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教科『異世界』の時間だよ! ~武器と魔法とスキルを学んで、仲間と共に異世界を歩き、モンスターを倒し強くなれ!~  作者: 藍染クロム
ーーー迷宮街の宝物ーーー

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第二話、前夜祭

「んじゃ、そろそろ行くか、にーちゃん」


 夕方ごろに、少年は俺の部屋に顔を出した。窓の外は茜の夕焼けが街を染めており、またここは高い壁に囲まれているので日が沈むのも早い。外に出ると、もう夜の闇が足元には忍び寄っている。


「結構遅い時間に出るんだね、ワカナ」

「まぁな。ここらの時間帯が一番“効率”が良いんだ」


 彼は暗い壁に沿って歩いて行き、と、突然何もない所をこんこんと叩いている。見れば、そこの石の壁を木板が立て掛けてあり、彼はその板をずりずりと横にずらしていく。板がどいたら、腰の下あたりの高さに穴が開いている。


「こっから出れるぜ」

「秘密の抜け道だー」


 少年はするりと身を通し、後から荷物をその穴から引っ張り出す。俺も通れるだろうか……腰の荷物を外して上半身をそこに突っ込むと、そこには街の外の景色が広がっている。風が吹いて、草原が風になびいている。日は沈む頃か、もう遠くの空は藍色に濃い。俺は体を穴にごつごつと当てながらどうにか抜け出し、向こうの荷物をこっちに引っ張る。


「通れたか? じゃあ埋めるぞ」


 と、少年は手に、穴の大きさぴったりの石塊を抱えていた。それを壁の穴へとはめ込む。ぴったりとはまり気持ちがいい。


「じゃ、行くか。他の奴らに見つからないようにな。俺が言ったら隠れて、俺が言ったら荷物を取りに来てくれ」


「あいあい」


 少年は草原の上、道なき道を歩いていく。向こうに門から伸びていく道があり、ちらほらと、冒険者の集団が歩いているのが見える。


「今回の獲物ってどんなの?」


「基本的に複数だな。ずる賢くて金に目がない。まぁ力には従う素直な奴らでもある」


 割と知恵のあるタイプか。ちょっと怖いな。金を落とすモンスターとは聞いていたが、金に目がないということは金を拾ってくる生態があるとかなのかな?


 と、彼は手で俺を制する。しぃーと、ジェスチャーで静かにしろと伝えてくる。


「良さそうなのが居た……お前は丘の前で伏せて隠れていてくれ……終わったら呼ぶ……」


「……おーけー……?」


 あれ、意外と街から近いところで出没するんだな。大陸の街は、危険域までの折衝地帯が短いのはまぁあることなんだが、それにしても街から近い。まだ街の壁が見えているし、その辺に狩りを終えて帰ってきた冒険者なんかも―


 俺が物陰に伏せて隠れていると、少年は向こうの道を歩いてくる、冒険者の一団へと向かって歩いていくようだ。向こうの彼らは、日が暮れ始めていることもあって、集団の一人が手に明かりを掲げて持っている。俺たちは何も明かりを付けてない。あれ? そう言えば、ワカナの見つけた“良さそうな”モンスターってどこに居るんだ?


 俺は草陰に隠れたまま様子を見守っていると、ワカナはその冒険者の一団の前で立ち止まった。少年は威勢よく声を上げる。


「よぉてめぇら!! 命が惜しけりゃ、稼いできたもん全部置いてきな!!!」


「ぉぉおおおおおおおおいっ!!!!!」


 俺は慌ててドタドタと少年の後ろに出ていく。


「おぉ、なんだにーちゃん、出てきちまったのか?」


「“出てきちまったのか?”じゃないよ何してんのっ!!?」


「何って? 冒険者狩りだが?」


 ワカナはきょとんとした顔で聞き返してくる。あれ!? これ最初からこういう仕事だった!? どっかで説明あった!?


 どさっと、向こうで袋を落とす音がする。見れば、向こうの冒険者の一団は、次々持っていた重そうな袋を地面に落とした音だった。


「へぇ、なかなか物分かりが良いじゃねーか」


 ちょちょちょ、いったん話し合わない? ワカナくん。と、俺が止める前に向こうからの話が進んでいく。


「おいガキ、何勘違いしてんだ? 俺はお前にあげるためにその袋を置いたんじゃねーぜ?」


「あぁ?」


 ゆらゆらと揺れる行燈に照らされて、向こうの冒険者の顔が不気味に映る。


「俺たちはよぉ……てめぇらを、両手を使って痛めつけるためにわざわざ両手を空けてやったんだ!」


 じゃきと、向こうの冒険者の一団は一斉に武器を構える。


「はっはー!! てめぇらやっちまえ!!」


「ひゃっはぁー!!」


「おいおい、お前ら金塊は持ってねぇのか? “それ”がねーんなら、けつの毛の一本までむしって売れるもん探さなきゃなぁ!!」


 と、少年は彼らの態度に物怖じ一つすることなく、黙って彼らの方へと歩いていく。


「おいおい坊ちゃん、武器はどうした? もしかして……ただ痛めつけられるのが好みのドエムってやつかぁ?」


「「「ぎゃははははははは!!!」」」


 少年は黙って歩いていき、彼らの手前で立ち止まった。


「俺はなぁ。……人の頭を丸かじりするのが、大好きなんだよ」


「あぁ?」


 少年はそこで立ち尽くしたまま、ぽつりと、しかし通る声で呟いた。彼はそれきり黙って顔を伏せている。向こうの集団は、何事かと少年の様子を見守っている。風が吹いて、彼らが吊るす行灯が揺れている。


 ぼこぉと、突如、少年の頭が一気に膨れ上がった。俺は少年を後ろから見ていて、ただその歪に膨れ上がった頭部の後ろを見ることしか出来ない。


「ォ……オマエラ……」


 じりと、少年の足がずれた。ずりと、向こうの集団が一歩後ずさりする音が聞こえる。


「……ォォォォォオオイシソウダナァァァァァアアアアアア!!!!!」


 うわぁああああああ!!!


「ギィィィャァァアアアアア!!!!」

「バケモノぉぉぉぉぉぉお!!!!」

「うぅぅぅわぁぁぁぁああああ!!!!!!」


 ガチャガチャとけたたましい音を立てて彼らは向こうへ走り去っていく。俺たちはそれをただ黙って見送った。ひょこんと、彼の頭部が元に戻る。後ろを向けば、どんな顔をしていたのだろうか、彼は元の綺麗な顔立ちに戻っている。


「終わったぞにーちゃん、大量だな!」

「大量だなじゃないよ何してんだお前」


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