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8話


◆8


 家に帰り着き、すぐに戻ろうとする担任を、母親がお世話になってお茶の一つも出せないのは申し訳ないからと、なかば強引に担任を家に引き入れた。


 荷物を自室に置き、朝を抜いていたので、三人で朝食を食べる事に。


 …なぜ、担任と一緒に朝飯を、食べないといけないのか…


 まぁ、父親がいない今、母親と二人きりで食事をするには、まだ、時期が早いのは、分かる。


 分かるが、なんか居た堪れない。なにか違う。なんだろう。この場違い感。二人の会話はシャットアウトしながらも、会話に頷く形で参加してる。今のオレは器用だなぁ。


「なぁ、オレ、しばらく外を、散歩してこようか?」


「「それはやめて」くれ」


…ふたりでハモって否定しなくても。


 担任が長居してる事でソワソワしだし、母親も長居させてしまってる事に申し訳なく感じたんだろう。


 担任が学校に戻ると言って、母親は引き留める事をしないで、担任は学校へと戻っていった。

…いや、なんで引き留めると思ったよ。オレは。


 母親と二人で協力して、溜まっている洗濯や掃除といった家事を行い、食材等の買い出しに出掛け、荷物持ちとして買い物に付き合い、帰り着いてからは勉強をして今日一日をすごした。


ーーー


 夕方になり、空が薄暗くなり始めた頃に、担任が家に来た。


 どうした?なにがあった?と不審に思っていると、今日の早退して受けられなかった授業の穴埋めをしてくれるとか。

…そんなん余計だよ。って心の中で憤慨してると、


「すまんな。実は授業の穴埋めってのはチョットした口実で、別件で話をしたくてな…」


 なんだろ?嫌な話でなければいいんだが。と身構えていたら


「今朝、一緒にご飯を食べたじゃないか。んで、その後に、お前が気を利かせてくれて、散歩に行くと言ってくれてだな…その、なんだ…」


 …?妙に歯切れが悪いな?そんなに言い難い事なのか?

 …?なにか外が…いや、いいか。


「いや、実はな、結婚を前提に交際を申し込もうと思っていてな」


 …え?チョットマッテ。そんな趣味は無いぞ。


「先生、俺はいたってノーマルです」


「あ、あぁいや、お前じゃなくてだな…」


 あ、母親か。そういえばイチャイチャしてたな。いきなり結婚なんて言われると、衝撃が強くて、主語が抜けてると分かりにくい…


「いや、な…今朝の事で、もう誤魔化しも、取り繕うのも出来ないって気付いてな。


 まだ時期が早すぎるが、おまえにだけは決意を言って、認めてもらおうと思ってだな。


 お前の親父さんの葬儀が終わったばかりなのと、教師と生徒の母親が交際とかは醜聞が悪いから、おまえが学校を卒業してから、正式に交際を申し込むつもりだ」


「いいんじゃないですか。ちゃんと俺の事や両親の事を考えてくれているのであれば」


「む。あまり驚いてないな。強めに断わられるんじゃないかと、危惧していたのだが…」


「今すぐにどうこうだと言うなら、断固拒否してましたけどね。

 母の事について、不必要なところまで世話してくれていたのが分かっていたのと、分かりやすいくらいに結構イチャイチャしてましたからね。

 でも、今後は目の前でイチャつかれるのは控えてほしいですけど」


「む…イチャついてなんかいないぞ」


「無意識ですか。それじゃいくつか確認したいんですけど、子供については?」


「さっきも言ったが、おまえが学校を卒業した後で、交際を申し込み、受け入れてもらえたなら、その時はって、何を聞いてくるんだ」


「だいじな事ですので。ちなみに断わられる可能性は?」


「そんな可能性は起きないように、真摯にするだけだ」


「これからも、ちょくちょく家に来るって事でいいんですか?」


「そんな事はせん…と、言いたいが、来てもいいか?」


「いいですよ。いいんですけど、うちに来る理由はどうします?ん〜、普通に家庭訪問でいいですかね?隣近所にクラスメイトがいるわけじゃないし。うん。大丈夫ですよね。あとはイチャイチャしなければ」


「何度も言ってるが、そんなにイチャついてるか?」


「もういい加減、散歩に出掛けようかと思うくらいには」


「それはすまなかった。なるべくは気をつけるようにしてみる」


「ふふっ。なるべくなんですね」


「無自覚、無意識だというなら、他に言いようがあるまい」


「まぁ、そうですね」


「さて、それじゃ帰るかな」


「夕飯は?食べてかないんですか?」


「誘われたなら、食べるさ」


「多分、もうすでに3人分用意してると思いますよ?」


「だろうな」


「ふふっ」


「ハハッ」


「あ、そうだ。俺、卒業したら就職して、一人暮らしをしようと思います。」


「進学はしないのか?」


「今はまだいいかもですけど、生活費を稼がないとじゃないですか」


「進学費用くらいなら出せるぞ」


「そこまでお世話になれませんよ」


「そうか…それならば、せめて一人暮らしをする準備費用だけは出させてくれ」


「それはその時に考えましょうよ。まだ一年以上も先の話になるので。母が待ってるはずです。行きましょう」


「あぁ、そうだな」

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