メニューのほとんどが俺の好きなものだった。

 会話はいつも通りのささやかなものであるが、妹のカラテアはぐずっていた。母さんがそれを宥め、父さんはこの時間をじっくりと味わっていた。学園の入学が決まれば、この時間もほとんどなくなるのだろう。

 入学が確定したわけでもないのに、何故か分からないがそう思えた。だから、俺はせめてこの残された時間を忘れないように目に焼き付けようと思ったのだ。この日の食事は、一口一口が小さなものだった。


 食事を終え、無理を言って皿洗いを手伝いをした。母さんは、最後ぐらいゆっくりしてなさいと、言ってはいたが、その顔は嬉しそうであった。会話はなかったが、洗い水が優しい音であり、柔らかな心持でいられた。この作業も慣れたものだったのだ。

 妹のカラテアはぐずりつかれたのか眠りに落ちてしまっていた。父さんは席に座り、珍しく酒を飲んでいた。


 皿洗いも終わったその時、母さんが話しかけてきた。


「ストケシアよく聞きなさい。学園に行ったらね。身なりには気をつけなさい」


 身なりは、問題ない。どんな服も似合うし、場に沿った常識もある。


「うん」



「お金も使いすぎちゃダメよ」


 通貨だって問題ない、何なら値引き交渉だってした事があるのだ、俺は。

「…うん」


「都会は怖いところよ、ヒイラギくんやそこで出来た友達を頼りなさい。でも、頼りぱなしはダメよ、助け合うような仲でいなさい」


 むしろ、ヒイラギを世話する側だが、心にとめて置こう。


「…う…ん」


「悲しくなったり、辛くなったら、人に甘えていいのよ。それは弱さじゃないから」


 分かっている。それが大切だと何度もあなたが言ったのだから。


「…分かって、るよ」


「…色んなもの学びなさい、あなたは賢い子だから、きっと幸せを役立つはずよ」


幸せに繋がるかは分らないが、色々なもの学ぶのは大切だ…


「うん…いっぱい、勉強する」


 そしてね、ストケシアと、母さんは言葉を置いた。

「あなたがどんな時でも、何をしたとしても、貴方を愛している人がいることを忘れないで」

「愛しているわ、ストケシア」


 これに返す言葉など、簡単で決まりきっている。安直で意外性も何もない。しかし、気持ちを表現するなら、この言葉以外想像もできないのだ。だから、精一杯の心を込めて言おう。



「私も愛してるよ、母さん…」


 母さんが泣きながら、抱きしめてくる。力強く抱きしめてくる。強く、大事なものを離さないように、ただひたすらに。

 彼女の顔を見れば、普段おしとやか美人顔が台無しだ。口からは、愛している。と口走らせている。言葉は多用すれば、意味は損なわれると昔聞いたが、それは噓だと思えた。

 彼女の口からでる言葉には、一つ一つに強い想いを感じた。俺も何かを口走っていたが、嗚咽に引っ掛かり聞こえない、しかし、この想いは彼女に届いていることが出来ているのだからいいとしよう。





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