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好きな女の子のタイプ

 放課後の静かな廊下に、二人分の靴音と、私のぼやきが響く。


「惚れ薬を飲んでから、今でちょうど丸一日……。あと二日もあるのかと思うと、心臓がもたない。壊れちゃう。明日と明後日は、学校を休んでもいいんじゃない?」

「嫌です」

「なんで休みたくないの? 私なら、喜んで一ヶ月休むのに」

「学校でのお姉さんの様子が気になる。僕以外の男と、仲良くしてほしくない。欲を言えば、すべての男に笑いかけてほしくない。さらに本音を言えば、僕以外の男を空気扱いしてほしい」


 隣を歩くジュリシス。クールな見た目は昨日と同じなのに、中身がガラリと変わってしまった。

 強力惚れ薬を作ったアメリアの才能が恐ろしすぎる。もし今度会うときがあれば、効果を手加減するようアドバイスしたい。


「ジュリシスって女の子の話をしないから、どんな恋愛をするのか想像できなかった。独占欲が強いんだね」

「女の子の話、していた」

「そう?」

「うん。ルイーゼのこと、話していた」

「家族じゃなくて、好きな女の子のことだよ」

「だから、ルイーゼの話をした」


 ダメだ。惚れ薬が効いている弟になにを言っても、私のことが返ってくる。

 呆れてしまうけれど、ジュリシスの愛し方は一途で、ブレがないということはわかった。好きになったら、その人ひとすじ。

 相手の女性は大変だろうけれど、ジュリシスは結婚相手としてはいいと思う。

 言葉は意地悪だけれど、物理的意地悪はしたことがないし、暴力を振るったり、感情的に騒いだりもない。ジュリアーノと遊ぶ姿を見ていると、案外いいパパになるのではないかと思う。


「ジュリシスに愛される女の子って、幸せかもね。あっ……」


 特進クラスから響いてきた、綺麗な高音。リタだ。

 

(あぶない! 忘れていた。ジュリシスの好みの女の子のタイプを聞くって、リタに約束したんだった!)


 こういうところが、私がドジと言われる所以(ゆえん)。ジュリシスから「ルイーゼと約束しても、あまり意味がないんですよね。忘れるから」と、よく呆れられている。


「あのね! ジュリシスの好きな女の子のタイプを教えて」

「ルイーゼです」

「そういうことじゃなくて。優しいとか、明るくて元気があるとか。落ち着きのある子とか、スタイルがいい子とか。そういったことが聞きたいの」


 ジュリシスは足を止めると、真剣な顔をして唸った。


「具体的に聞かれると……難しいな。優しいから好きとか、笑顔が可愛いから好きとか。そういう問題じゃないと思う。ルイーゼから優しさが失われても好きだと思うし、怒った顔も、眠くて白目になった顔も好きだし。自分でも、どうしてこんなにルイーゼが好きなのか不思議なんですよね。ルイーゼなら、腕一本になっても愛せる自信がある」

「ちょっ、ちょっと!! 腕一本ってどういうこと!? 死んでいるから!! それと、私の好きなところを聞いているじゃないの。好きな女の子のタイプを聞いているんだってば!!」

「タイプ……条件ということ?」

「まぁ、そうだね。でも、難しく考えなくていいよ。リタに教えるだけだから」

「では、ルイーゼであることが条件ということで」

「そんなの話せなーい!」

 

 なんて弟だ。とりあえずリタには、好きになった人がタイプだと言っておこう。


 

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