第3話 ゲームの世界、凄すぎません?
視界が回復し、目に映る景色。
人が何人も、何人もいる広場。
広場の中心には大きな噴水がある。
そして、そこを取り囲むように立つ建物は中世のヨーロッパを連想させるものだった。
「すごい。これが、『SBO』の世界なんだ。」
思わず声が出るほどに、リアルだった。
ボクは、今まで様々なVRMMOをしてきたが、ここまでリアルなものはなかったはずだ。
そうしていると、オープニングが流れ始めたので、とりあえず《スキップ》を押し、後で見ることにした。
「それにしても、これは…制作担当の人が悲鳴を上げながら作ったんだろうなぁ…」
「なあなあ、そこの君。」
そう感動をしていると、誰かが声をかけてきた。
これまでの経験上、ボクにはわかる。
これ、めんどくさいやつだと。
よし、無視しとこう。
「おーい、君だよ。きーみ。」
無視をしていたら、肩を叩かれた。
「なんですか?」
「いや君、昨日ログインできなかったんじゃないか?」
「そうですけど、それがどうしました?」
なんとなく、次になんていうかわかった。
「やっぱりそうだと思ったよ。おじさんが教えてあげるから、一緒に来ない?」
や っ ぱ り こ れ か よ
「ありがたい提案ですけど、自分で模索したいので。」
絶対に、食いかかってくるだろ。
そう思い、覚悟していた。が…
「そういうタイプの子か。ごめんな、おじさんはここでサラバするから、頑張ってな。」
おじさんは、どこかに行った。
「…え、こうゆうことあるの?」
一人で呆然としてしまっていた。
「…とりあえず、どこかに人のいない所に移動しよう。そこからオープニングを観ないと。できれば宿屋がいいな。」
そうして、所持品を見る。
ーー
装備 初心者の服
初心者のズボン
所持金 100フォル
ーー
所持金が100フォル。一件、多そうだか、装備を揃えるとなると、お金はもっとかかると予想できる。
「とりあえず、装備を整えてから宿屋に行ってみよう。」
そうして、ボクは武器屋と防具屋を目指して歩き出した。
ーーーー
「…迷った。」
ボクは今、迷子になっています。
誰か助けてください。
ボクはもともと大通りのような所を歩いていた。
そこにも武器屋とか、防具屋はあった。
ただ、銃を扱う店ばかりだったのだ。
銃を使うのが悪いとは思わないし、見た感じプレイヤーらしき人やNPCの冒険者のような人が、銃を持っている。
しかし、それ以外の装備をしている人がいなかった。
実のところ、ボクが使いたい武器は剣や槍などといった刃物系の武器だったりする。
これらを扱う店を探しながら歩いていたら、いつの間にか裏路地のような所に来てしまっていたのだ。
「武器屋探しに集中しすぎちゃったな…」
そう反省してとりあえず、これ以上進むとそれこそこの路地から出れなくなりそうだったので、戻ることにして、回れ右をした。
その時、ボクの目にあるものが映り込んだ。
「…か、刀?え、刀だ!」
そう、路地にある分岐点の先に一振りの刀が鎮座していたのだ。
「売ってるのかな?とにかく、行って聞いてみないと。」
そうして、ボクはその刀のところに駆け寄った。
その刀があった所は、鍛冶屋のような所だった。
「この扉から入ればいいのかな?」
その建物の入り口らしき扉を開けて入っていった。
カランカラン♪
中に入ってみたら、こじんまりとした感じで、なんというか…
閑古鳥が鳴いているような店だなぁ。
「…ん?なんだ、君。こんな店には、銃なんか置いてないぞ。」
奥から気の強そうな女性が出てきた。
赤髪で高身長、雰囲気は頼れる姉御的なものがあった。
「いえ、自分は外にあった刀を見て来ました。」
「そうなのか!?」
何故だ変わらないけど、すごく驚かれました。
「そこまで驚くことですか?」
「君、もしかして旅人か?」
余りにも気になったので、訊ねてみた。
そしたら、ボクか旅人かと逆に訊ね返された。
「そうですね。」
「それなら知らないかもな。
今この時代、もう剣なんかは古い。時代は銃なんだ。君も表通りを通ったはずだから分かるだろ?」
説明を聞いて納得した。
確かに銃は、剣よりも威力もあって射程もある。
物によっては、射程がkm単位のものもあるほどだ。
つまり…
「剣は周りと比べて不利だといいたいのですね。」
「まぁ、そう言うこったな。」
不利、つまりメインコンテンツなのに不遇。
剣は銃には勝てない。
「そんなこと、誰が決めたのですか。」
「何を言っている。
普通に考えたら、ほぼ間合いの制限が無い銃のほうが剣よりも強いだろ。」
「こんな言葉を知りませんか?
『当たらなければ、どうということはない。』」
昔のロボットアニメの彗星が言ったこの言葉。
できる人間がいるわけ無い。
現実なら。
ボクはもともと動体視力がかなりいいらしい。
それを踏まえ、このSBOでもチャレンジしてみるのも悪くないと思ったのだ。
「簡単そうに言うが、できるのか?」
「できますよ。このゲームに慣れれば。」
「そうか、なんだか君なら本当にできそうだな。
よし、外の太刀をやろう。」
「ありがとうございます。それで、おいくらでしょうか?」
「何いってんだ。《《やる》》って言ってんだろ。」
「それって、まさかお金を取らないって意味ですか!?」
「そうだろ?」
この店主、かなりやばいこと言っていることに気づいて欲しい。
「なんで、『当たり前だろう?』的な顔してるんですか!?」
「勘違いすんな。タダとは言ってないぞ。」
「じゃあ、なんですか。」
「条件さ。」
「条件、それは何ですか?」
何を掲示されるのか分からないので、身構える。
「一ツ、その太刀で君の言った戦い方を唯一無二のものにしろ。
二ツ、強くなれ。
この二ツが、条件だ。」
「それだけですか?」
「何を言っている。これが難しいから、条件にしたんだろ?」
確かに、ある程度戦い方の枠はあるが、それを自分のものにできないと本当の強さにもならない。
「あと、その太刀の手入れもある程度は自分でできるようにしろ。研ぐとかは、この店に来たらやってやる。」
「分かりました。」
「それと最後に、これはお願いなんだが、私は今日でここを閉めようと思ってな。」
「じゃあボクはどうすればいいんですか?」
直ぐに矛盾していくこの店主。
「まぁ、最後まで聞け。
とにかく、ここは閉めて故郷の村で細々とやろうと思ってるんだ。」
「そうゆうことですか。」
「そこで、君にその道中の護衛を頼みたいんだ。」
「ボク、まだ何もしてないですよ。」
「別に、冒険者登録さえしてあれば良い。」
ん?冒険者、登録?
「…すみません。」
「どうした?」
「…冒険者登録。どこですれば良いですか?」
その言葉の瞬間、店主はポカンとした。
しかし直ぐにその顔は無くなり、笑い出した。
「ククッ、カハハハハハ!
まさか、ここまで面白い子がいるとはな!
気に入った。同郷の装備屋も紹介してやる。」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「ただし、護衛も条件に入れさせてもらうぞ?」
「もちろん良いですよ。」
「私はハマ・トゥ。しがない鍛冶屋さ。」
「ボクはセンです。」
そうして、ボクたちは手を取り合い、固い握手を交わしたのだった。
ちなみにこの後、直ぐに冒険者登録をしに行きました。
どうも作者です。
剣が不遇と言うのは本当か。
マジです。
このゲームだと、剣や槍などは銃の影に隠れるレベルで不遇です。
だって銃は、リーチ(射程ですね)がありますし、物によっては近距離戦もできますしで強いです。
運営はどうするのかは、まだ秘密です。