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閑話、チーム・まつろわぬものども

「勇者謹慎になったー」


 ミナモさんに目を向けると、彼女はベッドにうつ伏せになり、足をゆらゆらと揺らしながら雑誌を読んでいる。ここはミナモさんの部屋だ。ここにある転移陣と森林街の宿屋に置いてある転移剣は繋がっており、何かと移動に便利なのでよくここを通る。


 通り掛けにミナモさんの部屋でくつろいでいると、彼女は突然そんなことを言い出した。


「おいおい、勇者なんて立派な職業で、一体何をやらかしたら謹慎になるんだよ」


「だまれ追放」


 俺が衝動的に彼女の尻を踏みつけると、ぼこぼこにし返された。



「一体全体どうしたっていうんだい? あのまじめでおとなしいミナモさんが謹慎なんて、らしくないじゃないか!」


「勇者の任務でね、」


 彼女はその語り口で、起こったことを語りだす。


「で、逃がしちゃったんだ、その子」


「うん。で、チームの、わたしと、キララと、ワカバちゃんはまとめて謹慎」


 言うこと聞かないやつ多いな、あの教室……。


「じゃあどうすんだ? このさき」


「なーんか、勇者の任務もだんだん血なまぐさくなってきたし、いっそのことやめちゃおっかなって、みんなで話してた」


 信頼ないな勇者協会。


「やめて、どうすんだ?」


冒険者そっちに行こうかなーって。アオイくん、なんだかんだ楽しそうにやってるし」


 こいつ……人の苦労を知らないで……。


「俺から言わせてもらうと、あんまりお勧めはしないかな。勇者の方が職として安定してるし、社会的な信頼もある。勇者の中には安全な事務職とかもあるだろ? 冒険者が楽しいっつっても、楽しめるやつしか生き残らないだけだしな」


「アオイくん居るし大丈夫でしょ」


 こいつ、俺に全部……。


「まぁ何にせよ謹慎中は暇だし、私たちは冒険者そっちに顔を出すことになりそうだから、その間よろしくね」



「パーティーを作ることになった」


「ふーん」


「リーダーアオイくんね」


「知らないパーティーだな」


「あとここ借りることになった」


 俺はミナモさんに連れられるがまま町の中を歩いていく。ミナモさんは町の一角で立ち止まり、そこにあった大きな一つのログハウスを指さす。


「ここが、私たちの“ギルド”の拠点」


「ギルド?」


「個人ギルド。少人数パーティーと個人ギルドは、規模が違うだけで種類は一緒だから」


 個人ギルド。簡単に言うと、冒険者の中で私たちは一緒に活動していますよ、という形態の一つだ。申請する必要はないが、四、五人の少数パーティーでも立ち上げることはある。冒険者ギルドなどでは、個人名の代わりにこの“個人ギルド”名義で、依頼やその他契約などをすることが出来る。冒険者にとっての小さな会社みたいなものだ。


「ギルド名は?」


「“ことまつろわぬものども”」


 反骨心の高い名前だな……。


「はいはい、その個人ギルドのリーダーが俺で、この建物が、その個人ギルド名義で借りた建物ね。で、この建物何に使うの?」


「いったん私たちが占拠してる」


 扉を開けると、中はいろんな誰かの荷物が散らばっていて、まだごちゃっとしている。


「……おい。下着落ちてんぞ。勝手に入っていいのか? つかもっと綺麗に使え」


「私の下着じゃないから大丈夫」


「問題があるだろ」


 ミナモさんに際どい持ち物は先に回収してもらい、俺はログハウスの中のものを整理していく。荷物を見るに三人分、おそらく謹慎中の三人娘がここに滞在しているのだろう。



「仕事見つけたよー」


「早いな。冒険者で? 定職か?」


「バイト。でも、冒険者の依頼の中に見つけたものだよ」


「バイト? 街中でか? じゃあ冒険者の依頼の方が稼げるんじゃないのか? ……まぁ、町の中で安全にお金を稼げるのなら、それに越したことはないだろうけど」


 しかし、早速バイトを見つけてきたか……ミナモさんたちは、本当に勇者側に戻る気はないのだろうか。それとも短期で入れる仕事?


「うーん。どうだろ。安全とも言い切れない仕事だし」


「……何のバイトするんだ」


「喫茶店」


「どこから出てくるんだ危険」


「店内の料理でモンスターの食材を使うの。そのモンスターたちは、表に出てない従業員たちが狩ってくる。暇な人は店で接客する。中はみんな冒険者だよ」


 異世界だなぁ。戦うウェイトレスか。


「……制服可愛い?」


「……可愛いけど。なに? 来る気?」


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